キューブリックの”原作レイプ”の”落とし前”
12月1日の映画の日。
ガンバ大阪U-23のJ3リーグ今季ホーム最終戦に赴く前に、
大阪モノレール沿線のシネコンまで「ドクター・スリープ」を鑑賞。
ホラー作家、スティーブン・キングが1977年に発表した小説を基にした、
伝説の鬼才スタンリー・キューブリック(1928-1999)の1980年公開作「シャイニング」。
スタデイカムを多用したカメラワークと、ジャック・ニコルソンの血気迫る演技で、
興行的に成功し”モダンホラー”の傑作と呼ばれたんですが、
能力に関する描写がなかったことや、結末の描き方が原作小説と違っていたなど、
”原作レイプ”をやらかし、両者の関係がギクシャクした。
あれから40年。
シリーズものを除き、自身の代表作の続編は書かない主義を貫いてきたスティーブン・キングが、
「シャイニング」の40年後を描く、初めて挑んだ”例外”。
そのスティーブン・キングの”例外”が、キューブリックの没後20年に、
「ジェラルドのゲーム」でスティーブン・キングの作品の実写映画化を手掛けたマイク・フラナガンが監督、
ユアン・マクレガーを主演に迎え映画化。
映画「シャイニング」で生じたしこりを、この映画で回収し、
2時間半という長さが苦にならなかったわ。
まず「シャイニング」を簡単におさらい。
アルコール依存症の小説家、ジャック・トランスは、
コロラド州のロッキー山上にあるオーバールックホテルに、
妻のウェンディ、”シャイニング”の能力を持つ幼い息子のダニーを連れて、
執筆することも兼ねて、雪深い冬期の間、管理人の職に就くことに。
オーバールックホテルの支配人アルマンは、以前の管理人が孤独に心を蝕まれた挙句、
家族を斧で惨殺し、自ら命を絶った曰く付きの物件だと警告するが、
ジャックは気に留めず、住み込むことに。
ホテルが持つ”怪異”で徐々に精神を病んだジャックは、
謎の存在に命じられるままウェンディとダニーを手にかけようとするが、
ダニーの起点で一発逆転してしまう。
で、「ドクター・スリープ」はオーバールックホテルの惨劇の40年後。
所謂”ええ歳こいた大人”になったダニーは、
惨劇のトラウマを未だに引きずり、アルコール中毒に苦しんでいた。
ニューハンプシャー州のとある町に来たダニーは、
アパートで数学者が住んでいた部屋を借りて住処にし、
病院で働き就きながら、アルコール中毒の治癒に勤しむ日常を送っていた。
同じ頃、ローズ・ザ・ハット率いるカルト集団が、全米各地で児童を拉致して殺害し、
生気を吸い取っていくという異常行動を起こしていた。
このローズ一派の異常な行動に、
ダニーと同じ”シャイニング”の能力を持った少女、アブラ・ストーンが感知し、
ダニーのアパートの部屋の壁で「MURDER」と訴える。
ダニーは穏やかじゃない状況であると察知し、アブラと共に行動を共にし、
そして、忌まわしきオーバールックホテルでの最終決戦に。
この映画、事前に「シャイニング」を、DVDで見たり、
グーグルプレイなどでの動画配信サイトでレンタルして見ることを勧める。
後半のオーバールックホテルへのカメラワークが、「シャイニング」の冒頭の完コピ。
オーバールックホテルのセットも、キューブリック財団の協力で、資料に基づき完全再現。
あのセットやこのセットだけでなく、
「ドクター・スリープ」の冒頭の幼いダニーが三輪車をこぐシーンや、あのキャラの登場も、
「シャイニング」を見た方なら、あー!と唸るはず。
映画「シャイニング」での”原作レイプ”によるねじれを、
脚本&編集も兼務したマイク・フラナガン監督が、
原作の時間軸に基づきつつ、「シャイニング」の続編として機能するよう、設計しているなんて流石!
小説での「シャイニング」では、ウェンディとダニー、料理長のハロランが脱出したのち、
正気に戻ったジャックがボイラー室に立てこもり、限界を超えたボイラーが爆発し、
ホテルは瓦礫と化したんですが、
映画「シャイニング」の結末の描き方は、あえてスタンリー・キューブリック監督が、
続編は書かない主義を貫き通しているスティーブン・キングに、
「俺の映画が納得いかなかったら、俺の没後、続編を書いて仕返ししたまえ。」
というメッセージが込められていたかもしれないな。
その「ドクター・スリープ」は、公開から約40年の時を超えた映画「シャイニング」の立派な”落とし前”。
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