私は、あの日の午後に彼の許を訪ねました。
よく考えればわかることでした。
私たちが話していたことは、彼の思い出に傷をつける行為でした。
しかし彼は、微笑んだまま一歩下がったところから私たちを見守ってくれていました。
それをあやまりたかったのです。
急な訪問にもかかわらず、彼は暖かく迎えてくれました。
そして本題を切り出すと目の焦点が遠い所で結ばれました。
はしゃいでいる私たちの姿を思い出していたのでしょうか。
「あれでいいんですよ」
目を細めたあの表情を、私は今でも忘れることができません。
おしまい