
戦災孤児にとって”帰らずの島”の生活はささやかな幸せ。
”6月毎週日曜ダブルヘッダー”第1週@イオンシネマ京都桂川の2発目。
この日のメインイベントとしてみた映画は、
「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」(ドルビーアトモス音響)。
(って、「東京2020オリンピックSIDE:A」は前座かい!)
シリーズの始祖にして頂点の”ファースト・ガンダム”から、
名エピソードとして人気がある反面、作画崩壊をよく弄られるTVシリーズ第15話「ククルス・ドアンの島」。
TVシリーズの翌年に公開された総集編劇場版3部作や、
キャラクターデザインとして魅力あるキャラを生み出した安彦良和が新解釈でコミカライズ化した、
「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」でもこのエピソードが盛り込まれなかったが、
安彦良和自ら監督を務め、上映時間108分にブラッシュアップ化されアニメ映画化。
デジタル中心の現在の技術で作られた”ファースト・ガンダム”で、作画崩壊も個性の一つとしてとらえ、
名もなき小さき者たちの人間ドラマとしてよくできてて、
「機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)」以来に”ガンダム泣き”してしまった。
何故イオンシネマ京都桂川までわざわざ赴いたというと、ドルビーアトモスを堪能したくて、
昨年12月に赴き「劇場版 呪術廻戦0」を鑑賞した、イオンシネマ独自のULTIRAスクリーンで。
「呪術廻戦0」を見たときは、DCP5.1chでしたが、
イオンシネマ独自の大型スクリーン・ULTIRAで導入されているドルビーアトモスに惹かれ決断した次第。
別に梅田ブルク7のドルビーシネマで見るという選択肢もあったが、直感(本能?)で。
本編の話。
今回、映画にブラッシュアップされた「ククルス・ドアンの島」は、
どちらかというと劇場版3部作の補完というより、「THE ORIGIN」のスピンオフ映画って感があるよね。
それもその筈。
ガンダムシリーズ特化漫画誌・月刊ガンダムエース(KADOKAWA・角川書店)で連載された、
おおのじゅんじ作画による「THE ORIGIN」のスピンオフ漫画、
「MSD(モビルスーツディスカバリー)ククルス・ドアンの島」が原作。
(C)創通・サンライズ
安彦良和監督の下、イム・ガヒ、田村篤、ことぶきつかさ、カトキハジメといった、
”ファースト・ガンダム”に影響を受けたクリエイターが集結。
アムロ・レイ役の古谷徹、カイ・シデン役の古川登志夫、
ちょっと出たが、シャア・アズナブル(あるいは、キャスバル・レム・ダイクン)役の池田秀一が続投し、
声優業を引退したとか、鬼籍に入られたなどの関係上、キャストも大幅変更し、
ジオン軍の脱走兵ククルス・ドアンは武内駿輔が担当。
ブライト・ノア艦長(CV:成田剣)率いる地球連邦軍ホワイトベース隊は、
ジャブローでの奇襲を乗り越え、ジオン軍地球侵攻軍のアジト、オデッサに向かっていた。
物資補給のためベルファストに立ち寄った最中に、
近くの無人島”帰らずの島”にいるジオン軍残党の掃討指令が。
早速、アムロ・レイ(CV:古谷徹)、カイ・シデン(CV:古川登志夫)が帯同し、
ガンダム、ガンキャノンを搭載した輸送ヘリ・ガンペリーを”帰らずの島”に飛ばしたが、
その”帰らずの島”で見たのは、いるはずのない子供たちと一機のザクだった。
ザクを動かしていたのは”帰らずの島”のヌシであるジオン軍脱走兵、ククルス・ドアン(CV:武内駿輔)。
戦闘中に瓦礫の下敷きになった母親をゆする子供を見て、罪悪感に苦しみ、
戦災孤児を連れて脱走し、”帰らずの島”にたどり着いたのだ。
ドアンに救助されたアムロは、ドアンの本心に触れ、島の豊かな生活に参加するように。
同じころ、地球侵攻軍将軍のマ・クベ(CV:山崎たくみ)は、
かつてのドアンの部下であるエグバ・アトラー(CV:宮内敦士)率いるサザンクロス隊に出動要請を出す。
モビルスーツ同士の白兵戦も、セルルックCGを応用し、
手描きセルアニメでは表現できない部分をここまで表現できたことが素晴らしく、
ストーリーもここまで深掘りしてて、ドアンはなぜジオン軍を脱走し、”帰らずの島”に居ついたのか、
なぜ多くの戦災孤児を引き取ることになったのか、プロセスがよくできてんな~と唸ったわ。
また、テレビシリーズからの数々のシーンも、デジタルで新規作画しており、
松山祐士&渡辺岳夫が手掛けたテレビシリーズの劇伴も、服部隆之の手でアップデートしていて、
ドルビーアトモス音響も手伝ってか、音にリアリティを感じていたんだよね。
ヒット街道を驀進中の「シン・ウルトラマン」や「トップガン マーヴェリック」同様、
”おじさん世代”にささる映画に昇華したことは及第点。
現在、ロシア軍のウクライナ侵攻のニュースが連日報じられていてて、
ウクライナ侵攻同様、”帰らずの島”の戦災孤児たちは、戦争によって夢も希望も奪われていて、
”帰らずの島”の生活に微かな幸せを感じていたんだよね。
こりゃ”ガンダム泣き”必死になるわ。
公開前、安彦良和監督は「ガンダムを映像で作るのはこれが最後」と語っていたが、
安彦監督が後期高齢者という年齢的な問題もあり、
”ファースト・ガンダム”のテレビシリーズ放送時からのキャスト同様、
引き際を考えたうえでの発言と受け止めている。
実際、「機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)」では制作当時30代のクリエイターで固め、
”ファースト・ガンダム”の生みの親である富野由悠季監督が、若きクリエイターに未来を託す目的で、
「Gのレコンギスタ」総集編劇場版5部作の最終2作をほぼ完全新作で作ったり、
10月期のMBS・TBS系”日5”枠で放送される「機動戦士ガンダム 水星の魔女」では、
テレビシリーズ初の主人公機を操る女性主人公で、スタッフも女性中心になるのではないかというように、
ガンダムシリーズが未来永劫続くコンテンツにする取り組みが進んでいるからね。
この「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」は、
国連が定めた持続可能な17の開発目標、SDGsから、
「貧困をなくそう」
「飢餓をゼロに」
「安全な水とトイレを世界中に」
「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
「つくる責任 つかう責任」
「平和と公正をすべての人に」
の項目に該当する場面も盛り込んでいてて、幸せな社会を構築する教材にはちょうどいいかなと。