1 22-90「壁の向こう側へ」 シガンシナ決戦の英雄への勲章授与式場面

(1) この勲章授与と死者を弔う式(以下,「勲章授与式」と略記する。)は,開式前の状況も含めて,現下の28-113話「暴悪」状況から振り返ると,感慨深い描写で一杯だ。

(2) 本記事では,フリーダ発言に一点集中しつつ,ヒストリア妊娠相手,ユミルと話が飛ぶ。勲章授与式前後も,粘着してくどくど書けば,沢山のものが込められていて,いくらでも駄文を連ねていける。それは控えよう。

2 勲章授与式でエレンが見たグリシャ記憶(WM壁ドン時のフリーダ発言)

(1) グリシャはWR内レイス家地下礼拝堂へ行き,「壁の王」フリーダ,ロッド夫妻,長男ウルクリンほかがいる前で,次のように言った(22-90「壁の向こう側へ」)。

 

ア 私は壁の外から来たエルディア人 あなた方と同じユミルの民です。

 

イ 壁の王よ!!

 

ウ 今すぐ壁に攻めて来た巨人を殺して下さい!!

 

エ 妻や・・・子供達が!!

 

オ 壁の民が食われてしまう前に!!

 

(2) フリーダについては,上記グリシャの発言中,イ「壁の王よ!!」以降~オ「壁の民が食われてしまう前に!!」の5つの吹き出しは,見開き1頁で描かれ,その見開き1頁には,5カットが描かれている。イに対し,1カット目,ウ及びエに対し2カット目,オに対し3カット目,そして4カット目,5カット目。このフリーダの5カットは,とても意味深な描かれ方だ。是非,実際の絵を見ていただきたい。

 

(3) そして,フリーダは,グリシャに何かを言ったと想われる(フリーダ発言)。そのフリーダ発言は,エレンに大きな衝撃を与えるものであったようだ。勲章授与式でヒストリアの手を握っているエレンの表情,ハンジ,リヴァイ,ミカサ,アルミン,ヒストリアの描写等。

 

(4) そして,そのフリーダ発言の後,16-63「鎖」で描かれた展開になると想われる。グリシャが,フリーダに何かを訴え,フリーダが,さらに何かを言い,グリシャがメスで右手の平を指して巨人化し(「進撃の巨人」),フリーダも右手を噛んで巨人化し(「始祖の巨人」),両巨人の戦いの後,グリシャがフリーダを捕食する。そして,グリシャは,引き続き,ロッド家の14歳ディルク,12歳エーベルを叩き潰し,10歳フロリアンとフロリアンを抱えたロッド妻を踏みつけ,長男ウルクリンを握りつぶした。家族の誰よりも逃げる行動が早いロッドは,逃げることができた。おそらく,グリシャは,レイス家根絶を図ったと想われる(グリシャがヒストリアの存在を知らないということが前提だが。)。

 

3 諫山先生が,現時点(28-113「暴悪」発表まで)でもクローズドにしているフリーダ発言を予想してみた。フリーダ発言の予想には,特に,以下を参照した。

(1) 22-89「会議」のクルーガー発言

(2) 3-10「左腕の行方」のグリシャ発言

(3) 17-69「友人」のウーリ発言(彼の信じた「奇跡」の意味)

(4) 16巻全て(16-63「鎖」,16-64「歓迎会」,16-65「歓迎会」,16-66「願い」)

(5) 17-67「オルブト区外壁」でオルブト区へ向かう荷馬車でのヒストリア発言全般。中でも,以下が最重要

 

「そう・・・あなたのお父さんは 初代王から私たち人類を救おうとした」

「姉さんから『始祖の巨人』を奪いレイス家の幼子ごと殺害したのも・・・それだけの選択を課せられたから」

上記ヒストリア発言で,エレンは,エレン自身の記憶3-10「左腕の行方」のグリシャ発言を想記している。

 

