
「Taking Care of Business.」は呪い。
TOHOシネマズ梅田で「ベイビー・ブローカー」を見た後、
JR京都線で茨木駅に向かい、イオンモール茨木内のイオンシネマ茨木へ。
ここで観た映画は、バス・ラーマン監督の「エルヴィス」。
彼がいなかったら、ビートルズもクイーンも存在しなかったという、
ギネス世界記録(R)が認めた誰もが知る伝説のスーパースター、
エルヴィス・プレスリー(1935-1977)の生き急ぎ過ぎた人生を、
「ロミオ+ジュリエット」「ムーラン・ルージュ」のバズ・ラーマンが映画化。
効果的な音楽の使い方に定評があるラーマン監督が、こういった伝記映画を撮ることは必然。
この手の映画は、IMAXかドルビーシネマ、イオンシネマ茨木をはじめ数か所しかないTHXで上映するはずが、
「エルヴィス」と同じ7月1日(金)に公開された「バズ・ライトイヤー」に全部取られとるやん!
マジむかつくねん!
この映画は、無名のカントリーシンガーだったエルヴィス・プレスリーが、
音楽ジャンルとして確立したロックと、魅惑の腰振りダンスを武器に、世界的なスーパースターにのし上がり、
そしていかに転落したかを、マネージャーのトム・パーカーの視点から紡ぐもので、
黒人が多く居住しているメンフィスで、白人居住区で育ったエルヴィス・プレスリーは、
白人の音楽であるカントリーに、黒人の音楽であるリズム&ブルースを融合したロックを誕生させ、
それが、後にマネージャーとして牛耳ることになるトム・パーカーの耳に入り、
一気に時代の窮児に上り詰める一方で、
腰振りダンスが反道徳的だとか、白人が黒人の文化を取り入れていることが許せないなど、
世間の風当たりが激しくなり、
2年間、ドイツへの徴兵の後に、俳優としてMGMで映画を撮り続けたものの、スランプに陥り、
やっぱり自分には音楽しかないと、ワーカホリック上等で過密スケジュールを組むように。
ワタクシが見た限りでは、エルヴィス・プレスリーは、音楽で社会と真っ向勝負していると思う。
白人の音楽であるカントリーに、黒人の音楽であるリズム&ブルースやゴスペルを取り入れ、
ロックンロールをジャンルとして確立させるまで時間がかかり、
コンサート会場で、一番見づらい所に設けられた黒人専用エリアが許せなかったり、
ラスベガスでの定期公演で、黒人コーラス隊を入れたりと、
音楽を通じ、人種差別問題に真摯に取り組んでいたと思うんだよね。
しかも、それがトム・パーカーとの出会いで転落の一途をたどることになろうとは。
まず、エルヴィス・プレスリーになり切っていたオースティン・バトラーの完コピぶりに脱帽。
「Ray/レイ」でレイ・チャールズになり切ったジェイミー・フォックスや、
「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディ・マーキュリーになり切ったレミ・マレックを彷彿とさせたわ。
名優トム・ハンクスがトム・パーカーを演じ、これは長い俳優キャリアの中で最凶の悪役を演じたわと。
その一方で、今回の映画のロゴを見て思いました。
映画のロゴの「V」にあるマーク、エルヴィス・プレスリーが常にぶら下げているネックレスの「TCB」。
これは「Taking Care of Business.」。
スラング的に言うと「やるべき事をしている」の意味で、プレスリーが座右の銘にしている言葉。
何もかも桁外れな彼だから言えるが、それは逆に呪いの言葉。
1963年から1968年までのスランプ期を越え、
没年までの9年間、ロック以外の音楽ジャンルに挑戦し、1年間に125本のライブステージをこなす、
いわば、ワーカホリック(仕事中毒)状態になり、私生活をも犠牲にしていた上に、
ストレスからくる過食症で激太りした、呪いの言葉だとワタクシは思う。
自分がスーパースターであることを証明するために、私生活をも犠牲にして仕事に打ち込む姿勢が、
かえって自分で自分の首を絞めている。
”働き方改革”が叫ばれている中、今じゃ考えられへんわ。