昨年の秋、アニメ映画「君の名は。」が世間を席捲した頃、もう一つのアニメ映画が一部の人達から注目を集めていました。

それが今作、「聲(こえ)の形」。

どんな内容なんだろうと作品概要を当時見てみると、テーマがちょっとシリアスで重めの青春譚。もういい齢なので、その手の作品を観るために劇場まで足を運ぶ、という事にはなりませんでしたが、レンタル開始時期になれば手に取ってみてもいいかな、と考えていました。

で、先日視聴してみましたよ。

 

 

監督は京都アニメーション所属の山田尚子氏。過去にはTVアニメのヒット作「けいおん!」を手掛けています。また原作は大今良時という女性漫画家の同名作品で、宝島社の2015年版「このマンガがすごい!・オトコ編」で第一位を取った話題作みたいですね。

テーマは、コミュニケーション不全によってすれ違い傷ついた少年少女たちの、主人公を中心とした自己再生の物語で、「伝える」事の大切さと難しさを描いた作品です。

 

 

主人公・石田将也はガキ大将だった小学生の頃、先天性聴覚障害を持つ転校生の少女・西宮硝子を、ちょっとした興味本位からからかい始めます。当初は硝子に対し好意的に接していたクラスメイト達も、その波長の合わなさから次第に彼女を敬遠しだし、遂に硝子はいじめを受ける存在へと・・・

ところがある日、一連の事態が表面化した際に将也だけが一人責めを負わされ、一転、彼が周囲からいじめを受ける側になって孤立し、硝子はやがて転校していきます。

誰にも心を開けなくなった将也は以来、自分の存在を否定したまま中学・高校へと進学。そして彼は高3になって、これまでの人生のけじめを付ける為、ある行動を開始するのですが・・・

 

 

原作漫画が話題作だったので、この映画を観た人はその読者も多かった事でしょう。そういう人からすると、映画版は物足りなく感ずる部分もあったようです。原作の長さを2時間の映画にする為にはポイントを絞らなければならず、そのため周辺人物の描写がかなりマイルドになっているみたいですね。

それでも梅之助のように原作を知らない立場からすると、この「聲の形」という作品は映画版だけでも視聴者の感情を引っ搔き回してくれる興味深いものでした。

登場人物の設定が同世代の「君の名は。」が壮大なファンタジーならば、「聲の形」は日常のリアル路線。子供から青年期に至る間の、繊細かつ残酷ですらある感情が描かれています。

 

 

主人公の小学生時と高校生時の性格描写が「罪の意識」を持ったとはいえ、あまりにも差がありすぎて、そこは少し違和感を感じましたが、彼の不器用ながらの贖罪路程にはついつい感情移入をして観てしまいましたね。恋愛感情をあまりクローズアップさせなかったのも、この作品が持つ本質的なテーマから考えると、かえって良かったと思います。

 

ただね、自分の事を書くのはなんだけれど・・・

梅之助は小学生の頃、自閉症の同級生と一緒の登下校を遠回りをしながら長年続けました(彼の登下校時の安全の為)。

だから非のない障碍者を「波長が合わない」という理由だけで虐める精神は、小学生と言えど梅之助の感覚では全く理解出来ないし、理解する気も起きません。

それゆえ、この映画の小学生時代の描写はヘドが出る思いでした。まあ、そこはあくまでも個人的感想。

 

 

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