(6) 17-68「壁の王」でヒストリアが父ロッドを討った際に流れ込んだイメージとその後のヒストリアの「この壁の真の王」宣言まで

 

(7) 17-70「いつか見た夢」

ア 「牛飼いの女神様」とヒストリア自身がやりたいこと(それはユミルの生き様をなぞるだろう。)

イ エレンとヒストリアの会話

「私達が初代王の力を否定したこと」「後悔するわけにはいかないから・・・」

「最近は地下街にいた子達も笑うようになったの」「これが間違っているはずなんてないよ」

 

(8) 22-89「会議」,22-90「壁の向こう側へ」のシガンシナ決戦後の貞応臨席兵団政権会議前後

 

ア 「ユミルの手紙」及びユミルの人生。ヒストリアがそっと流した涙の意味

 

イ 兵団政権会議前のエレンとヒストリア

 

ウ 兵団政権会議中のエレン,ヒストリア

 

(9) 26-106「義勇兵」のイェレナ提案(ジーク提案(1))を受けた女王臨席兵団政権会議(851年)

 

(10) 27-107「来客」の女王臨席兵団政権幹部・関係者とキヨミ様面談前後(852年)

 

ア 「私達は生まれのことで重い荷物を背負う者同士なんでしょ?」「ミカサが一緒ならこんなに頼もしい人いないよ」(ヒストリア)とエレン表情

 

イ キヨミ様提案(ジーク提案(2))を受けたヒストリアの「獣の巨人」継承受け入れ決断とその直後のエレン発言,ヒストリアの反応

 

(11) 27-108「正論」の鉄道敷設工事場面とその後の鉄道荷台での104期生会話(853年)

 

(12) マーレ急襲帰還の約9か月前 鉄道開通式の後のイェレナ・エレン面談(853年)とその後のエレン壁内単独行動開始

 

ア 27-109「導く者」27-110「偽り者」,28-111「森の子ら」から,イェレナ自白,ハンジ・オニャンコポン連携,ザックレー暗殺,エレン逃亡の翌日にニコロ・レストラン事件が発生しており,ニコロ・レストラン事件は,マーレ急襲の約1か月後であった(28-111「森の子ら」ガビ発言)。

 

イ ピクシスによれば,鉄道開通式の後,エレンは,単独行動を取るようになった(27-109「導く者」のピクシス発言)。それは,おそらく,兵団が,エレンに,行動記録書の提出をさせており,その行動記録書に,壁内での単独行動が目立つようになるという意味であろう。なお,エレンは,調査兵団兵士だから,行動記録書提出は,兵士の服務規律として全く不自然なことではない。まして,エレンは巨人でもあり,当初はリヴァイ監視下に置かれていた人物である。

 

(13) マーレ急襲の約4~5か月前 ヒストリア妊娠の始まりと相手はエレンだよ説

 

ア 27-107「来客」27-108「正論」より,マーレ急襲と急襲部隊パラディ島帰還直後のヒストリアは,絵の雰囲気では,妊娠後4~5か月というところだ。

 

イ 私は,27-107「来客」の最終場面のヒストリアの表情は,絶望や諦念の表情とは見ていない。「何か」を見通して,覚悟している者の目だと思う。フリーダ発言直前のフリーダの目,マーレ潜入中及びその後のエレンの目と同質であるように,私には感じられる。

 

ウ 私は,ヒストリアの妊娠の相手は,当然,エレンだと考える。エレンは,イェレナ秘密会議後,壁内での単独行動の中で,イェレナ,フロック,ヒストリアと密会し続け,その中で,マーレ急襲の約4~5か月前に,ヒストリアと「契った」と考えている。エレンとヒストリアは,両親と腹違いの兄・妹と出自の見事な相関関係があり,それぞれの来し方と関わりがある。苦悩し,導き導かれつつ,それぞれに乗り越えてきて,それでもなお巨大な不条理が立ちはだかり,苦悩の中での決断を迫られてきたこの二人の関係と問題状況からすると,ヒストリアが子を宿す相手は,私には,エレン以外には見当たらない。いずれ,エレンがヒストリアの心臓を鷲づかみにしてベッドインに流れ込んだエレンの言葉予想を記事にしてみようかな・・・。こういう方面では,エレンには,決してグリシャを見習って欲しくはないのだが・・・。

