ファーストフード経営者の苦労が伝わる「スーパーサイズ・ミー2」
はじめに。
2004年冬、1本のドキュメンタリー映画が、
シネマライズ渋谷を旗艦館としたミニシアター系列で公開された。
それは「スーパーサイズ・ミー」。
「私の肥満はマクドナルドのせいだ!」として、マクドに手を出した2人の少女がマクドナルドを提訴したものの、
”門前払い”を食らう形で敗訴したことを発端に、
映画監督・プロデューサーのモーガン・スパーロックが、
自らを実験台に、「1ヶ月(30日)間、1日3食マクド生活」を敢行。
途中ドクターストップがかかったものの、ミッション完遂。
結果、体重は11㎏増加するわ、体脂肪率は18%に上がるわ、
躁うつ病&脂肪肝を発症するわ、性欲は減退するわで、
アメリカのファーストフード業界が、利益のために栄養を犠牲にしていることを晒しあげた。
ドキュメンタリー映画としては、最高のエンターテイメントやったわ。
ここから本題。
新型コロナウイルス蔓延に伴う緊急企画。
「アマゾンプライムビデオの会員見放題で見つけた、ワタクシがチェックし損ねた映画な話」。
第5弾は「スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン!」(2017)。
「スーパーサイズ・ミー」のモーガン・スパーロックが13年ぶりに放った続編。
(その間、「ビン・ラディンを探せ!」や「ヤバい経済学」などの刺激的な作品を発表した。)
タイトルから見て、今度はフライドチキンばかり食べるかと思いきや、
今回はチキンサンドを出すファーストフード店経営に乗り出すというもの。
ですが、中身から見て、今回もまた、
アメリカのファーストフード社会の闇の部分を晒し上げてくれたわ。
何でチェックし損ねたかと言うと、
アマゾンプライムビデオのHPで作品を探していくうちに、偶然にも見つけ、
しかも、この作品が、続編であるにもかかわらず、日本未公開だったことが決め手になった。
「スーパーサイズ・ミー」公開以降、マクドナルドをはじめとするアメリカのファーストフード大手各社は、
ヘルシーなメニューに力を入れ始めていますが、
ただ1つ、放置されている問題が見つかった。
それはチキンサンド。
アメリカのファーストフードではどの店もチキンサンドをメニューに入れているが、
どの店も、バンズ(パン)に入っているチキンが、フライドチキンとヘルシーとは真逆。
ヘルシーで「世界一食されている動物」である鶏なのに、
油まみれのフライドチキンをバンズ(パン)に挟んで出すなんてどうかしてる。
その疑問に真っ向から立ち向かったのが、
13年前、1ヶ月間1日3食マクド生活を経験したモーガン・スパーロック。
彼はフライドチキンより、鉄板で焼いたグリルチキンの方がヘルシーであると力説しているんですが、
フライにされたチキンの方を好む人が圧倒的に多く、グリルチキンは統計上、圧倒的に不人気。
だったら、自分がグリルチキンのチキンサンドをメインとした、
ファーストフード店を出そうじゃないかと一念発起するんですが、そこは山あり谷ありの難作業。
チキンを仕入れるにしても、5つの鶏肉の大手卸業者全部、
大手ファーストフード店の独占契約が結ばれているため、新規参入は難しい。
そこでモーガンは、自分たちでヒナから育てる産地直送スタイルを採用することにしたんですが、
大量に仕入れたヒヨコが完全に物のような雑な扱いを受けている現状を知ることに。
しかも、資金調達のために銀行とかにローンを申し込んでも困難が。
ようやく開業の地をオハイオ州コロンバスに決め、店舗はオープン。
店舗にはモーガン・スパーロックが開店に漕ぎ着けるまでの皮肉なメッセージが壁に描かれ、
レジまでの行列の柵も、養鶏場の現状を表したものに。
出されたメニューの評判は上々ですが、
「そしていずれお互い失業する時が来るかも」といった意味深なセリフで締められた。
ワタクシ自身、この映画を観てね、
今回も自ら体を張ってくれたモーガン・スパーロックに拍手を送りたいわ。
栄養より利益をとる大手ファーストフード店に喧嘩を吹っ掛け、
理想のファーストフード店を開業したものの、そこまでの苦労が伝わったわ。
何で今日まで気づかなかったかと言うと、
当初は2017年のトロント国際映画祭でのワールドプレミアのあと、
YouTubeの有料メンバーサービス「YouTube Red(現:YouTubeプレミアム)」で公開のはずが、
そのころに起こったアメリカ映画界のセクハラ問題糾弾キャンペーン「#MeToo」ムーブメントで、
モーガン・スパーロックが過去にセクハラを起こしたことが発覚し、お蔵入りに。
(アメリカでは2019年9月に公開され、ようやく日の目を見ることに。)
日本でもアマゾンプライムビデオで会員見放題になったことで、ようやく見れたわとな。