その親子愛は、後の「パラサイト」にも通じる。
ゲリラ的に更新している、
「アマゾンプライムビデオの会員見放題で見つけた、ワタクシがチェックし損ねた映画な話」。
第27弾はポン・ジュノ監督の「母なる証明」(2009)。
現在公開中の「パラサイト 半地下の家族」が、
AMPAS主催の米アカデミー賞で英語圏外の作品で初の作品賞を獲得し、
その勢いに乗って、日本で公開された韓国映画の分野で興行収入新記録を樹立。
ここまでならいいが、最近モノクロ版とIMAX版も公開するとは・・・
配給元のビターズエンド、調子乗りすぎで「公式が病気」状態(笑)
その「パラサイト」の監督、ポン・ジュノが2009年に公開されたのが、「母なる証明」。
MBCで22年間放送されたドラマ「田園日記」で演じた役柄から”国民の母”と呼ばれるようになったキム・ヘジャと、
5年間の兵役を終え、これが復帰第1作となるウォンビンが親子役を演じ、
緻密に計算されたシナリオに驚愕しました。
早くに夫を亡くし、薬局を1人で切り盛りする母親は、
知的障害を持つ息子のトジュンを常に心配していて、
トジュンを連れまわすジンテとは絶交しなさいと常に言っている。
これは日常茶飯事ですが、この日常茶飯事がある出来事で壊れることになる。
ある日の夜、パブで寄ったトジュンは1人の少女をナンパしようとしたが逃げられてしまい帰宅。
その翌日、トジュンがナンパした少女が死体となって発見され、トジュンが殺人容疑で逮捕されてしまう。
事件の解決を急ごうとする警察と、大金だけもらって仕事をしない弁護士に愛想を尽かし母親は、
自らの手で事件を解決しようと奔走する。
この映画は、昔漫画家を目指していたポン・ジュノ監督が影響を受けた、古谷実や業田良家の漫画を色濃く受け継ぎ、
知的障害者を持つトジュンを犯人に仕立て、事件を無かったことにしようとする腹黒い連中のグロい面を醸し出し、
息子の無実を証明しようと奔走する母親の家族愛が強烈に残り、
「パラサイト」でも見せた、大事な局面には大雨が降る設定も計算しつくしている。
母親役のキム・ヘジャは、「パラサイト」でのソン・ガンホを彷彿させてくれたわ。
ウォンビンも知的障害を持つキャラクターという難役をこなし、真摯に役に向き合っている感があったわ。
かつては韓国映画界きってのスターでしたが、韓国国民の義務である5年間の兵役を経て、
イケメンのプライドをかなぐり捨てて挑んだ役柄が素晴らしいと思ったわ。
ポン・ジュノ監督が大々的にブレイクした背景には、1999年に施行された改正映画振興法の影響が強い。
国が映画作品の製作費を助成するなど、自国の映画を積極的にバックアップするようになり、
「シュリ」を筆頭に優れた作品が世界で高い評価を得るようになった。
ポン・ジュノ監督も、長編映画処女作の「吠える犬は噛まない」で片鱗を見せつけ、
次に発表された「殺人の追憶」と「グエルム」で韓国期待の若手監督として注目を集めただけでなく、
世界的な評価を得た。
これも改正映画振興法があってこその成功なんだよね。
日本も梅雨に突入し、家にこもる機会が多くなってきたので、
アマゾンプライムビデオで映画三昧も悪くないだろう。