映画の感想記事の連投が続きます。

dTVで視聴した「嘘を愛する女」です。

2018年公開で、監督は主にCMディレクターとして活躍する中江和仁氏。

 

 

この映画に原作はありませんが(小説版が存在するが、あくまでも映画の小説版らしい)、実話をモチーフとして制作されたそうです。

 

その話とは、1991年11月4日朝日新聞朝刊社会面に「夫は だれだった」と題された記事。

以下、そちらの内容を少し。

 

 

この記事が切っ掛けとなったのでしょう、掲載の半月後に男性を20年近く探し続けていた”もう1人の妻”の存在が分かり、本妻に出張と言ったまま消息を消していた彼の遺骨は、結局彼女の元へ戻ったと報じられたそうです。

当然、具体的な彼の人物像は報道されていませんが、5年間に渡り内縁の妻だったA子さんは本妻から男性の正体をある程度は伝えられたと思われますが、それでも失踪からA子さんと出会うまでの15年間は空白のままだったようです。

 

日本では統計的に年間8万人以上の人が失踪し、そのうち約9割は戻ってくるなり発見されるそうですが、残りは失踪したままなんだそうです。自殺、事故や他殺、自らの意思で失踪を継続しているなど、様々なケースがあるでしょう。

中江監督はこの出来事を知って以降、長年構想を練っていたとの事。

 

 

映画に話を戻しましょう。

主演は長澤まさみさん。そして謎の男役が高橋一生さん。

他に吉田鋼太郎さん、DAIGOさん、川栄李奈さんなど。

 

 

食品メーカーのキャリアウーマン川原由加利(演:長澤まさみ)は、恋人の研修医・小出桔平(演:高橋一生)と交際・同棲して5年。

そんなある日、くも膜下出血で桔平が倒れたと警察が由加利の自宅を訪れます。病院に駆け付けた由加利が昏睡状態となった桔平の姿に悄然とする中、警察は桔平の免許証が現住所以外全て偽造されたものだと伝えます。その後、研修医の勤務先身分証も偽物と判明。

ショックを受けた由加利は私立探偵(演:吉田鋼太郎)に調査を依頼し、桔平の真実を探ろうとします。その過程で桔平による原稿用紙700枚の未完の小説が出てきて・・・。

 

 

前半のストーリー展開は、実話の新聞記事とほぼ同じ形となっています。ド派手な展開はなくても、日常生活の中に潜んでいた”予想外のとんでもない深刻な謎”がジワジワと迫ってくるようで、視聴者は興味を引き付けられると思いますよ。

そのせいか、主人公と探偵による真実の追跡過程もそんなに中だるみは感じませんでした。

実際、現実にこんな出来事の当事者になったらショッキングだよなぁ。結婚詐欺なら金品を無心したりと、比較的短い時間で不審な部分に感づくものの、そんな素振りもなかったのだから。

 

ただですね、ストーリー自体とは関係ありませんが、これ、純粋に作品内容と題名がマッチしているとは思えません(ミスマッチであっても、題名のインパクトで耳目を引く事が出来るのなら余計な事は言いませんが、興行戦略としてそれを期待出来るような題名でもないし)。

特に結末が明らかになるにつれ、ストーリーと題名との距離がどんどん開いていく違和感を感じてなりませんでした。

更に加えて、dTVのジャンルでは「サスペンス・ホラー」に分類されていましたが、むしろ「ヒューマンドラマ」に近いと思いました。サスペンスミステリーだと思い込むと、後半はやや肩透かし感を食らう人もいるかも。

 

 

作品は長澤さん演じる主人公の焦燥や葛藤がよく描かれています。

また吉田さんの探偵役の作中設定も、なるほど、そういう為のものかと、合点がいきました。

しかしこの映画の場合、結末が分かってしまえば男がそこまで過去を消す必要があったのか、及びそんな事が実際に可能なのかは少し疑問でしたが、書きかけの小説が人としての自己再生への願望なのだとして、色々なタイプの人がこの社会においてそれぞれの日常と人生を送っているのだと、梅之助自身の疑問を納得させました。こればかりは梅之助の感覚ばかりが正しいとは言えませんので。

 

まあ、全体的にドラマとしては、いい作品だったと思います。