
「堤幸彦最高傑作」にふさわしい「夏目アラタの結婚」
シルバーウィーク前半戦の最終日はミナミに赴き、
なんばパークスシネマまで「夏目アラタの結婚」を鑑賞。
「TRICK」、「ケイゾク」→「SPEC」、「池袋ウェストゲートパーク」といったテレビドラマから、
「20世紀少年」3部作、「自虐の詩」、「まぼろしの邪馬台国」といった映画まで幅広く手掛ける堤幸彦の最新作は、
「包帯クラブ」以来17年ぶり(!)にタッグを組む柳楽優弥を主演に迎え、
さらに柳楽優弥とはテレ東系・ドラマ24「アオイホノオ」以来の競演となる黒島結菜をヒロインに迎えた、
乃木坂太郎がビッグコミックスペリオール(小学館)で連載された同名漫画を実写映画化。
ひょんなことから、女殺人鬼と結婚することになった児童保護司の純愛を描いたヒューマンドラマで、
全体を通じて、これは堤幸彦がこれまでの自分のキャリアをこれでもかとぶつけてきた、
まさに「堤幸彦最高傑作」と呼ぶにふさわしい作品でした。
弱冠20歳にして、社会的に成功している男性3人を殺害し、遺体をバラバラにした品川真珠(黒島結菜)。
凄惨な殺人事件を躊躇なく起こした不細工な殺人鬼に、日本中を震撼させた。
3人目の被害者の息子に無断で名前を拝借され、
真珠と文通をしていたことを知った児童保護司の夏目アラタ(柳楽優弥)は、
仕方なく東京拘置所に赴き、真珠と接見することとなり、その席でアラタは驚く行動に出た。
「俺と結婚しようぜ」
死刑囚との獄中結婚は前代未聞だったが、アラタは別の目的があったようで・・・
毎日1日につき20分のスリリングな戦いが始まった。
ここ、ネタバレに抵触するかもしれないが、
獄中結婚の難しさと、”親ガチャハズレ”の大人になった時の生き辛さを描き、
一般的な地上波の報道番組やワイドショー番組で取り上げてくれない社会の暗部をあぶりだしている。
社会に切り込んだ作品や、理想の家族像を描き続けてきた堤幸彦が、
これまでのキャリアをぶつけてきた、キャリア史上最高の集大成的作品になったのではないでしょうか。
元ヤンの児童保護司を演じた柳楽優弥がクールに感じたのは、
「包帯クラブ」で更なる可能性を感じた堤幸彦の先見の名があってこと。
二転三転で相手を翻弄する女死刑囚を演じた黒島結菜は、「アオイホノオ」の時から、
NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」を経て、悟りを開いた感があったわ。
あとね、児童相談所の上司を立川志らくが演じたのには驚いたわ!
普段はワイドショーで毒舌ふりまいているが、あの髪型見て、立川談春かと思ったわ!
この「堤幸彦最高傑作」である「夏目アラタの結婚」、サスペンスと捉えるか、ヒューマンドラマと捉えるか、
それはあなた次第。