この前の続きです。
『ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第4番』について。
『マウリツィオ・ポリーニ独奏、ベーム指揮ウィーン・フィル(1976年録音/グラモフォン盤) ポリーニのピアニスティックな魅力は、この曲の第1楽章では発揮し辛いようです。「皇帝」のような輝きの聴かせどころが無いからでしょう。第2楽章の静寂感の有るピアノは中々ですが、本領を発揮するのは第3楽章です。夢中までには成っていませんが、堂々たる弾きぶりです。ベームの指揮はもちろん立派ですが、壮年期の引き締まった統率力は弱く、むしろ余裕さが感じられます。ウィーン・フィルの音の美しさは言うまでもありません。』
『マウリツィオ・ポリーニ独奏、アバド指揮ベルリン・フィル(1992年録音/グラモフォン盤) ポリーニ16年ぶりの再録音は全曲チクルス演奏会のライブ収録です。実演といえどもテクニックも音楽も大きな違いが感じられないのは、この人の長所でもあり欠点でもあります。旧盤ではベームへのリスペクトの大きさが感じられて幾らか窮屈さを感じましたが、こちらでは完全に自分の音の世界に入っている印象です。アバドもベルリン・フィルの厚い響きを生かして充実した演奏を聞かせています。旧盤とどちらを選ぶかと聞かれると迷うところです。』〈以上・ハルくんの音楽日記〉
マウリツィオ・ポリーニとカール・ベームのベートーヴェン・ピアノ協奏曲についてのAmazonからのメールは僕のアドレスには度々来ている。今まで買わなかった理由は1〜2番が無いからである。
ほんとうに無いかどうか、『ハルくんの音楽日記』等で調べると、1〜2番はベームではなく彼の逝去によりオイゲン・ヨッフムの指揮したディスクがあるそうだ。
1981年の二学期の始業式〈だったと思う〉、僕は間もなく行われる『文化祭』の準備に友人達と共に忙しくしていたが、明け方に大指揮者カール・ベーム危篤のニュースを聞いた。そのことを吹奏楽局の友人KK君に話すと、彼は
「カール・ベームは死んだ。」
と言い放った。僕は返す言葉を失ったが、それは先月の小澤征爾さん逝去のニュースくらいの衝撃であった。
カール・ベームとオイゲン・ヨッフム指揮、マウリツィオ・ポリーニ・ピアノ独奏の『協奏曲』に何故かクラウディオ・アバド指揮の『合唱幻想曲』の加わったCDは先ほどAmazonで調べると「39,900円」のプレミアが付いていて、これはポリーニ=アバドの新盤の中古品の価格の凡そ10倍である。僕は、『チェロとピアノのためのソナタ』にしろ『ピアノ協奏曲』にしろ、ベートーヴェンの作品はジャンルごとにチクルス〈サイクル=詰まり『全集』〉を揃えたいと思っているので、値段の張る先の全集には食指が動かない。
第4番を最初に聴いたのは、アルトゥール・ルービンシュタイン80代のRecordか、それともFM Radio か定かではないが、少なくともルービンシュタインのピアノは既にテンポがゆったりとしていた。ト長調の三和音で始まるが、最も美味しいパッセージは皇帝のように第1楽章ではなく、第3楽章にあり調性を変えながら3度繰り返される。