僕の実家にLP  Record  の掛けられるRecord  Player  が来たのは1973年頃であったと思う。FM  Radio  は間違いなく1974年だ。何故ならばスカイセンサーICF-5800が手に入ったのがその年であるからだ。函館の家の向かいは男子高校生の下宿で彼等は、ときに窓を開けてロックやフォークを流していたが、僕の理解の範疇〈はんちゅう〉ではまだまだなかった。


それはさておき、僕の父親はアルトゥール・ルービンシュタインのファンであったので、彼のRecordも次第に増えていったが『ベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集』もまた例外ではなかった。ルービンシュタインの弾くベートーヴェンはソナタ第8番・第14番・第23番・第26番もあり、それなりに聴いたが、僕のような浅はかなクラシック・ファンでもベートーヴェンの他のピアノ・ソナタは聴きたくなり、1977年の冬、僕は全集〈全32曲〉を見つけると父親に強請〈ねだ〉って10枚組のLP  Recordを買って貰った。ピアノ独奏は先に触れたヴィルヘルム・バックハウス〈1884〜1969〉で、第29番『通称・ハンマークラヴィーア』のみが2度目のステレオによる録音が間に合わずモノラル録音であったが、この〈仮の〉表題付きソナタと最後の第30〜32番ソナタは大傑作である。ベートーヴェンはほんとうに〈難聴〉に悩まされていたのかと思うほど、これらのソナタは深淵な響き〈ソノリティ〉がする。


さて、今日の話題はベートーヴェン・ピアノ協奏曲であるから、今はスヴャトスラフ・リヒテルによる数曲しかないソナタについてはこれ以上、触れない。


ダニエル・バレンボイム〈ザルツブルク音楽祭にて、弾き振り〉



ヴィルヘルム・バックハウス

ダニエル・バレンボイムの弾き振りの第4番は、1970年代にアルトゥール・ルービンシュタインのピアノ独奏では指揮していた作品。現在は第4番と第5番『皇帝』のみしかCDは手に入らない。第1番から第3番のRecordも持っている方は大切にしてくださいね。

今日は、マウリツィオ・ポリーニの弾くベートーヴェンとバックハウスの弾くベートーヴェンを〈無理に〉比較しようとして手持ちのCDを聴いていたが、第4番と第5番『皇帝』はどちらも鳴らしてほしい音が精緻なリズムと音程で聴こえてきた。

詰まるところ、ふたりとも僕の貧相な再生装置では判断できないくらい上手いし、何せ気持ち良いのである。『皇帝』についてはあす以降に触れたい。


ヴィルヘルム・バックハウス
マウリツィオ・ポリーニ


ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン