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 割り箸療法
          

 割り箸の根元を4cmほどの長さに切り、それを2本でも3本でも4本でも良い。また割り箸の根元の長さは3cmでも5cmでもいい。糸で結び同じ高さのものを2本造る。
 そしてそれを両奥歯で咬んで走ったり早歩きしたりするといろいろな病気が治ることがある。それを咬んで自宅で5分間でも飛び跳ねても良い。
 その対象となる病態は腰痛症、むち打ち症、膝痛症、顎関節症、冷え性、情緒不安定、不眠障害、自律神経失調症、不安障害、パニック・ディスオアダー、鬱病、軽い分裂病など多方面に渡る。

以下に著者が精神科の学術誌に投稿したものに跡形もないほど大幅に手を加えたものを掲載する。


 Challenge to Schizophrenia by Occlusal sprint

         咬合療法と精神疾患


【抄録】
 咬合療法という東洋医学にも西洋医学にも今まで存在しなかった療法で精神的疾患などに対し著明な効果を挙げている。特に自律神経に由来する疾病にはかなりの効果を挙げている。
 両奥歯に割り箸を噛んで走るなどの運動をすると骨盤や全椎骨などを取り巻く全身の筋肉・靭帯系が矯正され、全身のバランスが整い、“気”の流れが良くなり、自律神経が安定化してゆくと想定される。
 今までレセプターの過剰によると推定されてきた病態も、また中国医学的に“気の上衝”として捉えられてきたものも、この咬合療法を行うとそれは脊椎の歪み(骨盤の歪み)に由来していることがほとんどであることが解る。
 著者が実際に経験しているのは不安障害レベルのわずか3例であるが、実際に経験していないものでは軽症の鬱病、軽症の統合失調症も含まれる。テンプレート研究会6)には少なくとも不安障害レベルに関してはすでにかなりの数の症例が蓄積されていると推測される。
 ほとんどの精神的疾患は不安障害レベルでなく、鬱病、統合失調症をも、気の流れの乱れを矯正し円滑にしてゆくことにより治癒に向かってゆくと筆者は信じる。

【key words】Occlusion, atlas, insomnia, mental illness

【始めに】
 不定愁訴や自律神経失調症などに効果があると言われている咬合挙上法(テンプレート療法)の症例を筆者は最近実際に経験してきている。
 最近、咬合治療で病気を治す、ことが認識されてきている。また咬合を正しくすることによって全身のバランスが良くなりスポーツの記録が良くなることが認識されてきている。野球選手や競輪選手などが積極的に取り入れ始めている。
 咬合を正しくすることによって(咬合の歪みを修正することによって)骨盤や椎骨の歪みを修正し、自律神経のアンバランスを修正し、様々な病気が治癒していっている。偏頭痛、原因不明の頭痛、パーキンソン病、小児麻痺、不安障害、自律神経失調症、喘息や皮膚炎などアトピー性疾患、胃腸障害、子宮筋腫、脊椎側湾症などが治癒していっている。特に不眠障害は非常に短期間に(例えばその日に)治癒していることが多い。
 また筆者は小児麻痺の子供がこの咬合療法で軽快しつつあるのを二例直接知っている。なぜ小児麻痺が咬合療法で良くなるのか(咬合療法を受けているのはこの二人の子供たちだけである)大脳基底核部の調整作用と考えることが最も適していると推測する。
またパーキンソン病にも効く6)。その機序は咬合挙上法が上顎骨を介し物理的な作用で脳底部の血流を改善するのか、それとも三叉神経など神経を介して血流改善が行われるのか、それとも頚椎だけでなく骨盤を始めとして全椎骨が正され自律神経が整い、また気の流れが正されるからか、そのどれかと推測する。

【症例】
(症例1)
 彼は乳児期に後頭部が左右非対称に変形しているのを母親や祖母から気付かれていた。そのために特別に柔らかい枕を敷いてもらったりしていたが後頭部はいわゆる絶壁状で左右を比較すると左後頭部がいびつに突出したままであった。(このことは仰向けに寝かせしかも片一方ばかりを見る習慣がそうさせると言われている。欧米ではうつ伏せに寝かせるため欧米には絶壁頭はほとんど存在しないと言われている。)
 そのためか乳歯の上の前歯はかなり乱れていた。そして永久歯も上の前歯は斜めに生えていた。
 幼少時、小学校に上がるまで彼は自閉症のようであった。小学一年の終わり頃から慢性副鼻腔炎になった。中学一年の冬に彼は痙攣性発声障害(疑)と診断される大きな声が出ない頻度の少ない病気に罹った。
 高校一年から吃音を自覚するようになった。それまでも吃音はあったが軽くほとんど自覚していなかった。それが国語の本を読むのにも差し支えるようになった。
 高校三年の終わり頃から試験中などにパニックに陥るようになった。(このパニックは親知らずの治療と時期が一致している)
 割り箸による咬合挙上法を始めてからそれまで毎日整骨院に通っていたがそれを必要としなくなった。
 割り箸の根元を4cmほどの長さに切りそれを重ねて糸で巻く。始めは二本重ねて、それを三日ほど続けたのち今度は三本重ねて。それを二つ造り両奥歯で噛む。毎日できるだけ長く噛む。彼は家にいるときは食事のとき以外寝ているときも、また通勤途中のクルマのなかでもそれを噛み続けていた。
 彼が毎日のように整骨院に通っていたのは整骨院で第二胸椎あたりを押して矯正してもらうと劇的なほどいつもの自律神経失調状態から抜け出ることができるのを一年ほど前より知っていたからである。しかしその効果はいつも一、二時間しか続かないでいた。そのため彼は自分でヨガをやったりしていたがどうしても効果が出るまでには至らなかった。 また彼は3年ほど前、星状神経節ブロックを10回ほど2週間の間に受けたことがある。そして幼い頃からの自律神経失調が寛解しかけていた。しかし就職が決まるとともに受けられなくなり中止してしまった。それが寛解状態で止まっていたか、それとも完全治癒したか、それは解らないままになってしまった。
 彼が割り箸による咬合挙上法を行ったのはテンプレートが到着するまでの一週間余りであった。そのとき気がついたのが彼は七年前より不眠障害であったが眠り過ぎるほど良く眠れるようになったことである。(彼は寝ているときも両奥歯に割り箸を噛み続けたが幸い喉にひっかけることは無かった。)あまりにも眠りすぎるため彼は脳に腫瘍ができたのではないかと思い、脳外科へ行き、頭部CTを撮ったが何も異常はなかった。
 テンプレートを装着し始めてまず第五腰椎の辺りに違和感を覚えた。しかしそれは三日ほどでなくなっていった。第五腰椎が偏位していたのが矯正されていく過程だったのだと思える。(カイロプラクテイックでは第五腰椎が偏位していると精神的疾患に罹患しやすい----または罹患している、という説がある。)
 そしてそれまで第七頚椎が非常に突出していたが、それがテンプレート装着一週間後にかなりその突出が改善していた。
しかし彼は運動を併用することを怠り、症状の改善は僅かずつしか見られていない。

