仕事でもプライベートでも、多く寄せられるのがこのご質問です。
私自身は自分の生育歴にハンディがあると思っていないのですが
ハンディと言われて思い浮かぶのは、重大犯罪に走ってしまった人の生育歴です。
たとえば、「山口県光市母子殺害事件」の犯人である
大月孝行(旧姓:福田孝行)死刑囚の生い立ちが挙げられます。
【大月孝行(旧姓:福田孝行)死刑囚の生い立ち】
孝行の父親と母親は見合い結婚した。
父親が婚前に母親を強姦し、母親は孝行を妊娠した。
父親は母親に日常的に暴力を振るっていた。
孝行が止めに入ると、父親は失神するほど容赦なく孝行にも暴力を振るった。
父親は酒とギャンブルが好きで、お金がなくなると妻の実家に借金を繰り返した。
孝行の母親は夫からの暴力に耐えきれず、自宅ガレージで首つり自殺をした。
父親は孝行に母親の遺体の始末をさせた。
このような生育歴のハンディがある場合、どのように乗り越えられるかと尋ねられた時
真っ先に思い出す本があります。
私が20年ほど前に読んだ本なのですが
本日は、その書籍をご紹介し、ご質問にお答えいたします。
■書籍名: 『暴力から逃れるための15章』
■発売日:1999/2/1
■著者名:ギャヴィン・ディー・ベッカー (Gavin de Becker)
■著者プロフィール:
暴力予測の専門家、防犯コンサルタント。これまでに3度、アメリカ大統領の指名を受け、要人警護のための政策立案に携わる。その先駆的な研究によって、政府が国の重要人物に対する脅威を評価する方法が変わった。
彼の会社は、暴力の予測に関して世界中の著名人、企業、法執行機関の多くをクライアントに抱えているほか、一般のドメスティック・バイオレンス(DV)やストーカーの犠牲者を支援するサービスも提供している。
また、O.J.シンプソン事件をはじめとする数多くの主要な暴力事件について検察に助言、あるいは法廷で証言するだけでなく、暴力犯罪を防止するための新しい法案にも尽力した。
2017年現在、著書の『暴力を知らせる直感の力 ──悲劇を回避する15の知恵』は世界19か国語に翻訳されている。
■ギャヴィン・ディー・ベッカー氏の生育歴:
13歳になる前に、人が銃で撃たれるのを見たことがあった。殴られ、蹴られて、意識不明になった人も見た。
母親はヘロイン中毒になった。妹が殴られるのも見てきたし、わたし自身、そのときまでの人生の大半を殴られながら過ごしてきた。
当時のわたしがやっていた危険予測は、現在のわたしがやっているのと同じ、生死にかかわるような一か八かの予測だった。わたしはそういう状況の中で、みなが無事生き延びられるようにするのは自分の責任だと思っていた。(47ページ)
ベッカー氏は、“社会学校”(刑期終了まぎわの受刑者に更生訓練を行う施設)をまもなく卒業する男性たちに会う機会がありました。
裁判所によって命じられたヘロイン中毒からの更生プログラムの一環として、「暴力と麻薬にさらされて育った体験」を、その男性たちと話し合ってほしいと依頼があったのです。
女子刑務所の元受刑者も数人交えて、参加者たちは教室のような場所で席につきました。
参加者たちは、3分間を持ち時間に、順番に自分の身の上話をしました。どの人にも暴力や恐怖の体験があり、捨てられたり、かまわれなかったりした子ども時代がありました。
どの男性も、子ども時代に暴力を振るわれた経験があり、10人いた女性のうち9人までが家族の誰かから性的な虐待を受けていました。
続いてベッカー氏が45分間、自分の身の上話をしました。すると、参加者全員が、ベッカー氏の体験が自分たちのものとそっくりなのに気づきます。
受刑者の男性の一人が、ベッカー氏に次のように尋ねました。
「子どもの頃はそっくり同じひどい目にあったのに、あんたは洒落た服を着て……たぶんいい車にも乗っているんだろう? 今日、ここから出ていけるしな。あんたはそっちに座っている――どうしてそうなれたんだい?」
ベッカー氏は、その受刑者からの質問への答えを下記のように綴っています。
(以下、引用)
* レスラー(ロバート・レスラー、FBI心理分析官)やほかの人々によれば、潜在的に怪物を宿している少年に対しても、だれかが(しばしば無意識に)親切にしたり、援助の手を差し伸べたりすれば、あるいはただ関心を持ってやるだけでも、少年の心は変わる可能性があるという。わたしは自分の経験から、ささいなことでそれが可能だと言うことができる。(239ページ)
* 認めてやるこどもの価値は、芸術的才能でも運動能力でもいい。ユーモア、勇気、忍耐力、好奇心、勉強、創造性、機知、責任感、元気、どんなことでもいい。こどもたちはそうした特性を、いくつももっているはずだ。(239ページ)
* 5年生のときの担任だったミスター・コンウェイは、わたしのなかの怪物と戦ってくれた。わたしにやさしく接してくれ、才能を見出してくれた。ちょうどわが家が暴力で消滅しそうになっていた時期だった。(239ページ)
* 一人の大人のやさしさによって、こどもは愛され、価値を認められ、励まされていた幼い頃を思い出すことができる。それには文字通り、数時間もあればいい。(240ページ)
(引用終わり)
ベッカー氏によると、悲惨な生い立ちを背景に持つ子どもの場合も
誰か一人でも
親切な大人がその子どもを認めて、励ましてあげれば
その子どもは生育歴のハンディを乗り越えられると語っています。
「励まし」を与えられる時間は、数時間あればいいとも言っています。
子どもの側に求められるのは
その「数時間」にフォーカスするかどうか、ということです。
ベッカー氏は担任の先生がやさしくしてくれたことにフォーカスして
ハンディを乗り越え、社会でご活躍なさっています。
ベッカー氏のご著書『暴力を知らせる直感の力 ──悲劇を回避する15の知恵』は
世界19か国語に翻訳されています。
ご興味ある方は是非一度読まれることをお勧めいたします。






