
「バベットの晩餐会」で考えた、本当の「幸福」とは何か。
関西3府県と愛知県にかけられた緊急事態宣言解除の前倒しが濃厚になりました。
ここで気を許してはいけません。
新しい生活様式のもとで、規則正しい生活をこころがけましょう。
「アマゾンプライムビデオの会員見放題で見つけた、ワタクシがチェックし損ねた映画な話。」
2度目の緊急事態編第8弾は、
1987年作品のデンマーク映画「バベットの晩餐会」。
(日本公開は1989年。アマゾンプライムビデオで配信されているのは2017年公開のデジタルリマスター版。)
東京都中央区銀座一丁目。
現在はコナミのeスポーツパークが建っているこの地。
はるか昔をたどれば、かつてはシネラマの大画面が売りの映画館、テアトル東京が建っており、
1987年、映画館事業の衰退と建物の老朽化により、
西武百貨店を主力企業とするセゾングループのもとで建て替えられ、銀座テアトルビルが落成。
そこにはピーター・ブルック・カンパニーから劇団四季まで多彩なジャンルの演劇を上演した銀座セゾン劇場、
(のちにパルコの下で貸館中心のル・テアトル銀座に改名)
多くの海外のセレブが定宿として宿泊したホテル西洋銀座、
そして、ミニシアターの銀座テアトル西友(のちに銀座テアトルシネマに改名)が入居していた。
年号が「昭和」から「平成」に移って1カ月が過ぎ、
その銀座テアトル西友で、1本の映画が公開され、世間を席巻していた。
それが「バベットの晩餐会」。
米AMPAS選定のアカデミー賞(R)で最優秀外国語映画賞を受賞したこの作品は、
ロバート・レッドフォード主演の映画「愛と哀しみの果て」の原作「アフリカの日々」のデンマーク人小説家、
イサク・ディーネセンが、本名のカレン・ブリクセン名義で書いた小説が原作。
後のスローライフ到来を予見した名作です。
男性のワタクシからしたら、どうも女性主体の作品はとっつきにくい感があったため、
この映画が流行っても、流行には乗らなかったわ。
19世紀、ユトランド半島の片田舎。
マーチーネとフィリパの老姉妹は、嫁ぐ機会があったのに父に仕える道を選び、
牧師である老父と清貧な同居生活を送っている。
そんな老姉妹の下に、パリ・コミューンで家族を亡くしたフランス人女性バベットが来た。
バベットは老姉妹の家政婦として使い、日々を過ごす一方で、
老姉妹の父親が亡くなったことを境に、
父を慕っていた村人の信仰心は日を追うごとに薄れ、いさかいが絶えなかった。
そんな中、バベットのもとにフランスから手紙が届き、買った宝くじが当選したと。
その当選額が1万フラン。現在の日本円に換算すると3800万円。
フランスに帰国するのではないかと心配する老姉妹でしたが、
バベットには姉妹に話していない秘密が。
バベットはかつて、パリの有名レストラン「カフェ・アングレ」の女性シェフとして働いており、
バベットは姉妹に、父の生誕100年を祝う晩餐会のために、
宝くじで当たった1万フラン全額で、晩餐会のフルコースを自分で作りたいと申し出ることに。
前半の老姉妹のスローライフと、後半のバベットのフルコース。
そこから映し出されるのは、本当の「幸福」。
今の日本はモノにありふれてはいるものの、なんか心を満たしきれない。
モノにありふてすぎたせいで、豊かさを失っているのも事実。
「バベットの晩餐会」は、そんな本当の「幸福」を求めたい人にもってこいの作品やわ。
だが、「バベットの晩餐会」が口コミでヒットすると、
ホテル西洋銀座をはじめとする数多のハイクラスなホテルが、
バベットのフルコースを再現し提供する企画が乱発したのにはいただけないね。
バベットのフルコースには、
老姉妹の父を弔う晩餐会のためという目的があってこそ成立するんじゃねぇのかと。
今の映画界だって同じ。
IMAXだのTCXだのULTIRAだの大画面に走ったり、
ドルビーアトモスだのスカルプドサウンドだのハイレゾだの音響の凄さに走ったり、
あのアニメが当たれば、次々とアニメに走ったりと、
いったいお前ら何がしたいんだよとぼやきたくなるわ。
いっそ「バベットの晩餐会」レベルに回帰した方がいいと思うんだよね。
作風も派手と地味の中間にとどめ、公開規模もミニシアターレベルにしたほうがいいかもな。