(症例2)
 少なくとも親兄弟に精神疾患の罹患者はいない。
 彼は小さい頃から健康であり、性格も明るく人気者であった。小さい頃より病気知らずであった。
 高校卒業後、陸上自衛隊に入り4年間何の問題もなく過ごし除隊後地元の商社に入社。しかし生来の倦き易さのため2年間でそこを辞め、それからいろんな職を転々とすることとなる。やっと居付いたと思われた会社の営業の仕事中クルマを運転中に心臓が早鐘のように打ちすぐ近くにあった内科を受診。そこで自律神経失調症と言われた。それが何回も続けて起こり退社せざるを得なくなった。
 彼は自分で『こうなったのは夏、会社の同僚とビアガーデンでビールを飲んでいたとき、近くにいた人が突然倒れ、それを見ていた女性が悲鳴を挙げた。そのため。』と解釈していた。今でも酒を飲もうとするとそのときの情景と女の人の悲鳴が思い出されて来るため酒を飲むことができない。彼はいろんな健康法を渡り歩いた。整骨院にも通ったが骨がずれていることを指摘されるだけで腰も何処も痛くないため通うのをやめた。
 彼はいわゆるがに股であったが鼻筋は曲がってなくまた口角にも左右差はなかった。脊椎に明確な歪みは認められなかった。後頚筋にも左右差はほとんど無かった。
彼は割り箸の根元を4cm程に切りそれを3本重ねたのを2つ造り、それを両奥歯に噛んで走ることを始めた。復職を急いでいたため彼は真剣に毎日それを行った。
 次第次第に彼を覆っていた女性の悲鳴と混じりあった恐怖の光景は気にならなくなっていった。酒も少しづつ飲めるようになっていった。
 この治療法を始めた最初の一週間はまだ酒は飲めなかった。8日後に少し飲んだ。9日後から少しづつ量を増やしていった。3週間後、もうほとんど以前の彼と変わらないような自信が出てきた。クルマを運転していて心臓が早鐘のように打つこともなくなった。一ヶ月後、彼は新しい職場へ復帰した。

(症例3) 
 主訴は将来に対する漠然とした不安感。
 小さい頃より大きな病気や怪我はない。また少なくとも本人・親兄弟に精神科の受診歴はない。しかし小さい頃より社交的ではあるが性格が円満でなく独りよがりなところがかなりあり、周囲から少し変人扱いされていた。
 患者は一浪して入学した一流大学であるはずのW大学教育学部を自分の希望したところではなかったということで2年で辞め、元から入りたかったJ大学英文科を受け直した。しかし勉強をあまりしないで受けたためJ大学には落ち、またT外国語大学にも落ち、第3志望にしていたO外国語大学モンゴル語学科に入学した。(彼はモンゴル語学科を好きで興味があるからということで自ら進んで受けた)
 O外国語学科では一年留年するだけで卒業し、大阪の新聞社に新聞記者として就職。そこで3年間働いた。しかし仕事に対する不平不満強く、(上司や同僚との不仲があったわけではない)親元である長崎で働きたいという思いもあり、(彼は妹一人と2人兄弟である)長崎へ帰ってくる。そして実家からクルマで2時間ほどかかるところにある佐世保の銀行に就職しその銀行のアパートに住み始めた。(彼は独身で、結婚歴はない)
 しかしその銀行も一年足らずで辞め、実家に戻ってきた。その後、オランダ村が開かれたときにそこへ就職した。しかしそこは実家から通うのは困難であり、アパートを借りて生活を始めたが再び3ヶ月あまりで退社。そして今度は実家からクルマで40分あまりの長崎市の中心域にあるN新聞社に再び新聞記者として入社。そして現在に至る。
 二年前、左手の血圧が計れないことを就職のときの健康診断で指摘された。自分でも最近左手の脈が触れず、それに軽い痺れをも感じることに気付いてもいた。そして大学病院にて動脈造影したところ左肩のところに狭窄があり大動脈炎症候群疑いということで手術。しかし手術後、胸郭出口症候群ではないかと整形外科の先�カからは言われてもいた。
 彼が訴える将来への漠然とした不安に対し、筆者は割り箸の根元を4cmほどの長さに切ったものを3本重ねて糸で結んだものを2つ作ってやった。そしてそれを両奥歯に噛んで会社から帰ってきてからでも15分ぐらいでも走るように言った。
 彼は一夜にして不眠障害が治ったと言ってきた。そして雨の日以外は会社から9時ぐらいに帰ってくるとすぐに20分ほどその割り箸を3本重ねたものを両奥歯に噛んでジョギングするようになった。 
 彼の漠然とした精神不安は次第に消えていった。3ヶ月後、彼の精神不安はもはや完全と言って良いほど消えていた。性格も円満になり今では快適な毎日を送っている。


(症例4)
 結婚を目前にしている女性。しかし手掌多汗症があるためそれを苦にして受診。見合い結婚でもあり、相手方の姑に当たる人と一緒に食事をすることが目前に迫っているという。
 今まで彼女は漢方療法やスポーツなどいろいろ試したがなかなか効果が出なかった。そのため思い切って精神科を受診した。
 筆者はその当時、星状神経節ブロック療法に非常に興味を持っており、この症例は星状神経節ブロック療法でしか治らないと思い、星状神経節ブロックを行っている麻酔科の病院を紹介した。
 1ヶ月後、筆者はその病院で偶然彼女と出会った。彼女は星状神経節ブロックをすでに4回ほど受けたという。しかし効果は一時的にしか効かないという。彼女は星状神経節ブロックを週に2回ほど受けていた。そこの麻酔科の先生は星状神経節ブロックは週に2回程度がちょうどいいと思っていたらしい。(星状神経節ブロックはできるかぎり毎日行うべきで、できれば一日2回行うのが理想である。)彼女はアルプラゾラムを一日2.4mg投薬されていた。
 筆者は彼女に福岡の咬合療法を行っている歯科医院を教えた。そして彼女はその咬合療法を受けるようになった。
 彼女は運動を怠ってもいたため最初の一ヶ月ほどは一進一退であった。そのため彼女自身考え運動を併用するようになった。そしてそれからは一週毎に良くなってゆくのが彼女自身解るようになった。
 咬合治療を受け始めて3ヶ月後、アルプラゾラムの服薬量は一日1.2mgに減っていた。5ヶ月後、0.4~0.8mgまで減っていた。7ヶ月後、一日0.4mgにまで減った。現在11ヶ月を経過している。
 現在では結婚し子供もまもなく生まれるという。

(症例5)
 家族歴として母親が分裂病の診断のもと通院中である。(入院歴もある)
 彼は大型トラックの運転手である。性格は明るく友人も多い。深刻に物事を考えるようなことはしないさっぱりとした性格である。
 2年ほど前、休日の日、自家用車の運転中に突然心臓が早鐘のように鳴り出し、救急車を呼ぶというエピソードがある。それ以来、トラックの運転中にもその発作が起こるようになった。内科を受診し心電図・心エコーなどを撮ったが異常なしと言われた。そのため精神科を受診。アルプラゾラムの投与を受け始めた。
 アルプラゾラムの投与量はすぐに一日量3.2mgに達した。2年近く、そういう状態が続いた。症状は良くはならなかった。しかしアルプラゾラムなしにはトラックの運転が恐くてできない。整骨院にも行ったが一時的に少し良くなった感じがしただけだと言う。そのため筆者は福岡の咬合療法のところを紹介した。
 咬合療法を受け始めて一週間でかなり状態は良くなりアルプラゾラムの服薬量は以前の半分ですむようになった。運動を併用することを勧めたが彼は億劫がって運動を併用することに対して消極的であった。そのため最初の一週間のあとは症状は一進一退でアルプラゾラムを以前と同じ量まで服薬することもあった。しかしそのときはアルプラゾラムは以前の半分の量で効くようになっていたためかなりの眠気がしたという。
 彼が運動を併用し始めたのは咬合療法を始めて4ヶ月たった頃であった。アルプラゾラムの服薬量は急激に減っていった。しかし10ヶ月経過した時点である今もトラックを運転するときには少しづつながらアルプラゾラムを服薬し続けている。

(症例6)
 患者は28才主婦。鬱病でほとんど物を食べられず神経性食欲不振症とも言われてきた。そのためトフラニール点滴を毎週2回打ってきたが効果はほとんどなかった。主人がトフラニール点滴を嫌い、また全く良くなる様子がなく、病院を変わるにしても病院は行きつくしていた。
 割り箸の根元を4cmほどの長さに切ったものを3本ずつ糸で束ねそれを両方の奥歯で噛んで家事や縄跳びでもするように(できれば主人と一緒にジョギングでもするように)勧めた。
 効果は2日目頃から現れてきたという。今まで全く何に対してもやる気がなかったのが自分から積極的にジョギングをするようになった。割り箸は3本重ねていても3cmの長さに彼女自身で短めのを作っていた。そのため外見的にはほとんど目立たなかった。
 割り箸を両奥歯に噛みしめてジョギングをするたびにどんどん良くなってくるのが解ったという。
(彼女は単極性の鬱病であり双極性の鬱病ではなく、躁転のエピソードはない。)
 この治療法を始めたときから抗うつ薬の服用は不規則となり全く飲まないで3、4日過ごしていたときもあった。そのためこの治療法を始めて3週間後、思いきって抗うつ薬を全て切った。
 一ヶ月後、会ったときには顔色も良くなり、以前の面影はなかった。そして家事も育児も何の支障もなくこなしていた。

(症例7)
 家族歴として母親も短期ながら急性精神病状態になったことがあるが入院にまでは至っていない。
 彼は小さい頃から自閉症学級に通っていた。歯並びがかなり悪く、しかし反対咬合ではない。また左右差もほとんど見られない。
 小学校・中学校・高校とずっと精神科に通院していた。診断は分裂病であった。ずっと抗精神病薬(ハロペリドール)を投与されてきた。ずっと普通の学校に通い、成績は悪くなく、中より少し上であった。またスポーツもクラブにこそは入ってなかったができる方であった。
 彼は高校卒業後、ケーキ職人を目指し、ケーキ製造の会社に入社。体力と気力は強くクリスマス前の一週間の徹夜にも耐え抜いた。主任などにも昇進できるはずだったが分裂病の悪化があり、仕事で大きなミスを起こし、主任への昇進はならなかった。
 彼にも割り箸の根元を4cmほどの長さに切りそれを3本重ね糸で結んだのを2つ作ってやり両方の奥歯で噛んで力仕事をしたり走ったりするように言った。
 彼は仕事から帰ってきて夕食や風呂の前に十五分間それを噛んで走るようにし始めた。
 一ヶ月経って、薬の量が半分ですむようになったと言ってきた。2ヶ月後、今度は薬の量は以前の三分の一ですむようになったと言ってきた。3ヶ月後、もう�l分の一でいいようになっていた。(この治療法を始める前はハロペリドール換算一日量12mgであった。3ヶ月後にはハロペリドール一日3mgですむようになっていた)
 現在、この治療法を始めて4ヶ月半が経っている。ハロペリドールは依然一日3mgである。

(症例8) 
姉にも同じようなてんかん発作がある。従兄弟が8人いるがそのうちの4人が明かなてんかんを持っている。またあと二人も明らかではないがてんかんを持っているらしい。母方からの遺伝と思われ、母の姉妹兄のうち姉と兄がてんかんである。
 小学4年生の男子。幼い頃よりてんかん発作がありそれが今も続いている。授業中、失禁することもしばしばでそのためにいじめに会っている。成績は良く、トップクラスである。体育の授業には体育の先生がもしものことを思っていつも見学させられていた。
 後頚筋は右側が第二横突起の付近で異常に萎縮していた。鼻筋はやや左に曲がり、口角は左側が右側に比べつり上がっていた。口蓋中央線を見ると下顎が左側に多少偏位していた。これらは症例1と全く同じであった。またその偏位の重症度は症例1よりやや軽い傾向であった。しかし症例1の場合も少年期の写真を見ると少年期にはあまり偏位は少なく、おそらく症例1の場合、(ほとんどの場合、小学生の頃はあまり偏位は目立たず成長期を過ぎて中学、高校の頃になって偏位が目立つようになるようであるが)成長期に偏位が目立つようになったのか偏位がひどくなったのか、どちらかであろうと思われる。また歯並びも悪く、反対咬合になっている。(しかし従兄弟などでてんかんを持っている者のなかで反対咬合はこの患者一人のみである。従兄弟にもう一人、反対咬合の子がいるがてんかんではない。しかし母の兄はてんかんであり反対咬合である。)
 彼はてんかんの薬を飲んでいたが月に2、3度の発作を起こしていた。しかもそれは学校で精神的に緊張を強いられたときに起こっていた。家で発作を起こしたことは少なくともこの2、3年はなかった。
 彼にも割り箸を3cmほどに切り、それを2本重ねたのを2つ作ってやり両奥歯に噛んで学校から帰ってきてからでも走るように言った。
 症例9で紹介する子供の父親が症例9の子供とともにこの子供を夕方ジョギングに連れて行くことになった。
 その割り箸を噛んでのジョギングを始めて発作が全く起こらなくなった。
 それまでテグレトール一日量300mgでそのため学校で授業中居眠りをすることが毎日であったがそれがテグレトール一日量150mgに減量になり授業中の居眠りもなくなっていった。未だこの治療法を始めて一ヶ月余りしか経っていない。

(症例9)
 小学4年の男子。幼い頃より軽いながら汚言症(ジルデラトウレット)がありハロペリドールなどの投薬を受けていた。成績は中の下。家族歴として母親の長姉が分裂病で入院中、原因不明の突然死(心臓マヒと思われる)を遂げている。また母親の次姉も分裂病ですでに十五年間入院中である。(発病は21歳時となっている)
『頭が爆発しそうになる。』と言って時おり親に泣きついていた。そういうときハロペリドールやレキソタンを多量に飲ませてその場をしのいでいた。この子もいじめに会っており、不登校も見られた。
 症例8の男の子と一緒に割り箸を噛んでのジョギングを始めて2週間後くらいから汚言症が見られなくなった。(1週間目、2週間目にも見られていたが以前のようにはあまりひどくなかった。)3週間目、4週間目、5週間目と全く汚言症は見られていない。ハロペリドールも減量され、今ではほとんどレキソタンのみになっている。
 なお、この子も歯並びがかなり悪い。しかし反対咬合などはない。また後頚筋などの左右差もほとんど無い。 

【考察】
 症例1はまだ治癒したとは言い難い。生体の力学的不均衡は幼少時より強く(症例3、症例8と同じである)、そのため幼少時より強い自律神経失調があった。また咬合療法を受けているが運動を併用するのが遅れ治療開始4ヶ月後より走るのを始めた。それから患者の自覚症状は少しづつだが次第に軽快していっている。
 症例3は症例1と同様、後頚筋に左右差がかなり認められ、また口角部の左右差も明らかに存在していた。鼻筋も少し曲がり、後頭部も多少の左右差があった。しかし彼には小さい頃よりほとんど自律神経失調の症状はなかった。ただ、性格の歪みみたいなものが存在していただけである。
 症例2は完全治癒と思われる例である。しかも3週間でほとんど治癒し、1ヶ月で完全治癒した例である。症例2の場合、後頚筋に(後頚筋とは大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋などを指して言う)左右差は始めよりほとんどないことなどから生体の力学的不均衡は元より少なかったと思われる。前後方向の頚椎の歪みが主ではないかと推測される。
 症例4の場合、口角の左右差が有意にあった。しかし鼻骨の歪みはあまりない。また後頚筋などは調べていない。
 症例5の場合、口角の左右差も後頚筋の左右差もそして後頭部の左右差も鼻骨の歪みも有意に存在していた。しかし症例1ほどにはその左右差は著明ではない。またそのためか症例1のように幼少時よりの自律神経失調はない。
症例6、症例7、症例9は左右差はあまり無い。頚椎の前後方向の歪みが主であったと思われる。

