この映画の男たちについつい妬いてしまう。男なのに。不覚っ!
土曜日、懲りずにダブルヘッダーを敢行。
最初はなんばパークスシネマに赴き、
いつの間にかコスパが悪くなったポップコーンをつまみながら、
「戦場のメリークリスマス」(英題「Merry Christmas, Mr. Lawrence」/4K修繕版)を鑑賞。
芸術か猥褻かで物議を醸しだした「愛のコリーダ」と並ぶ、大島渚監督を世界的名匠に押し上げたこの映画。
大島監督の眼力で選んだ狂いのないキャスティングと、手腕で引き出された映像美。
そして、坂本龍一教授の劇伴が見事に調和し、感動を誘った名作っスわ。
この映画で俳優としてブレイクしたビートたけしは、大島渚監督の仕事っぷりに感銘を受け、
後に映画監督業に進出することになったんだよね。
ワタクシ、初めてこの作品を映画館のスクリーンで観たのは、
(配給の権利切れにより)今は亡き松竹富士の配給では最後の公開となったほんの昔、
こちらも今は亡き道頓堀・浪花座2の、
いかにも元の映画館の2階部分を分館化された痕跡がある館内レイアウトで鑑賞し、完全に打ちのめされた。
そしてこの度、大島渚の監督作全作品が、国立映画アーカイブに収蔵され、
今後は大島渚監督の回顧特集上映でしか鑑賞する機会が減ってしまうことから、
新映倫基準で数か所のボカシにとどまった「愛のコリーダ」と同時に、
この「戦場のメリークリスマス」も、4Kレストアを施し、昨年、最後の大規模公開となりましたが、
新型コロナウイルスの感染再拡大で休業せざるを得なかった映画館が多く、
規制が解除されても、映画館に足を運ぶことをためらったファンが多かったことをうけ、
今年の1月、リベンジ公開され無事、国立映画アーカイブに収蔵される予定でしたが、
3月28日に坂本龍一教授が71歳で逝去し、ファンが「もう一度見たい!」のリクエストが殺到したため、
関係各位の理解と協力を得て、
(表現が不謹慎ではあるが、)最後の大規模ロードショー、奇跡のアンコール公開が実現。
ローレンス・ヴァン・デル・ポストの短編小説集「影の獄にて」から2編をモチーフにしたこの作品。
1942年、第二次世界大戦が終焉を迎えつつあるインドネシアのジャワ島にある日本軍の俘虜収容所。
朝鮮人軍属のオランダ人俘虜強姦事件を担当することになったハラ軍曹(ビートたけし)は、
日本語が理解できる英国陸軍のロレンス中佐(トム・コンティ)と奇妙な友情で結ばれていた。
一方、ハラ軍曹の上司で、収容所所長を務めるヨノイ陸軍大尉(坂本龍一)は、
日本軍輸送隊を襲撃した末に俘虜となった英国陸軍のセリアズ少佐(デヴィッド・ボウイ)を預かることになるが、
ヨノイ大尉は、セリアズ少佐の反抗的な態度に悩まされるも、次第に惹かれていくことに。
そして重大な事件が起こり、俘虜収容所に不穏な空気が漂うことに。
戦闘シーンのない異色の戦争映画と銘打っているが、その当時の俘虜収容所の実態が戦争を醸し出しており、
大島渚監督は、宗教観、道徳観、組織論での争いを、戦争に例えているのがよくわかるわ。
あと、この映画の男たちが美しく表現されていて、男なのに、思わず嫉妬の念を抱いてしまった。不覚っ!
ラストの終戦後、戦犯として刑に服していたハラ軍曹が、
自分の処刑前夜にロレンス中佐と面会したシーンが感慨深く、
ロレンス中佐は、ジャワ島俘虜収容所での日々が、かけがえのないものだったと感じました。
今回、4Kレストアが施されたことにより、
フィルムの情報量を極限まで引き出したことで、本来の映像美が表現され、
さらに4chドルビーステレオが、5.1chデジタル音響化され、
4chドルビーステレオでは捉えられなかった隠れた音が出されたことも、新たな感動を得られた。
第二次世界大戦を知る戦争経験者が徐々に亡くなっていき、
戦争の悲惨さを伝える語り部が少なくなっていく中で、
「戦場のメリークリスマス」は戦争教材として有意義だと思いました。
↑最後のスタジオライブとなったNHK東京放送センター509スタジオでのスタジオライブから。
坂本龍一教授の名刺代わりとなるこのテーマ曲が心に刺さる。
名作はいつまでも心に残る。