エ そして,私は,エレンには,この時期,せめてリヴァイと腹割って話しておいてほしかったかもと思うのだが。エルヴィンの死とエルヴィンとの約束がジークの関係でネックになるのだろうけれど・・・。28-113「暴悪」は,リヴァイの強さを見せつつも,同時に,敵方ワインの取扱いとか部下達の「無垢の巨人」への対応とかリヴァイの弛みや変化も見せた回だ。このころは,エレンが,アルミンの「正解を導く力」など期待していなかったのは当然だと思う。問題先送りの兵政権,調査兵団の中で,敢えて挙げるならリヴァイ,次いでハンジなのだが・・・852年の鉄道敷設工事場面の後,実際に,ハンジやリヴァイが何をやっていたかなんだろうなぁ・・・・。改めて,エルヴィンは凄い人だったんだなぁと思うわけだ。

エ 私の仮説だが,エレンとヒストリアの精神と肉体の深い結合(性愛)は,エレンの中のフリーダを蘇らせ,「世界」についての記憶やフリーダ自身の苦悩が追加されただろう。そして,それがまた,エレンとヒストリアを結びつけ,巨大な不条理の中でのエレン,ヒストリアそれぞれの選択を形作ったと考えている。記憶は,どうも,まさに,そのときに,必要な記憶が道からやってくるようだ。そして,ヒストリアとの接触も重要要素だ。そうすると,まさに,そのときに,より深い結合をすれば,「道」から「どかーん」とやってくるのではないだろうか。そして,「始祖の巨人」を宿したエレンと145代王系統のヒストリアだから,その出自からそれぞれの来し方と関わりの全てを恐縮させて深く結びつき,その結合の中で,配偶子が一つになったときには,その受精卵には,「道」を通じて,「何か」が入るのではなかろうか。フリーダ?ウーリ?クルーガー?・・・なんとかユミル来い!的な・・・・グリシャ・・・には入ってほしくないんだが(個人的に)。そういう先人達が不条理に中での苦悩や抗ってきた精神が凝縮されて受精卵に入ってほしいなぁ・・・

 

(14) フリーダ発言は,以上を総合し,まさにあの勲章授与式の,あの場面で,グリシャ記憶がエレンに来た意味を考える。それは,①クルーガー,フリーダ,グリシャ,ユミルのそれぞれの苦悩や願いとともに,②当時の問題状況と,エレン,ヒストリアの来し方及び行く末の両面から考える。そして,そのフリーダ発言は,その後のエレンやヒストリアの重大な決断を導いたものであるはずだ。

 

(15) 事項で私の仮説を出すが,「超平凡」で,ある意味,「そのまんま」だ。奇抜でも何でもない。しかし,「そのまんま」で奇抜でも何でもない発言でも,置かれた状況が不条理そのものなので,グリシャの苦悩と選択,フリーダの苦悩と選択を表現したものになる。

 

4 グリシャに対するフリーダ発言仮説

 

(1) 壁の外から来た「ユミルの民」であるあなたは,壁の中の「ユミルの民」の女性と結ばれて子を為し,あなたは,妻と子供達,そして,壁の民達が巨人に食われてしまう前に,壁に攻めて来た巨人を殺せと私に言う。壁の外から来たあなたは,壁の中の民を愛しているのですね。

 

(2) 私は,そのようなあなただから,「壁の王」しか知り得ない事実を告げます。

 

