胡錦濤中国国家主席は昨年末の31日に台湾政策について演説し、中台間の信頼醸成措置を検討すると表明した。


日経新聞(21年1月1日)の記事の中では、「軍幹部の相互往来や軍部間の直通電話開設などを想定していると見られる。」とある。


今回、胡主席が表明したから小生も書ける記事だが、実は小生が一昨年(2007年)の秋、仕事の関係から中国のある都市で、台湾人の軍幹部OBと臨席したことがある。その初老の紳士はとても礼儀正しく温厚な方で、小生に対しても親しく接してくれた。後で聞けば、彼は秘密裏に中台間の軍部間の交流を進めており、その方々が調整を進めているという話だった。政治の表に出ないところで、水面下でこういうことが行われているのだなあと当時、感心したものだ。


それは台湾が台湾独立派の民進党陳水扁総統の政権下であり、中台統一を前提に対中交流を前進させようとする国民党の馬英九が総統となる2008年5月より以前のことだ。


ついでの話だが、ある台湾人が北京にある軍の施設で商談するからというので、私も横にいていいかと聞いてもらったら、日本人はダメだいうことで、そのビルの中には入れなかったのだが。そのビルは一見、普通の中規模の雑居ビルだったが、来訪者に対するガードマンの対応は一般ビルのガードマンとは明らかに違う素早い動作で、何の用だと聞いてきたのを覚えている。その場所の前で車の中で待つことも許してもらえなかった。市中に表立って軍関係施設とわからないビルで、軍と外部の折衝の場所を設けているということを知り、勉強になった。


だから、軍OBや正規の軍施設外を使って間接折衝を進め、その結果として今回の表明のように直接交流を検討すると発表できるのかと感心する。中華民族の歴史に培われた思慮深さや周到な準備を図る政治力は、どこかの外交オンチの国とは比べものにならない。


こういう体験から小生は、台湾海峡問題や、それに絡むとする日本の防衛問題を危惧する話が出ても、中台間が紛争を起こすことはあり得ないと思っている。万が一の可能性としては、アメリカが何らか仕掛けたり一部デモンストレーションのような砲火が局所的に飛ぶことがあるかも知れないが、正面切っての紛争は、先ず考えられない。


今後、中台間は馬英九台湾総統のもと、経済交流が促進され、さらに軍事交流が進むとなると、いよいよ日本のスタンスを転換する必要に迫られる。我が国政府は、米国一辺倒の安全保障の枠組みに台湾も含まれているということが未来永劫ずっと継続すると信じ込んでいるようだが、現時点での米国経済政策の転換は同時に安全保障問題の転換もあり得るし、台湾が中国重視の方向性を持つ中で従来通りの日台関係も変化してくる可能性も孕んでいる。


小泉首相の時代は小ブッシュのアメリカとは同盟関係と表明して、飼い主に尻尾を振る実直な飼い犬路線を打ち出したが、世界は絶えず変化し続ける。大転換して独自外交路線、経済政策、安全保障を構築する時代に突入した。


日本の政治家の皆さん、しっかり外交問題を取り組んでくださいね!