柳楽優弥の新たな引き出しを出した1本。
「永遠の仔」と「家族狩り」。
この2つの小説の共通項は人間関係の”痛み”をエグく描いた作品である。
前者は児童虐待を背景に、日本の親子関係の暗部を描き、
後者は発表当時「家族にかえろう」に対するアンチテーゼを提示。
この2作品を書いた天童荒太は天才だと思う。
短編集「ありふれた愛」より6年ぶり(’06年2月刊行)に発表された「包帯クラブ」も、
人間関係の”痛み”を描いているが、これまでのよりいい方向に向かっている。
閑話休題。
で、続いて見に行ったのが「包帯クラブ」。
この作品の映像化に挑んだのは、
「誰も知らない」「星になった少年」「シュガー&スパイス」で演技に磨きをかけた柳楽優弥、
「北の零年」「N’sあおい」で躍進している石原さとみ、
今年は「大帝の剣」「自虐の詩」に、テレビドラマ「スシ王子!」まで手がけた堤幸彦。
純粋素朴な小説が、この3人のタッグによる化学反応でより面白く楽しめた。
日常に嫌気を感じている女子高生・ワラが、奇行好きの青年・ディノに出会ったことにより、
依頼の場所に包帯を巻いて、心に傷を負った人々を癒す活動に乗り出した作品ですが、
前半はディノを演じた柳楽優弥の破天荒ぶりを見て、先の3作では見せなかった引き出しを、
堤監督が見事に引き出し、新たな一面を見せてくれました。
後半では、なぜディノが破天荒な奇行を取るのか、その理由が、この映画の本質を見出してくれました。
群馬県高崎市という地方の中核都市を舞台にしたことが正解。
(大都会やド田舎だと、原作の味が出せなかった!)
高崎市役所の屋上ヘリポートに無数の結び付けられた包帯が風になびくシーンは圧巻でした。
で、作品に触発されて、街中に包帯を巻くのは迷惑ですので、くれぐれもマネしないように!