 また症例6では咬合治療開始時と単極性鬱病の寛解期が一致しただけなのかもしれない。
 また症例7の例は咬合治療開始時のハロペリドール投与量が多すぎたものとも解釈できる。
 また症例9では本当に汚言症(ジルデラトレット)であったのか、単なる自閉症ではなかったのか、筆者が実際に診察したことのない例であり疑問視される。

【星状神経節ブロックと咬合療法の相関】
 星状神経節ブロック5)と咬合療法はある部分似ている。どちらも星状神経節の過剰活動を抑えることにより不安障害などを治癒に導いている。また気性も温厚となるが、これも星状神経節ブロックと似ている。しかし咬合療法は頚椎だけでなく、頚椎を介し、胸椎・腰椎などの歪みをも整える。(それは胸部交感神経節ブロックや腰部交感神経節ブロックと似ている。)
 星状神経節ブロックは確かにブロックした当初は強烈に効くが、一時的であり、“慣れ”の現象も起こり、脊椎の歪みが強度の人の不安障害を治癒に導くことはできない。しかし咬合療法は永久的な効果がある。
 症例1の患者は以前、星状神経節ブロックを2週間近く受け、生来の自律神経失調症がほとんど治癒しかけたことがある。しかし就職とともに治療に通う時間がなくなり10回近くの星状神経節ブロックの施行で終了してしまったことがある。星状神経節ブロックを続けていて治癒していたかどうか、彼の場合、骨盤・脊椎の歪みがかなり強度なため一時的であったように思われる。
“気の流れ”ということに関しても神経節ブロックは脊椎が歪んだままであるが咬合療法は脊椎の歪みをほとんど完全に整えることができるため“気の流れ”が円滑になる。そして人体の恒常性に逆らわない自然なそして完全な治療法と言えると思う。
 精神的疾患発症の一つの素因は咬合の歪みから頚椎・胸椎・腰椎・骨盤に歪みを起こした力学的不均衡である。それが全身の“気の流れの乱れ”を引き起こし“気の上衝”を起こし、発病に至らしめている。
 カイロプラクティックなど整骨術では仙腸関節が全椎骨の中枢とされている。しかし全椎骨の第一の中枢は咬合であり、仙腸関節は第二の中枢であると筆者は推測する。また整骨術では筋肉を調節しないため整骨術の施行後、時間がたつとともに元に戻ることが非常に多い。

【咬合は第2頚椎横突起に支点がある】
 咬合は顎関節ではなく、第二頚椎横突起に支点があり9)、咬合が歪むことによって第二頚椎が歪み、それが頚椎、胸椎、腰椎そして仙腸関節・骨盤、膝関節の歪みまで引き起こしている。
 この咬合の支点が顎関節ではなく第2頚椎横突起にあることを最初に唱えたのはアメリカの工学博士であるグゼイ博士である。グゼイ博士は工学的観点からそれを見い出した。
すでにもう50年前になる。しかし未だこの理論を認識している歯科医師・医師はアメリカに於いても少ない。

【体の左右非対称性の科学】
 症例1に於いて、頭部MRIで鼻中隔が右方へ大きく歪んでいる。外見的に鼻筋が左に曲がっているのは鼻中隔が右に曲がりその先端が左方へ突出しているためであった。
 また症例1の場合、後頭部の変型が軽くなってきている。以前、ほとんど咬んでいなかったと思われる右方の後頭部は凹んでいたがそれが突出し始めてきている。咬む力が30代の男性の骨をも変型させている。

 鼻筋が左に歪んでいる人、口唇の左側が右側に比べつり上がっている人、後頭骨の左側が右側に比べ突出している人、そういう人は長年左側で噛んでいる。
鼻筋が右に歪んでいる人、口唇の右側が左側に比べつり上がっている人、後頭骨の右側が左側に比べ突出している人、そういう人は長年右側で噛んでいる。

 咬合の低い方の筋肉系は萎縮傾向にあり、咬合の高い方の筋肉系は発達傾向にある。
 右後頚筋が発達している人は主に右側で噛尺している。左後頚筋が発達している人は主に左側で噛尺している。その偏側の後頚筋が発達している人の頚椎はその発達している方に頚椎後突起が突出し歪んでいる。
 第二頚椎付近の後側の片方の筋肉に強い左右差がある人をしばしば見かける。そういう人は必ず自律神経失調症に罹っている。その人は片方の奥歯だけで噛んでいる。噛んでいる方の後頚筋----とくに第二頚椎レベル----は発達しているがほとんど噛んでいない方の後頚筋は萎縮している。

 右側の筋肉系が萎縮(攣縮)傾向にある人は物を噛むときほとんど左側で噛んでいることを意味している。そういう人は右側に割り箸か何かを噛んで運動すると右側の筋肉系も発達してくる。そうして左右の筋肉系のバランスを取ると運動機能も向上し、自律神経の機能も整ってくる。
 しかし左右方向のバランスが大きく歪んでいる人も、左右方向の歪みが前後方向の歪みを招く故に前後方向の歪みに起因して病気が起こっている場合が圧倒的に多い。

【咬合療法の必要性と割り箸療法】
 片方の後頚筋が発達している人は食事のときできるだけ後頚筋が発達していない方で噛尺するようにすると発達していない方の後頚筋も発達してきて頚椎の歪みが正されることになるが、それには相当の年月を要するし、不可能と断定して良い。咬合療法はそのために存在する。
 そして咬合療法には費用がかかる。最低10万円かかるようだ。しかも用いる素材の硬度が強すぎる。『割り箸』を使用した方が良い。割り箸の根元を3~4cmぐらいに切り、2本か3本、または4本重ね糸で結び、両奥歯で噛みしめる。
 割り箸には適度な緩衝作用がある。後頚筋の左右差が著明であっても両側の奥歯に噛むべきである。左右差が著明でもその著明な左右差が前後方向の歪みを引き起こし、その病態に関与している場合が非常に多いためである。

【効果を上げる方法】
家にいる間は噛んでいるべきだろう。しかしそれのみでは頚椎と胸椎上部にしか及ばない。しかもその及びかたもあまり強くない。土台である骨盤などをもその噛み合わせに適合させないと頚椎と胸椎上部の矯正も一時的なものになる。
 それを噛んで走るなど運動をすると全身の筋肉系がその噛み合わせに適合するようになる。短期間で効果をあげようと思うなら走ったり縄跳びのようなことをしなければならない。また全身の力学的アンバランスが著明な人がこの治療法で病気を治そうと思うなら走るなどできるだけ激しい運動をしなければならない。走るなどできるだけ激しい運動をすることによって全身の筋肉系・骨盤・脊椎を取り巻く筋肉系がその咬合に合うようになってくる。
 骨盤が椎骨および全身の土台と考えられるため、走ることが最も効果がある。腕立て伏せなどは実際あまり効果がない。
 また骨盤の歪みが軽度の人は一日15分ほどの歩行のみで治癒していっている。

【第2頚椎と骨盤の関連性】
 第二頚椎と骨盤の関連性は東洋医学やカイロプラクティックなどでよく言われている。第二頚椎を今までと異なる位置に置いたまま走る。(サンドバックを打つという方法もある。)そういう激しい運動をすることにより骨盤の筋肉系がその新しい第2頚椎の位置に適合するようになってくる。

