この映画、「どうして見捨てたのですか」とツッコまれそう。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急企画。
「アマゾンプライムビデオの会員見放題で見つけた、ワタクシがチェックし損ねた映画な話」。
第9弾は高倉健主演の「南極物語」(1983)。
この作品は1956年、文部省(当時)の南極地域観測事業に於いて、
南極観測船・宗谷号で上陸した第1次越冬隊が度重なるトラブルに見舞われて中止を決断、
越冬隊と帯同してきた15頭の樺太犬を昭和基地に置き去りにし、
その1年後に飼育係の越冬隊員と生き残った2頭の樺太犬が、奇跡の対面を果たしたという実話を、
「栄光への5000キロ」「キタキツネ物語」「青春の門」と、
日本映画史に残る大作を送りだした蔵原惟繕監督(1927-2002)が、
北極ロケを中心に、少人数での南極ロケも敢行し、撮影期間3年余をかけた大作。
ぶっちゃけ、ワタクシは今日までこの映画を一度も見ていません!
ワタクシが所謂ガキの頃に公開されたんですが、その頃のワタクシはアニメ映画一辺倒やったわ。
「うる星やつら オンリー・ユー」「幻魔大戦」「クラッシャージョウ」「ゴルゴ13」・・・
その上、公開後にテレビで放送されても、視聴しなかったし、
高倉健の逝去(2014年11月)後に追悼特番で放送されても、視聴スルーしていたわ。
1956年、瀬田(高倉健)、越智(渡瀬恒彦)が参加している第1次越冬隊は、
15頭の樺太犬と共に南極観測船・宗谷号で南極大陸に赴いたが、
1年以上にわたる南極生活の中で様々なトラブルや経験に出くわした。
1958年2月、宗谷号で来た第2次越冬隊と引き継ぎ交代するんですが、
長期にわたる悪天候のため、上陸・越冬を断念し、撤退することに。
その撤退の過程で、第一次越冬隊と帯同してきた15頭の樺太犬を、
無人の昭和基地に置き去りにすることに。
厳しくしつけした分、樺太犬に対する愛着があった越智は救助を嘆願するも、
瀬田は、「殺してきます」と有毒薬物のビンを出し、殺処分しようとするが阻止され、
結果として、15頭の樺太犬を昭和基地に生きたまま置き去りにして、
第1次越冬隊は南アフリカのケープタウン経由で日本に帰国。
帰国後、置き去りにした樺太犬の事を巡り、
瀬田は世間の非難とバッシングに耐え、提供者への謝罪の旅に赴き、
越智は越冬隊での事を忘れたいが故に以前の仕事に復帰するも、犬たちのことで苦悩する。
1959年、南極観測事業が再開され、瀬田と越智は自ら志願し第3次越冬隊に参加。
奇跡的に生き残ったタロとジロに再会することに。
この映画を観て、80年代の日本映画界は、
角川春樹が打ち出した、出版・音楽・宣伝の三位一体戦略による”角川映画”と、
テレビ局ならではの大々的な電波ジャック戦略で名作を送りだした”フジテレビ映画”が、
けん引してきたといっても過言ではないでしょうね。
(ま、元々フジテレビはニッポン放送、文化放送、東宝、松竹、大映が出資して設立されたからね・・・)
この「南極物語」も、フジテレビと学研が製作費を折半し、日本ヘラルド映画と東宝が共同配給。
文部省(当時)から少年、青年、成人、家族向け特選作品のお墨付きを貰い、
映画館のない地域でも、PTAや教育委員会主催でのホール上映が頻繁に行われ、
結果として59億円の配給収入を稼ぎだした。
にもかかわらず、ワタクシが今日まで見ておらず、
(キャッチコピーの一部を引用し)「どうして見捨てたのですか」とツッコまれそうやわ。
メインキャストのほとんどが鬼籍に入られたことを思うと、見てて新鮮な感じがしたわ。
樺太犬置き去りの1年間のパートで解説的に挿入された小池朝雄のナレーションと、
「ブレードランナー」「炎のランナー」のヴァンゲリスの劇伴も、いい意味で補完してくれた。
だが、基本的にこの映画は、樺太犬が主役。
一応、ドッグトレーナーと獣医が帯同し、犬たちの配慮を配っていたが、
動物愛護の観点を考えたら、今じゃ動物メインの創作した映画の製作は難しい。
”10年代”の「猿の惑星」3部作に登場した猿たちや、
ハリソン・フォードの円熟のアクションも光った「野生の呼び声」に登場した相棒犬も、
人間の演者が特殊な全身タイツを着て演技するモーションキャプチャー製なんだよね。
製作された年代を考えたら、ドラマとしてよく作られたわとつくづく思ったわ。
後に2006年に、ウォルト・ディズニーピクチャーズが、
ポール・ウォーカー(「ワイルドスピード」シリーズ)を主演に「南極物語」をリメイクしたんですが、
これは明らかに原作レイプ、高倉健に失礼だろと。
この「南極物語」、アマゾンプライムビデオの会員見放題では5月7日まで配信。