明治の元勲にして本田親徳翁の高弟であった副島種臣翁の「蒼海窓閑話」(明治31年12月)を御紹介したいと思う。解説については自説であり、本田霊学としての公式見解ではない。
蒼海窓閑話卷之上
『命字ヲ體ニ付テ言時ハ身別(ミコト)ナレ共、魂ニ付テ言時ハ神別(ミコト)ヲ當レリトス。』(『副島種臣全集3』)
古事記でも伊邪那岐・伊邪那美について、後ろに神が付いたり、命が付いたりしている。
それは働きの場(次元・時期)が異なるためだが、本田翁は次のように書かれている。
『霊ヲ指テ神卜云 神ハ隠身ナリ。体ヲ指テ命卜云 命ハ体別ナリ』(「本田親徳全集」)
『孔子ハ言卑近ニシテ奧深シ。老子ハ言高遠ノ如ニシテ意淺シ。故に其餘流、道家者流ノ異端トナレリ。忠臣孝子、盡ク孔門之徒タラサル者アリヤ。』(『副島種臣全集3』)
孔子と老子に対する翁の評価が興味深い。翁は漢学の素養深く、明治天皇の侍講を務めていたほど。
『行者ナト云フテ、或ハ深山幽谷ニ入り、斷食シテ死スル者アリ。是皆身体ヲ暴殄スル者ナリ。
道ヲ履スシテ長生セント欲スルヨリハ、道ヲ履テ早死スル事難ナリ。道トハ人倫ナリ。道ヲ履スシテ長生セント欲ストハ、自ラ跡ヲ人閒ニ絶テ、禽獸ト群ヲ同フスルナリ。只長生セント幸魂ヲ己ノミニ取テ人ヲ幸セサルハ、盜人ノ物ヲヌスムト同類ナリ。何則、人地上ニ長生セハ必ス之カ恩ヲ報セサル可ス。然ニ飮食シテ長生サヘスレハヨシト思ハ、是生命ヲ天地閒ニ盜逃セントスルナリ。』(『副島種臣全集3』)
『靈ハ靈ニ對シ、體ハ體ニ對シ、力ハ力ニ對シテ、而テ眞ノ眞道タルヲ得ルナリ。』(『副島種臣全集3』)
ここでも翁は本田霊学の基礎である「霊を以て霊に対する」、「惟神」の姿勢を重視している。