「それで、部屋の電気を消したわけ」
気持はわかる。
「そしたら物の輪郭だけが見えて。
でも、やっぱり生活するには辛いかなって」
うん、単純に見えないからね。
「それでも、何となく洗濯物をたたんでた」
考えなしでも手は動く・・・。
「ふと気がつくと、ちょっと見えるようになってたの。
色や柄がわかるほどに」
目が慣れるってやつだね。
「そこでふと思ったの、同じものを見てるのにぜんぜん違うって。
すごい衝撃だった。
そしたら、いろんなこと考えちゃって。
自分が変わるってこんな感覚かな、とか。
ほかの人の感覚とか」
黙ってうなずく。
「今は、その感覚も実感として感じないんだけどね。
そんなこともあったなってだけ」
いつものように、さびしそうに笑うのだ。
おしまい