今年のりぼんを振り返って(前編/人材活用)
残すところあと1ヵ月半となった。
今回は12月号の事を書く前に、今期の反省、問題点と来期の展望についてまず語ろう。
【まずは活用と育成。補強はその次。】
今期のりぼんは連載に若手を積極的に起用したが、自信の無さ、精神的弱さも露呈したのも事実。
巻頭カラーでバーンとスタートしたのに、次第にカラー落ちした作品が将棋倒しみたいな形で重複した。
巻き返せるはずが、雑誌に元気と活気が無くなった。
悪い状態の時こそ「次は私が」と出てくるはずが、後に続く人間がいなかったこと。
どんな形で戦略を組んでも、結局は種村有菜、春田ななに頼らざるを得ない。
「アニマル横町」のアニメで放送されたりぼんのCMも「アニ横」を前面に押し出していない。
ほとんどが「紳クロ」「ラブベリ」ばかりで「アニ横」は餌か?
せっかくデビューを勝ち取った人間の育成を怠ったワケじゃないと思うけど、
一部の若手は上の大御所がいることで、なかなか、その上にいけなかった。
下にいる人間も、編集部の”えこひいき癖”からか、「どうせいくら頑張っても、あそこへは行けないだろう」という
失望感があり、ハングリー精神が不足していた。
編集部は特定の作家だけ見ていたため、そういった悪環境を生んでしまったかもしれないだろうか。
売れっ子作家重視や若手の積極的起用が、経験豊富なベテランや増刊でもがいている中堅を
”放置プレイ”状態にした。これはれっきとした問題です。
りぼん低迷の原因が「人材難」とささやかれているが、本当の理由は豊富な人材を生かしきれていない。
もっと使える人材が結構あるにもかかわらず、そういったところを編集部と読者は見ていない。
そういった人間が異常なペースで他誌に流出しているのが証拠。
バランス欠く構成も失速に拍車をかけている。
りぼんに限らず、どの漫画雑誌も単行本のセールス重視にベクトルを変えたため、
人気先行型と経験豊富型の人間に偏重してきたことが、若手の成長と雑誌の発展を大きく妨げている。
事実、「花より男子」(神尾葉子)の連載が終わったあとのマーガレットは落ち込みが急激だった!
連載を始めた「マリア様がみてる」のコミカライズや「少年進化論」もザ・マーガレットに行ってしまい、
マーガレットに移籍した藤井みほな、あゆかわ華、森本里奈の連載も長続きしなかった。
隠れた才能があるにもかかわらず、この状況はどうやねん!って疑問に思う。
プロの漫画家だってれっきとした”給与所得者”です。印税も入ってきます。
だって生活がかかっているから。これ以上ホームレス増やしてどうするんですか?
新大久保・職安通りのホームレスを見てると、完全失業率の改善傾向がウソに思えるわ。
まずは若手の育成と豊富な人材の活用ありき。
保有戦力はいい素材が多くそろっており、ストーリー&ギャグ重視の”5年選手”を中心に揃え、
周囲をベテラン&中堅中心にバックアップする。駆け出しの若手は自分の長所をピンポイントに育成し、
少しずつ自信を付けてくれれば、わりと早い時期にはちゃおの発行部数を大きく超えることになるだろう。
欠けた所は、パズルの欠けた部分に合うピースで間に合わせるように、ピンポイントで補強する。
外部の大物であったり、アニメ、映画、小説の原作付きであったり、
集英社が保有するキャラクター資産をフル活用したりする。
そういった意味で、雑誌全体の力を大きく押し上げてもらえればいいと思う。
「外部の投入はイヤ」という読者もいるだろうが、君たちはりぼんが保有している戦力を全員把握してますか?
種村有菜だけ知らなかったら大問題です。
読者から「絵がイヤ」「話がイヤ」と侮蔑されている漫画家は、読者に完全にナメめられている。
読者にチヤホヤされている人気先行の漫画家は、”敵”として嫌悪する同業者や読者を生んでいる。
春田ななが「サボテンの秘密」のコミックスの帯での「印税っていくら?(結局金かよ)」に代表される
非常識な発言から、漫画も”クソガキ”なら、精神も”クソガキ”。まだ成長しきってないな。
これだからチヤホヤされるお前を憎悪する人間に嫌われるんだよ!
