豪華絢爛な作品世界なんだけど至ってシンプルで、観て損はない。
ゲリラ的に更新している、
「アマゾンプライムビデオの会員見放題で見つけた、ワタクシがチェックし損ねた映画な話」。
第26弾はルキノ・ヴィスコンティ監督の「家族の肖像」(1974)。
さて、東京千代田区神保町にあるミニシアターの岩波ホールが、
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で長期休館に追いやられ、
ようやく本日6月13日より、各配給会社のセレクション特集で営業を再開しました。
ホールの開館は1968年2月ですが、
洋画配給会社の東和(現:東宝東和)代表の川喜多かしこと、
岩波ホールの総支配人を務める高野悦子が音頭をとり、
フランス語で「映画の仲間」を意味する名作映画上映運動「エキプ・ド・シネマ」を立ち上げ、
1974年より同運動の拠点館として、岩波ホールは映画館として運用することに。
ここから、日本では上映される機会が少ない国・地域の作品、公開が難しい欧米の作品、
一般ロードショー館では興行的に難しい日本映画を取り上げ、
今のミニシアターでは当たり前となった「定員入替制」「会員制度」などを真っ先に導入し、
ミニシアターの模範として、神保町交差点の一角で細々と運営しましたが、
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、緊急事態宣言が発令され、
公開中だった「巡礼の約束」が中断され、ここから先に公開される予定の作品を来年に回したりと、
長年細々と営業していた岩波ホールにとっては、閉館直前に追い込まれ、踏まれたり蹴られたり。
ようやく6月13日より「岩波ホールセレクション」と銘打ち各配給会社の旧作セレクション上映で、
新型コロナウイルスの感染防止策を講じて営業再開となりました。
さて、岩波ホールにエールを送れるような作品をアマゾンプライムビデオで探してみたら、
ありましたよ!
ルキノ・ヴィスコンティ監督(1906-1976)の1974年作品「家族の肖像」。
この作品は、イタリア映画界の伝説の名匠、ルキノ・ヴィスコンティの代表作である家族劇で、
日本公開がヴィスコンティ監督の没後2年目である1978年に公開され、
岩波ホールでは10週のロングラン上映の後、東宝洋画系でムーブオーバーされ大ヒット。
死後2年目に訪れた一大ヴィスコンティブームに、何か心境複雑。
今回、アマゾンプライムビデオで配信されているのは、2017年に公開されたデジタル完全修復版。
豪華絢爛な作品世界が、デジタル修復で蘇り、さすがルキノ・ヴィスコンティって思ったわ。
ローマの豪邸に住んでいる老教授は、
家族団らんの絵画のコレクションに囲まれ、一人静かに暮らしているが、
伯爵夫人のビアンカが家族と娘の婚約者を引き連れ、教授の豪邸の部屋を強引に借りてしまう。
これから、教授の生活が徐々に乱されていくことに。
この「家族の肖像」は、シンプルなんだけど、かえって奥が深い作品。
これはヴィスコンティ監督の必要最低限のアイデアが詰まっている。
前作「ルートヴィヒ」(1972年)撮影中、ヴィスコンティ監督は脳の血栓症に倒れ、
ハードなリハビリを経て「ルートヴィヒ」は完成したんですが、
左半身の後遺症が生涯残り、車いす生活を送ることになったんだよね。
この背景から、ヴィスコンティ監督は構想を練っていた作品の企画を断念せざるを得なくなり、
同作の共同脚本を務めたエンリコ・メディオーリから、
「単純で簡潔な、一室内で終始する物語。」「登場人物は2人」というアイデアを持ちかけられ、
「白猫」以来、撮影所に作られた豪華絢爛な部屋のセットの中で撮影されました。
こういったバックボーンがあったから、多くの観客を虜にしたことがよくわかるわ。
物語の軸になったのは、老教授役のバート・ランカスターと、
ビアンカ夫人の愛人コンラッド役のヘルムート・バーガーですね。
特にヘルムート・バーガーが若々しくてもう眼福っスわ。
ビアンカ夫人役のシルヴァーナ・マンガーノは、フェンディの衣装を着たことで見事に絵になったわ。