(3) 私は,壁に攻めて来た巨人や壁の民を喰らう「無垢の巨人」を操ることができません。「やらない」ではなくて,「私には,できない,その力がない」のです。

 

(4) 私は,三重の壁に潜む幾千万もの巨人を解き放つことはできます。それをやれば,幾千万もの巨人が世界を踏み潰すでしょう。

 

(5) あなたは,壁の外から来た「ユミルの民」で,しかも,巨人を宿す人のようです。そのあなたの求めに,私ができることは3つしかありません。一つ目は,幾千万の巨人を放つこと,二つ目は,ただ,祈ること,三つ目は,あなたに「始祖の巨人」を託すことです。

 

(6) 王家ではないあなたは,「始祖の巨人」の力を使うことはできないでしょう。しかし,「奇跡」はあるのかもしれません。現に,壁の外から来た「ユミルの民」であるあなたが,壁の中の人達を愛し,「今,この時」に,私の前にいます。

 

(7) 私があなたに「始祖の巨人」を託すには,あなたは,力と意志を示す必要があります。私は,あなたの巨人と全力で戦います。それにより,あなたは,壁の外の巨人を操る力が私にないことを知るでしょう。私の巨人を打ち倒して私を喰らう力と意志があなたにはありますか?そして,王家ではないあなたが「始祖の巨人」の力を使うために,非情な決断を行うことができますか?地獄に足を踏み入れて,なおも進み続ける覚悟がありますか?あなたが私に敗れるなら,あなたの力と意志はそこまででしか無かったということです。私を超えて前に進めないようでは,「奇跡」の起こしようもないでしょう。

 

(8) まず,あなたが,決めるのです。「幾千万の巨人を放てと私に求めるのか?」 「この場から立ち去り,大きな流れの中で,ただ祈るか?」 「私を倒し,私を喰らい,地獄に足を踏み入れてなおも進み続けるか?」

 

5 3項のフリーダ発言に続く16-63「鎖」のやりとり予測

 

(1) グリシャ (絶叫して)「こ,この,私が・・・ですか!?」

 

(2) フリーダ 「そうです!! 決められないなら,何も求めてはいけません!!」

 

(3) グリシャは決断して,メスに手を突き刺して,バトル開始し,フリーダを倒して喰らいました。

 

(4) レイス家を根絶しようとしたのは,非情の決断の一つと考えます。王家を絶てば,「始祖の巨人」の力を使えるようになるか?もし,使えないなら,「大陸王家であるダイナ,最終的には,腹違いの兄ジークとどう向き合うか」をエレンに託す。

 

6 「始祖の巨人」の力を支配すること

 

(1) 私は,WR避難所から離れた山中でグリシャがエレンに言った言葉に思いを馳せます(3-10「左腕の行方」)。

 

「ミカサやアルミン・・・みんなを救いたいなら」

「お前はこの力を・・・」

「支配しなくてはならない」

 

(2) そのグリシャ発言は,捕食者の未来の記憶として被捕食者のクルーガーに流れ込み,再び,グリシャの後で見る者(グリシャの継承者であるエレン)に行きます(22-89「会議」クルーガー発言「そうとは限らん」,「後で誰かが見てるかもしれん」)。

 

「妻でも」

「子供でも」

「街の人でもいい」

「壁の中で人を愛せ」

 

「それができなければ繰り返すだけだ」

「同じ歴史を」

「同じ過ちを」

「何度も」

 

「ミカサやアルミン」

「みんなを救いたいなら」

「使命を全うしろ」

 

7 勲章授与式のエレンとヒストリア

(1) エレンは,壁の外(壁の向こう側)に自由はなく,壁の外に踏みだすことの代償を,猛犬に噛み殺されたフェイの無残な遺体に見ます(この絵は,クルーガー記憶でしょう。クルーガーは,グロスとグロスの息子達がフェイを惨殺した場面を見ていたと考えます。)。凄惨を極めたシガンシナ決戦を経て地下室のグリシャノートで明らかになった現実は,希望か絶望かも定かではない圧倒的な不条理でした。エレンは,その不条理を変えるために自身の命を捧げることはできても,ヒストリアを犠牲にする覚悟ができない自分を感じて苦悩しています。