 たしかにその矯正が急激すぎる場合、自律神経は却って一時的ながら乱れてしまうこともある。しかしそれを乗り越えると自律神経失調症の改善が待っている。

 ある人は一日15分、風呂に入る前にこの咬合矯正器を嵌めて走っている。15分で限界というぐらいに走っている。
 筆者が知っている競輪選手は週一回咬合調整に通っているが、毎回の咬合調整で足の裏の感覚が微妙に違ってくるという。彼は自転車に乗っているときだけ咬合矯正器をはめている。野球選手もそうであろうと思うが運動選手は運動しているときだけ嵌めていれば良いようである。それほどこの咬合矯正器を嵌めて運動することが重要である。

【咬合点が低いとどうなるか】
 咬合点が低くなると第一、第二頚椎が前方へ突出してくる。これによる頚椎の正常なたわみがなくなり、頚椎が棒状のように真っ直ぐとなり、頚部交感神経節に過剰な刺戟を及ぼすようになると推測される。咬合挙上法により第一、第二頚椎の前方への突出を矯正すると頚椎の正常なたわみが戻り頚部交感神経節の安定化が図られると推測される。(この矯正の速さが急激すぎる場合、心臓へ行く頚部の神経節が刺戟され脈拍が速くなることがあるが、2、3日すると慣れてきて治るし、また挙上床の高さを低くするとそれはすぐになくなる。)

【咬合療法の臨床的効果】
偏頭痛、原因不明の頭痛、脳波異常を伴うてんかんに対しての効果が90%を超え、また難聴や精神不安への効果も80%を超える。また睡眠時無呼吸発作への効果も報告されている。
 精神不安などが何故解消されるのか、それは星状神経節ブロックと似たようなものと考えられる。“頚椎の歪み”あるいは“異常なたわみ”が是正されるために交感神経の過緊張が解消されるためと思われる。中国医学的には気の流れが円滑になるためと説明できる。

 この治療法は椎間板ヘルニアにも効く。何故か不安障害・分裂病の患者に椎間板ヘルニアが多いことを筆者は以前より不思議に思っていた。また第二頚椎部付近の後頚筋の異常な萎縮が見られることが多いことを不思議に思っていた。

【終わりに】
 この咬合療法は40年ほど前にアメリカで生まれた。クオードランド理論というのがその基本理論になっている。
 噛み合わせの支点は顎関節ではなく環椎歯突起関節にあり、噛み合わせの歪みが環椎歯突起関節の歪みを起こしそれが全身の骨格の歪みの起点になるというものである。実際、噛み合わせを左右に少しずらすだけで右側に倒れやすくなったり、左側に倒れやすくなったりする。
頚椎の歪みが不安障害・分裂病の大きな原因の一つではないだろうか。不安障害・分裂病の家族集積性も頚椎の歪みでかなり説明できると思う。椎骨の歪み易さは遺伝する。
 頚椎の歪みが咬合療法により正常化される。
 咬合の低さを補うとともに噛み合わせの歪みを正すのがこの治療法である。咬合を高くすると咬合筋に対する負荷が高くなる。また同時に噛み合わせの歪みを修正することによって頚椎の湾曲が正常に戻る。
 噛み合わせの歪みを正すことにより骨格の歪みが正され、そのため様々な病気が治癒していっている。
分裂病の患者をも椎骨の歪み(ほとんど全ての気の滞りの原因)を取り除くと分裂病を治癒に導くことをも可能であると自分は信じる。(これは東洋医学でいう気の流れ----とくに督脈の流れ----と密接に関係しているように思えてならない。)

                  平成7年2月    寒いアパートの一室にて


【参考文献】
鶴原常雄、長谷 豊、山本裕子、他:不定愁訴への新しい試み----テンプレート療法----. 小児の保健 11:45-56, 1984
住岡輝明、宮崎正夫、前原潔: 頭頚部痛に対し咬合挙上法(テンプレート療法)を施行し軽快をみた2例. ペインクリニック Vol.8 No.3: 367-370, 1987
神田 知、前原 潔、河瀬雅夫:咬合挙上床の運動機能に及ぼす影響について、第45回日本体力医学会大会(抄), 1990.
渡辺勝久、井上充博、他:咬合関係と筋力についての実験、第2回日本顎関節学会総会(抄), 1989.
若杉文吉『革命的・神経ブロック療法』p200, 1992, マキノ出版
前原 潔『テンプレート療法で健康を取り戻す』p230, 1994, 博美館出版
Founder AC: The Dental Physician. USA(Ⅲ), Medical-Dental Arts, 93-134, 1980
Sergl-HG: Psychological aspect of the time factor in orthodontics:Fortschr-Kieferorthop.27(1):61-5,1966
Guzay CM:Quadrant Theorem :a viewable biophysical analysis of prosthodontia, TMJ, disorders, Chicago, DDS Pub, 1952
Monson GC: Impaired function as a result of closed bite. J N Dent Assoc 7:979-992, 1920
小高修司『中国医学の秘密』p209, 1991, 講談社 
神川喜代男『鍼とツボの科学』 p192, 1993, 講談社
『骨盤湧命法』 p256, 1990, 廣済堂

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咬合療法と精神疾患
   

【抄録】
 咬合療法という東洋医学にも西洋医学にも今まで存在しなかった療法で精神的疾患などに対し著明な効果を挙げている。特に自律神経に由来する疾病にはかなりの効果を挙げている。
 両奥歯に割り箸を噛んで走るなどの運動をすると骨盤や全椎骨などを取り巻く全身の筋肉・靭帯系の不均衡が矯正され、全身のバランスが整い、生体のアンバランスによって生じる筋肉の硬結が解れ“気の流れ”が良くなり、自律神経が安定化してゆくと想定される3,6)。
 今までレセプターの過剰によると推定されてきた病態も、また中国医学的に“気の上衝”として捉えられてきたものも、この咬合療法を行うとそれは脊椎の偏位(骨盤の偏位)に由来していることがほとんどであることが解る。
 筆者はテンプレート療法にて用いる咬合挙上の材質が硬すぎ、それによる弊害が大きいと判断。独自に割り箸による治療法を考案し、患者に施行している。
 
【key words】occlusion, atlas, generalized anxiety disorder, nonorganic insomnia

【始めに】
 全般性不安障害などに効果があると言われている咬合挙上法(テンプレート療法)の症例を筆者は最近実際に見分してきている。
 最近、咬合治療で病気を治す、ことが認識されてきている。また咬合を修正することによって全身のバランスが良くなりスポーツの記録が良くなることが認識されてきている。野球選手や競輪選手などが積極的に取り入れ始めている。
 咬合を修正することによって(咬合の偏位を修正することによって)骨盤や椎骨などの偏位が修正され、それにより自律神経のアンバランスが修正され、様々な病気が治癒していっている。偏頭痛、原因不明の頭痛、パーキンソン病、小児麻痺、全般性不安障害、非器質性不眠症、喘息や皮膚炎などアトピー性疾患、胃腸障害、子宮筋腫、脊椎側湾症などが治癒していっている。
 また筆者は小児麻痺の子供がこの咬合療法で軽快しつつあるのを二例直接知っている。なぜ小児麻痺が咬合療法で良くなるのか(咬合療法を受けているのはこの二人の子供たちだけである)、大脳基底核部の力学的調整作用が最も考えられる。
 またパーキンソン病にも効く6)。その機序は咬合挙上法が上顎骨を介し物理的な作用で大脳基底核部の血流を改善する故か、それとも三叉神経など神経を介して血流改善が行われる故か、それとも頚椎を始めとして胸椎・腰椎・骨盤などが正され自律神経が整う故か、不明である。
 テンプレート研究会6)には現在、全般性不安障害など精神的疾患に対する多数の症例が蓄積されていると推測する。
 筆者は、テンプレート療法にて用いる咬合挙上の材質の硬度が強過ぎるため極めて緻密な調整が必要であること、材質の硬度が強過ぎるために歯根沈下を起こしやすく歯根沈下による二次的な弊害が存在すること、それ故に独自に割り箸による治療法を考え(以下、割り箸療法と呼ぶ)患者に指導している。