漫画家全員は自覚してほしい。
なぜ「DEATH NOTE」が異様なまで盛り上がっているのか?
なぜ「NANA」が共感を多く得るようになったのか?
なぜ「ハチミツとクローバー」や「マリア様がみてる」がブレイクしたのか?
そして
なぜ『ちゃお』に負けたのか?
なぜ読者に嫌われているのか?
全員”負け犬”根性が骨の髄まで染み付いたりぼんの漫画家は
これらの”勝ち組”から何らかの教訓を得ることも重要。
お宅ら、ナメられているのわかってます?
【そんな中でも光明を見出した人間】
発行部数の伸びない中でも来年に向けて光明を見出した点が多く見られた。
昨年はアニメ化ありきの作品ばっかりで、創刊50周年の記念すべき年をドロで汚された。
今年は再生に向けて、いい作品といい逸材が続々と出てきた。
それを象徴するのが「ロッキン☆ヘブン」(酒井まゆ)。
「ピーターパン症候群」までの連載作は起用意図不明、利益優先の二重苦で
スピード出世が仇となったが、オリジ’05年10月号掲載の読切「王様と王子様と私。」で
これまでの自分の辿った道を振り返り、初心に立ち返った作品が受け入れられ、
「ロッキン☆ヘブン」で息を吹き返した格好となった。
これで「『ピーターパン症候群』までの酒井まゆは忘れてください。」の真意が分かるだろ。
昨年末に刊行された冬休みチャレンジ!大増刊号と、本年春に刊行された春のチャレンジ!大増刊号は
読者が決める本誌連載権争奪りぼんグランプリを開催し、それなりの成果を得た。
(冬休みはストーリー漫画の部、春はショート&4コマの部)
結果、大岡さおりと真城ひなが連載権を獲得し、大岡は「にじいろ恋旅館 」を3回にわたって連載。
個人的にはそれなりに面白かったし、3回じゃ足りないので続編を最も望みたいと感じさせた。
真城は「ややプリ」を10月号より連載開始。手ごたえを相当つかんだ様子。
そのあと、ストーリー漫画の部で加々見絵里、中島椿、桃山あんず、朝吹まり(’07年1月号~)が
本誌で連載を始め、彩原そのは本誌12月号で読みきりを掲載。
この企画、1位を逃したら連載は無いと思われそうだが、これからのりぼんを作る上で、
どんな戦力が必要なのかを把握できた。
一方のショート&4コマ部門は真城と綾瀬ルナがずば抜けていたが、他の人間はこれといった印象が薄かった。
これが新人漫画賞のショート&ギャグ部門の不調にも言えると思う。
りぼんグランプリにはエントリーしていなかったが、「パワパフガールズZ」のコミカライズで大成した込由野しほと、
1年で本誌巻頭カラーを勝ち得、”50年に1度の俊英”が伊達でないことを証明した黒崎みのりが
ワタクシの感性にエレクトした。
光明を見出した点では新人にも注目してもらいたい。
漫画スクールで史上初の最高賞であるりぼん賞を獲得し、特権としてデビュー作本誌掲載を勝ち得た雪丸もえ。
りぼんガールのイラスト担当や大増刊号での読みきりでフル回転し、
”セットアッパー作家”の異名を持つようになった橘ちひろ。
特にこの2人には注目すべし。
これらの作品に光明を見出したことは、底なしの状況に対し、底は見えたこと。
りぼんが集英社の主力商品のひとつとして「週刊少年ジャンプ」や「週刊マーガレット」(現「マーガレット」)より
歴史があること。
日本の出版史上「なかよし」「週刊漫画タイムス」と並び50年以上刊行し続けている漫画誌であるということ。
異論が来るのは分かっているが、リスクを承知で真っ向から立ち向かう。
集英社のお偉いさんも、「ここ近年の『週刊少年ジャンプ』が息を吹き返したのに、他の雑誌はどうしたんだ!」
とそういった疑問を持っているはず。
待っているだけでは追い風は吹かない。
雑誌に携わる人間もまず行動を起こすべき。毎号欠かさず愛読している読者にいい作品を提供する。
それがりぼんの使命であると信じています。
雑誌が落ち込んでいる時こそ、暖かい目で見守ってゆくのが真のりぼんっ子であることを。
続く