日本の映画関係者の皆さんは、絶対に、絶対に見てください。
このあと、3時間のインターバルを置いて、敷島シネポップまで「監督・ばんざい!」を見てきました。
ワタクシ、北野武監督の映画は「その男、凶暴につき」から全作品映画館で鑑賞し、
作品を発表するたびに独特の世界観を構築していると感じました。
他人からの批判が多いにもかかわらずである。
今回の作品も、還暦を迎えても、更なる進化を続ける北野武を垣間見せました。
松本人志と比較されがちなんだけど、コッチは積み重ねた年数が違うし、アプローチも違う。
松本人志が、コント作品で培われた経験を映画に持ってきたことに対し、
北野武は、コメディアンとしての自分のスタイルを封印し、独自の手法とテンポで映画作品を構築。
このやり方を支持する”キタニスト”が世界中に多いのがうなづける。
今回の作品は、北野武自身の壮大なる”おバカ”な映画論を、
「みんな~やってるか!」以来にお笑いのエッセンスを織り込んで製作。
あるいは、「ロスト・イン・ラ・マンチャ」的展開のドキュメンタリー・タッチの映画。
こちらも日本ではウケの悪いテリー・ギリアム監督がジョニー・デップ主演で「ドン・キホーテ」を
製作するんだけど、予想外のアクシデントに次々と遭遇し、結果、製作を中止せざるを得なかった
”未完の大作”を追った異色のドキュメント。
得意とするギャング映画を撮ることを封印した映画監督キタノタケシ(決して北野武ではない)が、
さまざまなジャンルに挑戦しようとするが、次々に頓挫してしまい、最終的に・・・という映画ですが、
別の解釈で見れば、「TAKESHIS’」が大コケしただけでなく、観客の期待を裏切ってしまった北野武が、
相当なあせりの中、次回作の構想を練って撮影に入ったものの、すぐに頓挫するという悪循環を繰り替した果てに、
製作を中断した映画郡の一部分を集めた異色の”なんちゃって”記録映画。
小津安二郎風ホームドラマ、泣ける恋愛映画、昭和30年代、ホラー、時代劇に挑んだけど、
ヤマを欠いた展開に次々と頓挫し、たどりついたのがVFX満載のSFスペクタクル・・・のはずが、
奇妙な詐欺師の母娘の物語を撮ることになったんだけど、
奇想天外でハチャメチャな展開に、映画の神様もあきれてしまい、ついに鉄槌を下すことに。
どうですか、ビートたけしと北野武。お笑いと映画を極めた男の壮大な迷走と爆発の記録。
今、日本映画が活況づいているけど、それが北野武にとっては疑問に思うし、面白くない。
畳み掛ける衝撃(笑撃?)のエピソードと極端にデフォルメした設定で、
今の日本映画界に対するアンチテーゼがこの映画を誕生させたのは言うまでもない。
出演俳優陣も、北野武作品の常連や、(たけし軍団含む)オフィス北野所属タレントに加え、
”世界のキタノ”の映画に出られることが名誉という豪華な名優陣と、
最高のアンサンブルが映画に彩りを与えている。
特に役者生命危機スレスレの怪演を見せた江守徹と、これまでのイメージからは想像を絶した鈴木杏の暴走が
印象に深かった!
池辺晋一郎の音楽も、絶妙なミスマッチによる快感が味わえました。
この作品を見て思いましたよ!
日本の映画関係者の皆さんは、絶対に、絶対に見てください。
今の日本映画界の活況に、疑問符を打つことは確実ですから。
最後のページの井手らっきょの全裸はどうかとおもう。
本編上映前には、カンヌ国際映画祭60周年記念のショートフィルム「素晴らしき休日」が特別併映され、
鑑賞前のいいガス抜きになったのは言うまでもない。