【方法】
 割り箸の根元を4cmほどの長さに切りそれを二本または三本重ねて糸で巻く。それを二つ造り両奥歯で噛む。それを噛んだまま走ったりなど運動をできるだけ激しく長時間行う。強く噛む必要は無く、極めて弱く両奥歯で噛むだけで充分と説明している。
 それにより全身の骨格の不均衡(とくに骨盤・脊椎)が是正されてゆくと説明している。

【症例】
(症例1)29歳、男性
 家族歴:特記すべきことなし。
 彼は乳児期に後頭部が左右非対称に変形しているのを母親や祖母から気付かれていた。そのために特別に柔らかい枕を敷いてもらったりしていたが後頭部はいわゆる絶壁状で左右を比較すると左後頭部が左右非対称に突出したままであった。
 それ故と推測されるが、乳歯の上の前歯はかなり乱れていた。そして永久歯も上の前歯は斜めに生えていた。
 幼少時、小学校入学まで彼は非定型自閉症と診断される状態であった。しかし家が経済的に非常に貧しかったこともあり、精神科クリニックなどには一度も通院していない。
 ところが小学校入学とともに自閉性が突然消失する。
 小学一年次の終わり頃から慢性副鼻腔炎になり、小学生時代、その慢性副鼻腔炎で非常に苦しむ。
 高校一年次から吃音を自覚するようになる。それまでも吃音は有ったが軽症でほとんど自覚していなかった。それが国語の本を読むことにも差し支えるようになった。
 高校三年次、試験中などにパニックに陥るようになった(これは親知らずの治療と時期が一致している)。精神科受診。全般性不安障害と診断され、alprazolamなどの投薬を受ける。以降、alprazolamなどbenzodiazepine系抗不安薬を充分量服用しないと満足に日常生活が送れないようになる。
 本院受診は28歳次。人の居るところでは落ち着けず、感情の高ぶりやイライラ感、精神的な緊張感を覚えると訴える。また特に第二胸椎付近に強い凝りが有り、毎日のように整体院に通院していることも訴える。脳波検査、血液検査、神経学的検査、そして胸部単純X線・胸部CTを行うも特記すべき所見なし。
 前医の処方と同じく、alprazolam 2.4mg/day、bromazepam 15mg/day、 cloxazolam 12mg/day 処方する。この処方のまま、半年余りが過ぎる。症状は前医と同じく不変であった。割り箸療法を教える。教えたその日に割り箸療法の器具を造り、その夜より、それを両奥歯に噛んで30分ほど走り始める。彼はそれまでも全般性不安障害には運動が一番の治療法になると本で読み、一日20分ほどの走ることを行っていた。  彼は七年前より非器質性不眠症をも発症していたが、割り箸療法を始めて一日目より眠り過ぎるほど良く眠れるようになる。あまりにも眠り過ぎるため彼は脳に腫瘍ができたのではないかと考え、当院にて頭部CTを撮ったが特記すべき所見なし。
 また、割り箸療法を始めてから数年前からの第二胸椎付近の強い凝りを自覚しなくなり数年間続いた整体院に通うことを完全に止めている。
 また、人の居るところで今まで落ち着けなかったが落ち着けるようになる。
 抗不安薬の服用量を自ら減らしてゆく。割り箸療法を始めて3ヶ月後には抗不安薬はとくに緊張を催す場面以外では必要でなくなる。
 半年後にはほとんど抗不安薬を必要としなくなる。現在、更に症状は軽症化の傾向に有る。 

(症例2)男性、26歳。
 家族歴:特記すべきことなし。
 彼は小さい頃から健康であり、性格も明るく人気者であった。小さい頃より病気知らずであった。
 高校卒業後、陸上自衛隊に入り4年間何の問題もなく過ごし除隊後、地元の商社に入社。しかし生来の倦き易さのため2年間でそこを辞め、それからいろんな職を転々とすることとなる。やっと居付いたと思われた会社の営業の仕事中、クルマを運転中に心臓が早鐘のように打ち、すぐ近くにあった内科を受診。そこで自律神経失調症と言われた。それが何回も続けて起こり、結局、退社せざるを得なくなった。それから彼はいろんな健康法を渡り歩いた。高名な整骨院にも行ったが骨が変位していることを指摘されただけで痛い処が無いため通院せず。
 彼は『こうなったのは夏、会社の同僚とビアガーデンでビールを飲んでいたとき、近くにいた人が突然倒れ、それを見ていた女性が悲鳴を挙げた。そのため。』と解釈していた。今でも酒を飲もうとするとそのときの情景と女性の悲鳴が思い出されて来るため酒を飲むことができない。
 彼はいわゆるがに股であったが鼻筋は曲がってなく、また口角にも左右差はなかった。脊椎に明確な偏位は認められなかった。後頚筋にも左右差はほとんど無かった。
 彼は筆者より割り箸療法の説明を受けると、その日にそれを造り、それを両奥歯に軽く噛んで走ることを始めた。家の経済状況が極めて厳しく復職を急いでいたため彼は真剣に毎日走った。
 次第次第に彼を覆っていた女性の悲鳴とそれに混じりあった恐怖の光景は気にならなくなっていった。酒も少しずつ飲めるようになっていった。
 この治療法を始めた最初の一週間はまだ酒は飲めなかった。8日後に少し飲んだ。9日後から少しずつ量を増やしていった。3週間後、もうほとんど以前の彼と変わらないような自信が出てきた。クルマを運転していて心臓が早鐘のように打つことも無くなった。
 治療開始一ヶ月後、彼は新しい職場へ就職した。なお、この症例には全く薬物は用いなかった。

