昨日の続きです。
ホールにはピアノが用意されリハーサルが始まった。ご主人は、
『今日は、時間が空いているということで早めに開場し、本来予定のなかったリハーサルを行います。』
と言って、イタリアの作曲家サー・フランチェスコ・パオロ・トスティの歌等をリハーサルし始めた。シューベルトやプッチーニの名前は知っていてもトスティの名は、彼女も僕も知らなかった。それどころか、プログラムには僕の知らない日本国内の作曲家の作品が、それこそ綺羅星の如く散りばめられていて、この世界の広さと深さが感じられた。翌日は八王子でオール・チャイコフスキー・プログラムで、僕は連闘になるから出否未定にしていたが、体調と天候次第でてくてくと行こうかと思っていた。しかし、トスティもダンツィも知らずに、何がチャイコフスキーだ、リムスキー・コルサコフだ、ラフマニノフだ、とも思えた。
友人のSH君の話だとお父さまは、歌中心に6ヶ国語を話すそうで、ピアノの伴奏の合間に朗々と歌うテノールの声には大変な迫力があった。その頃、出演者〈歌い手〉と観客は続々と集まり、例に依ってスマホ・カメラも客席中央にセットされた。ピアノ1台・歌い手ひとりの構成は器楽曲でいうと室内楽の
『ヴァイオリンとピアノ🎹のためのソナタ』
『チェロとピアノ🎹のためのソナタ』
等に近い。
『IL mio ben quando verra』
〈パイジエッロ〉の曲でコンサートが始まった。英語ならばまだ少しは見当が付いてもイタリア語?の曲はタイトルすら分からなかった。それでも、女性のソプラノやメゾソプラノの声は楽器でもあり気持ちが良い。2曲目は、
『La sera』〈トスティ〉
で、第1部はひとり2曲の担当だった。
続くふたり目の方はメゾソプラノで、
『Se tu m'ami』〈パリゾッティ〉
『Vergin tutto amor』〈ドゥランテ〉
を唄った。
3人目の方が、とても良く声の通る方で、
『Preghiera』〈トスティ〉
『Se』〈デンツァ〉
詳しい技巧は分からないが、短調〈マイナー〉と長調〈メジャー〉で声のトーンを変えていることが分かった。声量と声色で圧倒していたが、SH君のお母さんには敵わない。
4人目は、矢張り〈トスティ〉の曲と〈ルッツイ〉の曲。ルッツィも知らない。
5人目はロビーで挨拶した方、明治の歌である、
『椰子の実』大中寅二
『荒城の月』滝廉太郎
を唄った。
6人目はSH君のお母さんで、トスティの
『Rosa』
と〈ベッリーニ〉のタイトルが長い曲をピアノの音量に負けない声量で唄い上げた。
続くふたりは、メゾソプラノの歌い手で
〈デンツァ〉と〈トスティ〉の曲をひとりが唄い、もうひとりが〈シューベルト〉の曲を唄った。
『Der Doppelgänger』
『An die Musik』
の2曲だった。『分身』と『音楽』か?
海底摸月〈ハイテイ〉の9人目はプッチーニの『TURANDOT』より2曲を唄った。
そこで第1部はお仕舞いと思いきや、先生がシューベルトの『Ave Maria』を唄い上げた。メンバーと違い唯一無二のテノール。
今度こそ第1部が終わり、3分の休憩となった。
〈この項・続く〉