(2) 私は,エレンは,出自の共通性やこれまでの出来事の全てを凝縮させて,壁内人類そのものを象徴するヒストリアを深く愛していると考えています。ヒストリアは,その出自と来し方の中で,生き残っている自身の死者達に対する責務として,女王の役割を自ら引き受けています。ヒストリアは,困難な決断を毅然として行い,威厳すら漂わせる美しい女王になっています。エレンは,そのヒストリアの姿を見ています。

(3) それと同時に,エレンは,ヒストリアの本質も,しっかり理解しています。「ユミルの手紙」を読み,彼女の生涯と選択にそっと涙を流すヒストリアは,そのユミルに導かれつつ,「存在を否定され憎悪されている者がいたら,最終的には,その者のために,自身を捧げて死ぬこと」を選び続けるでしょう。かつてのレイス家地下礼拝堂でエレンの魂を救ったときのように。彼女が彼女であるために。

(4) ヒストリア自身も,あの「ユミルの手紙」を読み,そういう自分でしかあり得ないことを再確認したでしょう。

8 改めてユミル

(1) 私はアニメのユミル改変は,私的には「とんでもない」,「台無し」レベルと思っています。それは,私の好みの問題です。

(2) ユミルは,「存在を否定され憎悪されている者の魂を救うために死ぬ」という選択を繰り返し,そのようにして死にました。ユミル自身が,名もない孤児で,「存在を否定され憎悪されている自分」でした。ユミルは「王家の血族」ではありませんが,本質的部分が「女神」であり,そういう人生を生きて死んだ点で,「本物」なのです。①摘発場面での決断,②石討たれる場面,③境界線処刑,④信者には「無垢の巨人」になっても「ユミル様」を思う信仰があること(これはアニメではさらに強調されています。こちらのアニメは私は「大好き」です。),⑤無垢巨人時代と地中での眠り,⑦何に反応して目覚めマルセルを捕食したのか,⑧マルセル捕食による知性巨人としての復活,⑦その後の生と死・・・ほとんど「イエス・キリスト」のイメージになってきます。

(3) ウトガルド城から飛び降りた際のユミルの独白(10-40「ユミル」)が極めて重要と考えます。「大勢の人の幸せのために死んであげた」ユミルは,境界線処刑の際に,「もし生まれ変わることができたなら・・・今度は自分のためだけに生きたいと・・・」「そう・・・強く願った」。「心から願った」ことですが,マルセル捕食で知性巨人となり,自由の感覚を得た後のユミルは,どういう選択をし続けたでしょう?彼女自身は,繰り返し,「存在を否定され憎悪されている者」のために死ぬという選択をしています。本質がそうでしかありえないから,そのように生きることが自分のために生きることと・・・と私は考えます。「本質」という言葉を持ち出すことに躊躇いはあります。しかし,エレンの本質とか中核とかを設定できて,それを,自由でありたいと願い,自身の自由を侵すものと戦い続けること」としましょう。それと同様に,ユミル,ヒストリアには,その出自と来し方の中で,「そうでしかあり得ない自分」が出来ています。私は,便宜的に,それを,「本質」と呼びたいわけです。

9 そしてフリーダとフリーダ発言

(1) ユミルの人生,ヒストリアの来し方と今後を思います。そして,フリーダに思いを巡らすとき,ロッドとその正妻の子のフリーダは,145代王の継承者で「壁の王」になった時点で,出自面でも,ユミル,ヒストリアと同じになります。

(2) ヒストリアをWSのレイス家牧場に閉じ込めつつヒストリアを訪れ,記憶を消すことを繰り返してきたフリーダ。そこに,「壁の王」となったフリーダの大きな矛盾と苦悩が表現されています。