【考察】
 症例1の生体の力学的不均衡は幼少時より強く、そのため幼少時より強い交感神経過緊張が存在した。また、後頚筋に大きな左右差が認められ、また口角部の左右差も大きく存在していた。鼻筋も曲がり、後頭部も強い左右差があった。
 症例2は完全寛解と思われる例である。しかも3週間でほとんど寛解し、1ヶ月で完全寛解した例である。症例2の場合、後頚筋(後頚筋とは大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋などを指して言う)に左右差は始めよりほとんど無いことなどから生体の力学的不均衡は元より少なかったと思われる。前後方向の頚椎の偏位が主だったのではないかと推測される。
 星状神経節ブロック11,12)と咬合療法はある部分似ている。どちらも星状神経節の過剰活動を抑えることにより全般性不安障害、非器質性不眠症などを治癒に導いている。また気性も温厚となるが、これも星状神経節ブロックと似ている。しかし咬合療法は頚椎だけでなく、頚椎を介し、胸椎・腰椎などの偏位をも整える。(それは胸部交感神経節ブロックや腰部交感神経節ブロックと似ている。)
 星状神経節ブロックは確かにブロックした当初は劇的に効くが、一時的であり、“慣れ”の現象も起こり、脊椎の偏位が強度の人の全般性不安障害、非器質性不眠症などを完全寛解に導くことは困難である。しかし咬合療法は半永久的な効果がある。
 症例1は以前、星状神経節ブロックを2週間近く受け、生来の自律神経失調がほとんど寛解しかけたことがある。しかし就職とともに治療に通う時間がなくなり10回近くの星状神経節ブロックの施行で終了してしまったことがある。星状神経節ブロックを続けていて完全寛解していたかどうか、彼の場合、骨盤・脊椎の偏位がかなり強度なため一時的効果のみであったと思われる。
 星状神経節ブロック療法は攣縮している筋肉を支配している神経に働きかけ攣縮している筋肉を解き解す作用がある11,12)。これは鍼の作用機序3,6)と酷似している。
 咬合療法は脊椎と骨盤の偏位を力学的に調える。
 精神的疾患発症の一つの素因は咬合の偏位から頚椎・胸椎・腰椎・骨盤・股関節などに偏位を起こした力学的不均衡である。それが全身の自律神経のバランスの乱れを引き起こし発病に至らしめている。7)
 カイロプラクティックなど整骨術では仙腸関節が全椎骨の中枢とされている。しかし全椎骨の第一の中枢は咬合であり、仙腸関節は第�フ中枢であると筆者は確信する。また整骨術では筋肉を調節しないため整骨術の施行後、時間が経つとともに元に戻ることが非常に多い。
 咬合は顎関節ではなく、第二頚椎横突起に支点があり2)、咬合が歪むことによって第二頚椎が偏位、それが頚椎、胸椎、腰椎そして仙腸関節・骨盤、膝関節の偏位まで引き起こす。
 この咬合の支点が顎関節ではなく第2頚椎横突起にあることを最初に唱えたのはアメリカの工学博士であるグゼイ博士である2)。グゼイ博士は工学的観点からそれを見い出した。
すでにもう50年前になる。しかし未だこの理論を認識している歯科医師・医師はアメリカに於いても極めて少ない。現在では日本が咬合療法の先駆を斬っている。
 症例1に於いて、頭部MRIで鼻中隔が右方へ大きく歪んでいる。外見的に鼻筋が左に曲がっているのは鼻中隔が右に曲がりその先端が左方へ突出しているためであった。
 また症例1の場合、後頭部の変型が軽くなってきている。以前、ほとんど咬んでいなかったと思われる右方の後頭部は扁平であったがそれが突出し始めてきている。咬む力が30歳の男性の骨をも変型させている。
 咬合の低い方の筋肉系は萎縮傾向にあり、咬合の高い方の筋肉系は発達傾向にある。
 右後頚筋が発達している人は主に右側で噛尺している。左後頚筋が発達している人は主に左側で噛尺している。その偏側の後頚筋が発達している人の頚椎はその発達している方に頚椎後突起が突出し歪んでいる。
 第二頚椎付近の後側の片方の筋肉に強い左右差がある人をしばしば見かける。そういう人は必ず自律神経失調を起こしている。その人は片方のみで噛んでいる。噛んでいる方の後頚筋----とくに第二頚椎レベル----は発達しているがほとんど噛んでいない方の後頚筋は萎縮している。
 右側の筋肉系が萎縮(攣縮)傾向にある人は物を噛むときほとんど左側で噛んでいることを意味している。そういう人は右側に割り箸か何かを噛んで運動すると右側の筋肉系も発達してくる。そうして左右の筋肉系のバランスを取ると運動機能も向上し、自律神経の機能も整ってくる。
 しかし左右方向のバランスが大きく歪んでいる人も、左右方向の偏位が前後方向の偏位を招く故に前後方向の偏位に起因して病気が起こっている場合が圧倒的に多い7)。
 割り箸には適度な緩衝作用がある。後頚筋の左右差が著明であっても両側の奥歯に同じ高さの割り箸を噛むべきである。左右差が著明でもその著明な左右差が前後方向の偏位を引き起こし、その病態に関与している場合が非常に多いためである。
 片方の後頚筋が発達している人は食事のとき、できる限り後頚筋が発達していない方で咀嚼するようにすると発達していない方の後頚筋も発達してきて頚椎の偏位が正されることになるが、それには相当の年月を要するし、不可能と断定して良い。咬合療法はそのために存在する。
 例えば、家にいる間のみ治療の割り箸を噛んでいるとする。しかしそれでは頚椎と胸椎上部にしか及ばない。しかもその及びかたもあまり強くない。土台である骨盤などをもその噛み合わせに適合させないと頚椎と胸椎上部の矯正も一時的なものになる。
 それを噛んで走るなど運動をすると全身の筋肉系がその噛み合わせに適合するようになる。短期間で効果をあげようと思うなら走ったり縄跳びのようなことをしなければならない。また全身の力学的アンバランスが著明な人がこの治療法で病気を治そうと思うなら走るなどできるだけ激しい運動をしなければならない。走るなどできるだけ激しい運動をすることによって骨盤・脊椎を代表とする全身の骨格系を取り巻く筋肉系・靱帯系がその咬合に合うようになってくる。
 骨盤が椎骨および全身の土台と考えられるため、走ることが最も効果がある。腕立て伏せなどは実際あまり効果がない。
 その矯正が急激すぎる場合、自律神経は却って一時的ながら乱れてしまうこともある。しかしそれを乗り越えると自律神経失調の改善が待っている。
 筆者が知っている競輪選手は週一回テンプレート療法の咬合調整に通っているが、毎回の咬合調整で足の裏の感覚が微妙に違ってくるという。彼は自転車に乗っているときだけ咬合矯正器を嵌めている。野球選手もそうであろうと思うが運動選手は運動しているときだけ嵌めていれば良いようである。それほどこの咬合矯正器を嵌めて運動することが重要である。
 咬合点が低くなると第一、第二頚椎が前方へ突出してくる。これによる頚椎の正常なたわみが無くなり、頚椎が棒状に真っ直ぐとなり、頚部交感神経節が過剰な刺戟を受けるようになる7)。咬合挙上法により第一、第二頚椎の前方への突出を矯正すると頚椎の正常なたわみが戻り頚部交感神経節への過剰刺戟が消失する7)。(この矯正の速さが急激すぎる場合、頸部交感神経節の心臓へ向かう神経節が刺戟され脈拍が速くなることがあるが、2、3日すると心臓へ向かう神経節が刺戟に慣れてきて治まる。また挙上床の高さを低くするとそれはすぐに治まる。
偏頭痛、原因不明の頭痛、脳波異常を伴うてんかんに対しての効果が90%を超え、また難聴や精神不安への効果も80%を超える。また睡眠時無呼吸発作への効果も報告されている。7)
 精神不安などが何故解消されるのか、それは星状神経節ブロック11,12)と似たようなものと考えられる。“頚椎の偏位”あるいは“頚椎の異常なたわみ”が是正されるために頸部交感神経節の過緊張が解消されるためと思われる。中国医学的には“気の流れ”が円滑になるためと説明できる。
 全般性不安障害、非器質性不眠症など精神疾患の患者には第二頚椎付近の一側の後頚筋の異常な萎縮が見られることが極めて多いことを筆者は以前より不思議に思っていた。

【終わりに】
 この咬合療法は50年ほど前にアメリカで生まれた。クオードランド理論2)というのがその基本理論になっている。
 噛み合わせの支点は顎関節ではなく環椎歯突起関節にあり、噛み合わせの偏位が環椎歯突起関節の偏位を起こしそれが全身の骨格の偏位の起点になるというものである2)。実際、噛み合わせを左右に少し変位させると右側に倒れやすくなったり、左側に倒れやすくなったりする。
 頚椎の偏位が全般性不安障害・非器質性不眠症などの大きな原因の一つである。
 頚椎の偏位が割り箸療法により正常化される2)。
 噛み合わせの偏位を修正することによって頚椎の偏位と湾曲が正常に戻る。
 頚椎の偏位と湾曲が正常に戻ることにより胸椎・腰椎・骨盤そして股関節の偏位が正され、そのため様々な病気が治癒してゆく7)。

