90分じゃ足りない!だが、決してすべらない!
金曜日、ミナミの方まで「大いなる陰謀」見に行ってきたぞ。
宗教絡みの奇行が原因で、パラマウント映画をクビ同然で追い出されたトム・クルーズが
メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)傘下のユナイテッド・アーティスツ(UA)に移籍して、
(UA再建のため、製作パートナーであるポーラ・ワグナーとともに経営にも参画)
移籍第1弾として作られたのがこの作品。
しかも、脇に固めている人間がすごい。
映画監督として「普通の人々」で米アカデミー賞監督賞受賞。
本作の監督だけでなく、大学教授役もこなしているロバート・レッドフォード。
「クレイマー、クレイマー」「ソフィーの選択」で米アカデミー賞女優賞・主演&助演2冠のメリル・ストリープ。
そして、トム・クルーズと三者三様のドラマを展開。
ワシントン。
タカ派の上院議員・アーヴィングとTV局のベテラン女記者・ロスとのインタビューのやり取りの中で、
アーヴィングはロスに、アフガニスタンでの対テロ戦争の作戦をリークした。
ほぼ同じ頃、ロサンゼルスの大学。
マレー教授の教え子のトッドは、政治に対し消極的な姿勢をとっていることで教授に呼び出され、
「世界を良くする為」に陸軍に志願した2人の教え子の話をした。
ほぼ同じ頃、アフガニスタン。
アーヴィング議員主導で行われる作戦に、マレー教授の教え子であるアーネストとアリアンが参加するが、
ヘリで移動中に敵襲に遭遇し、雪原に投げ出され、テロと対峙する。
この作品の本質はトム・クルーズ演じるタカ派の政治家が、強いアメリカを復権させるべく
対テロ戦争との新作戦を成功に導くこと。
たった1時間の時間軸で、1つの作戦を巡る3つのドラマが同時に進行する形は、
ロバート・レッドフォードなりの社会批判が大きく織り込まれ、
この電撃作戦を見て「アメリカにとって、戦争は大義か?」と疑問を持つようになる。
戦争をめぐるドラマとしては及第点なんですが、ただ難点が・・・。
①この手の話を92分でやるには物足りなさい。矛盾感が否めない。
②情報量が多い分、ついて行かないと後で「あれ?」になる。
「大いなる陰謀」は秀作ではなく、駄作ではない。
ロバート・レッドフォードから投げかけられた問題提起映画であるのだ。
事前に、レッドフォードが権威に立ち向かうジャーナリストを演じた「大統領の陰謀」のDVDを見て、
「大いなる陰謀」を見れば、メディアと個人が今、何をすべきなのか自ずと答えは出てくるのだ。
決してすべらないと思う。
この成績が、同じアフガンを題材にした、5月に公開される
「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」の成否につながることを。
アフガニスタン・パートはILMによる3DCGアニメーションと、
スカイウォーカー・サウンズによる音響効果設計が秀逸。
物語を構築するための補完と捉えれば。
余談だが、ハリウッドで誰よりもいち早く、アフガンの悲劇に着目したのはシルベスター・スタローン。
「ランボー3 怒りのアフガン」で、良き理解者を救助するために、
ジョン・ランボーが単身アフガンに乗り込み、ソ連軍と戦いを繰り広げるという話なんですが、
ソ連の侵略に立ち向かっていたゲリラの戦いを、映画で表現し世界に紹介したんですが、
公開直前にソ連軍がアフガンを撤退し、スタローンの社会的メッセージは空振りに。
残念!