ラグビー日本一を賭けた日本選手権・決勝が本日行われ、三洋電機がサントリーを制し、二連覇を勝ち取った。


前半はややサントリーが優勢に運び、相手陣内で戦う状況が多く、PG3本。

三洋電機はPG1本で3点の、9対3で折り返す。

この前半終了が近づく時間帯に、やや劣勢に回りながらも三洋はあせらず落ち着いている。


筆者が注目したポイントは、後半開始後にサントリーが相手陣内まで進めてのラックの処理。

球出しが遅い。2回連続ラック共に、5~6秒かけており、体制を整えようということなのかどうかもよくわからない。結局、ラックのボールを三洋から奪われた。筆者はここが勝敗の分かれ目になりそうなサントリーの暗雲を感じた。


その後、右サイド三洋ゴール間際まで攻め込んだサントリーはラックでボールが出ない状態に相手選手を踏みつけた。それ自体は問題ではないと思うが、サントリーのプレーヤーの気持ちが空回りした瞬間を見たような気がした。結局そのラックで、三洋がノットリリースを取られ、サントリーはペナルティキックを得たのだが、そのゴールを外した。


筆者は、この後半開始後から10数分間のサントリーの状態を見て、三洋が逆転すると予測した。

その予測は見事に的中することになる。


後半14分で三洋は選手交代させ、元ニュージーランド代表オールブラックスのキャップ18を持つ名スタンドオフのトニー・ブラウンら三名を投入。ここではっきりと、三洋の戦略が見えた。


チーム全体のパワースピードは落ちない三洋。密集にも果敢に絡んでいくトニーブラウンが三洋の選手の士気とメンタリティも高め、その時間帯からもグンとパワーアップしたように見える。

三洋はその後も追加で選手交代を進めた。


後追いしながら選手交代を進めたように見えるサントリー。後半の中盤あたりから、サントリーは走るスピードが衰えたようにも見えた。結局、三洋が後半で3トライを決め、サントリーが1トライを返すがノーサイド。24対16で三洋電機が勝利を決めた。


サントリーの清宮監督がハーフタイムのインタビューで、もっと伸び伸びとトライを取りに行くようにと指示したと言っていたが、筆者の目から見て後半の十数分間の攻防でサントリーはそれを実現するプレーができていなかった。

対する三洋電機の監督就任一年目の飯島監督は、ハーフタイムのインタビュー時にやや劣勢であることを全く問題視しておらず、後半で必ず勝つと確信しているように映った。


この試合、勝負の流れという観点で見れば、後半の開始以降のサントリーの攻撃の失敗と、三洋の選手交代によるパワーキープ。これで三洋が勝利の女神を得た。ラグビーはちょっとしたプレーのミスや判断の選択のずれで流れが変わることも多いが、今日の勝敗のポイントは、ここに尽きるのではないだろうか。

三洋のゲームメイキングは、ジャパンが世界で戦うための課題としてハーフタイム後半のスタミナや戦い方について解決策を提示したように思えた。


しかし、トニー・ブラウンは昨秋、生命にかかわるかもしれないような膵炎という大けがをしても2月には試合に復活、登場。今日も随所に光るプレーで三洋を引っ張った。素晴らしい名プレーヤーだ。


三洋電機の日本一。おめでとうっ!