今の日本映画界が弱腰だったとこを突きつけた「新聞記者」。 | ガンバボーイ2号のGuerrilla Radio

今の日本映画界が弱腰だったとこを突きつけた「新聞記者」。

新型コロナウイルスの影響で規模を縮小して開催された今年の日本アカデミー賞に於いて、

最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞を受賞したことを受け、

急遽アンコール公開された「新聞記者」をなんばパークスシネマまで(今更ながら)鑑賞。

この映画、昨年6月末に、150館の中規模で公開されたんですが、

何でこんなこまい規模で公開され、独立系の配給会社が作った映画が、

まさか賞レースに割って入ってきたなんて予想外やったわ。

 

この内容は、韓国人女優のシム・ウンギョン演じるアメリカ留学帰りの日本人と韓国人のハーフである新聞記者が、
松坂桃李演じる内閣情報調査室に勤めるエリート官僚との邂逅で、

国家機密レベルのタレコミから国家の闇を炙りだすというもので、

「ペンタゴン・ペーパーズ」や「スポットライト 世紀のスクープ」といったマスメディアを題材にしたフィクションが、

日本でも作られるようになったことに称賛を与えたいね。

「国の名誉」か「己の正義」か、緊迫感があったわ。

 

何で日本映画界は「新聞記者」みたいなのが作られなかったのか?

昨今の日本映画界は2つのトレンドに占拠されている。

一つはジブリ作品や新海誠監督作に代表されるアニメ映画が勢いづいていること。

一つは在京テレビ局が中心となって制作された実写映画が主流になっていること。

いずれも大企業のバックアップがついているが故に、

実質、自分の撮りたい映画が撮れないどころか、撮ったら干される風潮が強くなっている。

特に「新聞記者」のケースだと、政界の闇を炙りだす内容はタブーで、

大手配給会社や大手テレビ局の前で企画プレゼンしたら、門前払いを食らわされるのはオチ。

(事実、「新聞記者」は朝日新聞社、KADOKAWAが出資している。)

配給元のスターサンズの河村光庸プロデューサーが根気強く押し通し、

イオンシネマを運営するイオンエンターテイメントと組んで中規模公開。

この勇気が、今は亡きシネカノンが手掛け、

日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ映画賞を総なめにした、

「フラガール」以来の衝撃を生んだのでは。

 

かつて日本には、日本アートシアターギルド(atg)が存在していた。

この中小規模の独立系配給会社の先駆けになった日本アートシアターギルドは、

大島渚、吉田喜重、岡本喜八といった大手に見切りをつけ独立プロを立ち上げた監督や、

増村保造、熊井啓、市川崑、森崎東といった基本大手をホームにしている監督、
ドキュメンタリー出身の黒木和雄、東陽一、テレビ出身の実相寺昭雄、田原総一朗(!)、

演劇出身の寺山修司、唐十郎、インディペンデント出身の大林宣彦、井筒和幸、森田芳光らに、

自分の撮りたい映画を作る機会を与え、日本映画界の発展に貢献した作品を多く送りだした。

特に1984年に公開された伊丹十三の初監督映画「お葬式」は、

縁起でもない題材と暗いタイトルとは裏腹の溢れんばかりの笑いとのギャップで大ヒットを記録。

日本アカデミー賞最優秀作品賞やキネマ旬報ベストワンをはじめ日本の映画賞を総なめにし、

独立系映画配給会社の底力を見せつけた。

 

今の日本映画界はアニメ作品や、

在京テレビ局&大手出版社&大手広告代理店主導の娯楽映画が安全パイで、

”ハイリスク&ノーリターン”の作品を作る勇気がない。

おまけに、今年1月より公開された韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が、

日本で公開された韓国映画の興行収入記録を更新するなど席巻したことからして、

これが今の日本映画界が弱腰だという理由だ。

 

スターサンズをはじめとする、中堅の配給会社は、

思い切って倒産覚悟、破産覚悟で”ハイリスク&ノーリターン”の作品を作るべきやと思うわ。

安全パイ路線を走る大手配給会社に喧嘩を売るような作品をな!

 


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