”パルコ映画”の集大成的作品!
日本代表の試合を夜に控え、昼間は心斎橋まで「鈍獣」を見に行く。
宮藤官九郎が生瀬勝久、古田新太、池田成志で構成される企画ユニット、
「ねずみの三銃士」の第1回公演のために書き下ろし、岸田戯曲賞を受賞した戯曲が原作。
初めクドカンは乗る気ではなかったが、CMディレクターであり、
クドカンが所属するグループ魂のPVを手掛けている細野ひで晃の熱意に負け、
映画用に大胆にアレンジ。
某県の過疎化が進むのどかな村。
処女作「鈍獣」を完結させた後、失踪した凸川(でこかわ)を探すために訪れた担当編集の静。
部屋に残された名刺に訪れたホストクラブで、以下の人たちの話を聞き出す。
巡査・岡本。
横柄な経営者・江田。
その愛人・順子。
店員の女の子・ノラ。
この人たちから聞き出した会話から得たことは、
凸川、岡本、江田は同級生で、25年前の事件がきっかけで凸川は姿を消した。
あれから25年後、凸川は村に現れ、
週刊誌で連載されている彼の小説の内容が、25年前の自分たちだと気づいた岡本と江田は
これ以上書かれては困ると、凸川の殺害計画を思いつくが・・・
まさにクドカン流ブラックコメディ。
展開が強烈すぎました。
殺鼠剤入り水割りを何杯飲んでも平気。トリカブトの根っこを食べても翌日ケロリと回復。
更には生き埋めになっても、地中から掘り進める凸川を演じた浅野忠信は怪優。
彼の殺害を企てる岡本と江田を演じたユースケ・サンタマリアと北村一輝の狂気ぶりに笑えた。
南野陽子も真木よう子(槙ようこではない)も、クドカンの手にかかれば怪優。
(そっかぁ、薬師丸ひろ子も、キョンキョンも、宮崎あおいも、クドカンの手で怪優になったからね。)
中でも存在感あったのが、黒人演歌歌手のジェロと、”スイーツ親方”こと芝田山親方。
セリフはなかったものの、ガス抜きの役割を持っていたと思う。
この作品は、「ねずみの三銃士」公演を手掛けたパルコが出資していますが、
いかにも”パルコ・ブランド”の映画に仕上がっていたんだよね。
開館10周年を迎えたシネクイントの記念作にして、”パルコ映画”の集大成。
そもそも旧セゾングループ系だったパルコは、ファッションデパートメントだけでなく、
舞台・音楽・映画でのカルチャー分野でもパルコ色を展開。
パルコの映画興行は、舞台公演の空き日に、パルコ劇場やスペースパート3で行われていたが、
スペースパート3が、常設の単館ロードショー館・シネクイントにリニューアルしてから、
ここからいくつかのヒット作を生み出すんだよね。
ヴィンセント・ギャロが日本のファンからの熱い支持に感動した「バッファロー66」、
中島哲也の映画監督としての地位を築いた「下妻物語」「嫌われ松子の一生」、
賞レース総なめの「キサラギ」など、数え上げたらきりがない。
こちらも中島哲也監督の「パコと魔法の絵本」では、
シネクイントではなく、東宝系の有楽座チェーンを選択し、大ヒットのうちに見事成功した勇気に拍手。
※これはミニシアター系に配給しているフランス映画社が「ピアノ・レッスン」公開の際、
日劇プラザ(現:TOHOシネマズ日劇3)チェーンを選択し、反響を巻き起こして以来!
パルコにしてみれば、映画もファッションの一部だと思う。
この姿勢は、スペイン坂のてっぺんにあるシネマライズも同じだもん。