
いつ南海トラフ地震が起こっても仕方がない中で、「日本沈没」は意義がある。
「半沢直樹」(第1シリーズ)から復調し、今や王道ドラマ枠に成長したTBS系”日9”日曜劇場枠。
10月期は、小松左京の代表作を原作とした「日本沈没 -希望のひと-」。
2010年10月期「獣医ドリトル」以来、
小栗旬が11年ぶりに日曜劇場に帰還し、国難に立ち向かう官僚を演じます。
日曜劇場復活の立役者になった香川照之が、原作に登場する田所雄介博士を演じる以外、
主要登場人物が、”霞が関”メインと、原作より大胆アレンジ。
いつ南海トラフ地震が起こっても可笑しくない状況で、”霞が関”視点の「日本沈没」は意義があるかも。
2023年。
東山総理(仲村トオル)は、世界環境会議の席で世良教授(國村準)のもと、
総理肝いりの環境先進国入りのためのプロジェクト”COMS”推進を表明。
その傍ら、長沼官房長官(杉本哲太)は、定例会見で、
東山総理が“未来の日本”を見据えて各省庁の優秀な若手官僚たちを集めた、
“日本未来推進会議”を発足すると発表。
そのメンバーには、環境省官僚の天海啓示(小栗旬)、経産省官僚の常盤紘一(松山ケンイチ)も選ばれていた。
啓示は自分の出世のためなら手段を選ばぬ野心家で、東山総理にすり寄る一方、
反総理派の里沼副総理(石橋蓮司)を懐柔しようと画策している。
そんな折、ネットニュースで田所博士(香川照之)の関東沈没への警鐘を鳴らす記事が掲載され、
環境団体の一団が霞が関でデモ行進を起こし、事態収拾の為に、啓示は田所博士と接触するが、
田所博士の持論を完全無視。
そのあと、啓示は週刊誌・サンデー毎朝記者の椎名実梨(杏)に、
「Dプランズ」という環境ビジネスで稼ぐ企業と環境省のあらぬ癒着疑惑を突きつけられてしまうが、
「Dプランズ」の雑誌広告に田所博士のコメントが載っておることに気付き、
啓示は”日本未来推進会議”に田所博士を招集し、田所博士の持論を述べる前に、
「Dプランズ」の広告を突きつけ、自分の罪を田所博士に擦り付けることに成功したんですが、
その直後、伊豆沖を震源地とした地震が霞が関を直撃してしまう。
それが、日本の未来を左右しかねない事態になろうとは・・・
1973年公開の森谷司郎監督の映画版と、2006年公開の樋口真嗣監督の映画版は、原作に遵守し、
D計画に参加することになった深海調査艇のパイロット・小野寺俊夫の視点から描き、
2020年に配信されたNETFLIXオリジナルアニメ版では、
中学3年生の女子中学生、武藤歩(CV:上田麗奈)とその家族の視点から描かれ、
今回、”霞が関”の官僚の視点から、日本沈没の危機に立ち向かうというのだが、
様々な視点から「日本沈没」を楽しむのも、かえって斬新かもな。
随所に使われたVFXの充実っぷりも、TBS系”日9”枠の絶好調ぶりを証明している。
啓示の夢に出た、東京ベイエリアのビル群が崩壊する場面はトラウマものやわ。
今回、小栗旬が演じる天海啓示が、「獣医ドリトル」の主人公、鳥取健一とタイプが同じかと思うんだけど、
全く持って違うと思うんだよね。
鳥取健一は、「獣医はビジネスだ」という持論を展開し、
畜害には真摯に向き合うが、飼い主や金持ちには冷たい。
環境省官僚の天海啓示も、自分の出世のためなら手段を選ばぬくらい野心が強いが、
次第に自分の使命に目覚めていく、真のリーダーになろうと動き出す。
「希望のひと」は勇気なくして前進なし。
コロナ禍のことや、ポストプロダクションの関係上、余裕をもって、撮影は春までに既に終了しており、
誰一人、キャストやスタッフからコロナウイルス罹患者を出さなかったのは、せめてもの救い。
昨年の「半沢直樹」(第2シリーズ)で、ドラマのクライマックス直前にスタッフがコロナに罹患し、
撮影スケジュールに余裕がなく、1回だけ生放送トークバラエティが緊急放送されたことがあったからね。