堀江貴文氏の名前ですっかり有名になった、北海道大樹町にあるインターステラテクノロジズ社の民間ロケット「MOMO3号」。

5月4日の打ち上げで民間ロケットとしては国内初の宇宙空間(地上100km以上)に到達し、無事成功に終わった事は、多くの国民が既に知るところです(高度113.4kmまで到達)。

梅之助も2017年のMOMO初号機の打ち上げから注目していたので、嬉しい限りです。

 

 

(上)産経ニュース   (下)静岡新聞 より

 

 

 

「この大樹町を日本の有力な宇宙港として、より発展させていきたい」と記者会見にて語った堀江氏。

梅之助はこの人物の頭のよさや合理的な考え方に一部感心させられるものの、基本的にはあまり好きなタイプの人ではありませんでした。しかしインターステラテクノロジズ社に出資して創業メンバーとなり、中央との格差広がる北海道の地に同社を引っ張ってきた事に対しては、道民として素直に感謝しています(それにしても、堀江氏のSEALDsディスりは見事というか、笑わせて頂きました)。

さて、実はここまでが今日の前置き。

 

多分、多くの人にとって日本の宇宙港としてまず思い浮かぶのは、「気象衛星ひまわり」などの打ち上げで知られる鹿児島県・種子島ではないでしょうか。

その要因として航空宇宙工学的に、「日本の南に位置しているので赤道上に近く、衛星の軌道傾斜角の調整が小さくて済むから」、加えて「赤道に近ければ地球の自転速度(エネルギー)を大きく利用出来るから」と学んだ事があると思います(この場合ロケットは地球の自転方向、つまり東向きに打ち上げます)。

では今後、民間会社のロケットが衛星を搭載する事を考えると、北海道なんて日本の北ですよね。射出場として、むしろ不適地なのでは?

単純な疑問として、そう思った人も多かったのではないでしょうか?

 

違うな、間違っているぞ!

(スミマセン、このフレーズ、最近気に入っているもんで・・・)

 

確かに気象衛星などは静止衛星として、赤道上を地球の自転速度と同じスピードで周回しなければならないので上の説明の通りなのですが、一口に人工衛星と言っても実は様々な軌道の種類があるのです。

ここでは話を分かりやすくするために、代表的な衛星軌道を下に二つ紹介します。

 

 

「JAXA 宇宙情報センター」HP より

 

赤道上付近を周回する「静止軌道」(赤道上を地球の自転速度と異なるスピードで周回したり、自転と逆方向に周回するような「静止しない衛星」もあるかも知れませんが、ここではそれらも含めて「静止軌道」と表現します)に対し、赤道に対して直角に地球を回る「極軌道」というものもあるんですよね。

特に後者の場合の打ち上げは、赤道の近くでなくても全く構いません。そして衛星を縦方向に周回させるこの「極軌道」のケースでは、ロケットは南に向けて打ち上げる事になります(現在需要が高まっている「太陽同期軌道」衛星は、この「極軌道」の一種だと考えてください)。

「極軌道」の衛星を打ち上げる場合、大樹町の地形は南側と東側に広大な太平洋が広がっており、打ち上げ失敗の場合の人的被害を防ぐ条件を満たしている訳です。

 

加えて地上における立地条件もある程度揃っていました。

元々この大樹町の射出場は、防衛省・海上自衛隊の哨戒機エンジンの実験に使われていた場所でした。その為、地盤は厚いコンクリートが精密な水平を保って敷き詰められていて、ロケット発射場としてはうってつけだったようです。

また大樹町は30年前から「宇宙のまちづくり」を目指して航空宇宙事業の積極的な誘致活動と環境整備を行い、これまでJAXAや大学などの航空宇宙実験が度々行われてきました。町民及び地元漁業組合の理解や協力姿勢も良好だそうです。そして人口密度が少ない。これ、案外重要だったりします。

これらの環境と実績に目を付けて、インターステラテクノロジズ社がやって来た訳ですね。

 

ちなみに、あの小説やTVドラマで有名な「下町ロケット」のモデルであるとも言われているのが、北海道・赤平市にある「植松電機」という会社で、社員約20名ほどの規模ながらNASAも一目置く会社なのだそうです(小説原作者は「モデル企業はない」と明言しているものの、原作者の頭の中には植松電機のイメージはあったものと推定される)。

植松電機は現在、インターステラテクノロジズ社MOMO号との直接的な関係はないとの事ですが、その前身ロケットの燃焼実験などは赤平の植松電機社内で行われていたそうですよ。

社長の植松努氏がまたまた素晴らしい人物で、よかったら→『 こちら 』をどうぞ。

引用先から一部だけ転載させて頂きます。

 

僕には、かつて樺太で車の修理会社をやっていたおばあちゃんがいたんです。敗戦後、ソビエト軍が侵攻してすべてを失ってしまいました。だからいつも僕にこう話していましたよ。「お金はくだらないよ。一晩で価値が変わっちゃうからね。お金があったら本を買いなさい。頭に入れてしまえば誰にも取られないし、その知識が新しいことを生み出すよ」と。

 

ちょっと話がずれちゃいましたね。

 

なんか中国人に土地を買い占められ、停滞する北海道からたまに東京などに上京すると「東京オリンピック」景気を目のあたりにさせられて、ちょっと複雑な気持ちになるんですけれど、久しぶりに北海道の明るい話題に触れた「ロケット打ち上げ成功ニュース」でした。