【参考文献】
1)Founder AC:The Dental Physician.Medical-Dental Arts:93-134、1980
2)Guzay CM:Quadrant Theorem, a viewable biophysical analysis of prosthodontia.TMJ disorders、DDS Pub、Chicago、1952
3)神川喜代男:鍼とツボの科学、講談社、東京、1993
4)神田知、前原潔、河瀬雅夫:咬合挙上床の運動機能に及ぼす影響について、第45回日本体力医学会大会(抄)、1992
5)Monson GC:Impaired function as a result of closed bite.J N Dent Assoc (7):979-992、1920
6)小高修司:中国医学の秘密、講談社、東京、1992 
7)前原潔:テンプレート療法で健康を取り戻す、博美館出版、東京、1998
8)Sergl-HG:Psychological aspect of the time factor in orthodonticsm
.Fortschr-Kieferorthop 27(1):61-65、1966
9)住岡輝明、宮崎正夫、前原潔:頭頚部痛に対し咬合挙上法(テンプレート療法)を施行し軽快をみた2例、ペインクリニック Vol.8 No.3:367-370、1987
10)鶴原常雄、長谷豊、山本裕子、他:不定愁訴への新しい試み----テンプレート療法----、小児の保健 11:45-56、1989
11)若杉文吉:革命的・神経ブロック療法、マキノ出版、東京、1995
12)若杉文吉:星状神経節ブロック療法、マキノ出版、東京、2001
13)渡辺勝久、井上充博、他:咬合関係と筋力についての実験、第2回日本顎関節学会総会(抄)、1992

Challenge to Anxiety Disorders by Occlusal Sprint

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 精神分裂病は不治の病とされている。また、神経症さえ不治の病に近いものと現在の医学(少なくとも現在の正統派的精神医学)では定義されている。しかし神経症は星状神経節ブロックや胸部交感神経節ブロックあるいは東洋医学で治癒してゆくのを何例も経験してきた。しかし精神分裂病に関しては神経ブロックも東洋医学もまだ治癒に至らしめるのは至難の業と思われている。しかし精神分裂病も自律神経失調症の一種であり星状神経節ブロックを丹念に行えば治癒に至らせることができると筆者は信じている。
 今まで喘息を持病とする分裂病の患者二名、後頭部痛を持病とする分裂病の患者一名に対し、星状神経節ブロックを行なってきた。それらは喘息に対する治療のためであったり、後頭部痛への治療のためであった。

【症例】
(症例1)
 患者は37歳、男性。発症は少なくとも20歳以前と推定される。長年、(ハロペリドール12mg/day、レボメプロマジン300mg/day、カルバマゼピン250mg/day、ジアゼパム30mg/day;#1)という多量投与を受けている。ーーこれだけの多量投与を行わなければこの患者の精神状態をコントロールすることはできないーー身長172cm,体重73kg,筋肉質で短気なところがあり、暴れ始めると手が付けられなくなる。以前より病棟中で最も危険で要注意とされていた患者であった。
 精神状態が悪化すると抗精神病薬を普段より更に多量に投薬しなければならない。しかし普段より多量に服薬すると抗精神病薬は交感神経を抑制し副交感神経を昂進させるため持病である喘息が悪化していた。
 今回の精神状態悪化時、抗精神病薬を増量(ハロペリドール9mg/day追加、レボメプロマジン150mg/day追加)。すると持病の喘息が悪化。よって星状神経節ブロックを施行。施行すること12回(1日1回、ほぼ連日施行)。喘息が寛解するとともに精神状態も劇的に改善。臨時の追加薬を中止し、しかも#1の投薬量を3週間ほどかけて漸減してゆく。#1の投薬量の半分になったところで投薬量を減らすことを中止する。しかし全く精神状態は落ちついている。それより10カ月経過している。(肝機能および腎機能に変化はない)
 #1の投与量の半量に減らしても今までにないほど良好な精神状態が保たれていることより、投薬量を更に減らすことも可能と判断しているが、今まで数え切れないほど暴力事件を起こしており、また暴れ始めると看護士10人でも抑えること不可能な患者であるため、看護士長がこれ以上減らすことを強く反対するためこれ以上減らすことができないでいる。

(症例2)
 患者は32歳、男性。小児喘息が今まで続いている。比較的多量の抗精神病薬を服薬している。普段よりかなり多量の喘息に対する服薬をしており、季節の変わり目には更に喘息が悪化していた。
 この患者にも喘息悪化時、星状神経節ブロックを施行。しかし患者は星状神経節ブロックを拒否し2回の施行で中止せざるを得なかった。効果は判然としない。

(症例3)
 患者は28歳、男性。中学時代に発症したと思われる症例であり、父親、兄(この患者は2人兄弟である)も精神分裂病である。後頭部痛を持病としている。親子3人とも頭部CT上後頭部の全く同部位(正中線上である)に良性と思われる骨腫瘍が存在する。
 後頭部痛が2、3日前より激しく、鎮痛薬でも抑えきれないため、星状神経節ブロックを施行。この患者においては一回の施行のみで抗精神病薬(ドグマチールを一日800mg服薬している)を5日ほど完全に絶つことができた。(この例のみ患者が注射器による星状神経節ブロックを怖れるため低出力レーザーによる星状神経節ブロックを行った。また、唖門への照射と併用した。)

【考察】
 症例3は低出力レーザー唖門照射により寛解状態に導かれたのか、それとも低出力レーザー星状神経節照射により寛解状態に導かれたのか、その両者の相互作用なのか、判然としない。
 これまで精神分裂病の患者に対し足三里および肩井などへの刺針およびパルス通電を何例か行ってきたが効果は一時的でしかなかった。しかし一時的にせよ効果は見られたためこれも丹念に行えば治癒に結びつけることも可能と思われる。

【終わりに】
 近い将来、星状神経節ブロックおよび鍼治療が分裂病そして神経症の治療にと用いられるようになると思われる。


Challenge to schizophrenia by stellate ganglion block

【参考文献】
1)若杉文吉:星状神経節ブロックの適応。ペインクリニック12: 171-178, 1991
2)若杉分吉『革命的・神経ブロック療法』p200, 1992, マキノ出版
3)小高修司『中国医学の秘密』p209, 1991, 講談社 
4)神川喜代男『鍼とツボの科学』 p192, 1993, 講談社
5)神川喜代男『レーザー医学の驚異』 p184, 1992, 講談社
6)中国における漢方療法の現状;羅和春etc,:臨床精神医学 第13巻 第1号(別冊)1984;45-6
7)James-E;Walter-S;Cornelius-A. Laser action spectrum of reduced excitability in nerve cells:Brain research. 1981;204: 436-440
8)Funk-JO;Kruse-A;Kircher-H. Cytokine production after helium-neon laser irradiation in cultures of human peripheral blood mononuclear cells:J-Photochem-Photobiol-B.1992 Dec;16(3-4): 347-55
9)New trend in neuroscience: low-power laser effect on peripheral and central nervous system (basic science, preclinical and clinical studies). :Rochkind-S; Ouaknine-GE :Department of Neurosurgery, Tel-Aviv Sourasky Medical Center, Tel-Aviv University, Israel. :Neurol-Res. 1992 Mar; 14(1): 2-11
10)Effects of low-power gallium aluminium arsenide diode laser irradiation on the development of synapses in the neonatal rat hippocampus.:Igarashi-H; Inomata-K :Department of Anatomy, Toho University School of Medicine, Tokyo, Japan. :Acta-Anat-Basel. 1991; 140(2): 150-5
11)Low power laser irradiation alters the rate of regeneration of the rat facial nerve. :Anders-JJ; Borke-RC; Woolery-SK; Van-de-Merwe-WP :Department of Anatomy and Cell Biology, Uniformed Services University of the Health Sciences, Bethesda, Maryland. Laser-Surg-Med. 1993; 13(1): 72-82


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