私はこの子を“ツンデレ”と形容したが
まさにこの子はそのものだった。
下手をするとへそを曲げてしまって
やりにくい子になってしまう。
年長の男子でさえも気を遣うことがあった。
私は、この子のそういう部分を
唯一嫌っていた。
自分の感情、特に良くない気分の時こそ
相手にそれを悟られるな！
人に気を遣わせるな！
と、私は肝に銘じてきたから。
したいことをさせて育ったのは良いが
協調性という意味では、もう少し厳しく
躾ておいていただけたら・・・
と、少々残念に思った。
でも、私は彼女に
直球を投げたことはない。
“見てわからん奴には言うてもわからん”からだ。
これは本当にそうで、
私の唯一の哲学なのだ。
ある時、“仏頂面”というのはこういう顔です！
と、お手本のような不機嫌な顔で塾に来た。
なんかあったな・・
でも私は放置した。
ゆうかはゆうかで、何かを待っている風であった。
叱られて、それで膿が出て
スッキリするかもしれないが
そんな見方をしてくれる人は世間には居ない。
一発退場なんだぞ。
だから、自分で解決しろよ・・。
教室に居た他の子も少し気まずい様子。
ほら、皆が気を遣ってますけど
いつ解けるのかな、おまえさんは？
結局、授業終了直前まで変わらず。
このまま帰るのね・・と思った瞬間、
すーっと寄ってきて
『クマ、シツモンある』
はいよ、どれどれ？
あ、これな。これはね・・・
と問題を見ていた私の頭の上から
『おかあさんと喧嘩した。
でも、ゆうかは絶対悪くない・・・』
涙目だ。
頭をよしよししてあげた。
瞬時にいつものゆうかにもどった。
多分、今までのこの子なら
あのまま仏頂面で帰ったのだろう。
でも、明らかに変わった。
さ、掃除しよ！
うん、よっしゃ！
変わろう・・としている様子が見てとれた。