(3) このように考えたとき,私は,フリーダの最後も,「存在を否定され憎悪されている者」のためにグリシャに捕食されることを自ら選んだという物語にしたいわけです。そうなれば,ユミル,フリーダ,ヒストリアは,「女神」3セットというわけです。

(4) そういう発想で,グリシャに対するフリーダ発言を組み立てました。

 

(5) 難点は,このフリーダ発言だと,ヒストリアがエレンを捕食すれば,ヒストリアは,壁外から来る巨人を操ることができなくても,単独で「地鳴らし」発動ができるということ(これ自体が私の仮説ですが),それを,エレンが知ることになるという点です。その後のエレンの行動と矛盾するようにも思えます。ジークとの接触による「地鳴らし」発動に拘らなくてもよくなりますから。

 さらに言うと,「地鳴らし」発動だけを目的とするなら,もっと確実な方法があります。ヒストリアが出産し,赤子を「無垢の巨人」にし,日光取り入れ口のある円柱形状のシェルターで維持管理すればよろしい。13年寿命もありませんし,餌も入りませんし,長期かつ簡単な維持管理ができます。その赤子の「無垢の巨人」のシェルターに,接触可能な窓か人間の出入りを可能とする出入り口を設けておけば,簡単に「接触」できます。繰り返し何度も「接触」実験できるでしょう。私は,ヒストリア妊娠が出たころから,このような赤子の王家血統「無垢の巨人」維持管理策を思いつき,マーレ急襲の最大成果は脊髄液確保だろうと思っていました。ジーク計画の盲点と思っていました。私が思いつくくらいだから,ピクシスやハンジは,このくらいのことは考えるだろうと思っていたのですが・・・。ですから,ヒストリア妊娠を憤るローグは愚かで,赤子を取り上げて王家血統「無垢の巨人」にすればいい。ただ,この場合でも,「接触」で「地鳴らし」発動はできますが,壁外巨人を操ることはできないと私は考えます。

 赤子の「無垢の巨人」化維持管理は,ヒストリアの精神崩壊を招くでしょうが・・・。そうすると,もし,エレンが,ジークとの「接触」によって「地鳴らし」発動を目指しているなら,やはり,ヒストリアを巨人にせず,その赤子を王家血統「無垢の巨人」として維持管理することもしないということです。①ヒストリアがヒストリアとして子とともに生きていって欲しい,②その子には「自由」であってほしいということです。エレンのヒストリアLOVEが続いているのだろうと思います。そして,ただ生きていればいいというのではなく,魂が死ぬようなことではいけないわけです。そうすると,ヒストリアの妊娠と出産は,妊娠が事実であれば,その相手は,エレンしかあり得ないと思うのです。かつてヒストリアに石を投げた少年は,象徴的には,「壁の外の巨人」に対応します。壁外無垢巨人か壁外知性巨人とヒストリアが子作りせんでしょうと思うのですが・・・。

 なお,私は,エレンが「始祖の巨人」の力を使う目的って,本当に「地鳴らし」かしら?と思うところもありますが。別じゃないかなと思います。なんとなく。

10 補足

(1) 私は,エレンはヒストリアを深く愛していると考えます。他方で,エレンとミカサの結びつきも,28-112「無知」のエレン発言に関わらず,とても強いと思っています。

(2) 私は,エレンとミカサの結びつきは,「二つの殺人,二人の殺人」事件という言葉で考えています(2-6「少女が見た世界」)。この二人の結びつきも強いのですが,困ったことに,ミカサにとってエレンは「帰る所」であり,エレンは,「自由を求めて飛んでいきたい人」なのです。そういう観点から,私は,ミカサが,「ただいま エレン」じゃなくて,「いってらっしゃい エレン」とエレンに言うことの意味を考えます(1-1「二千年後の君へ」)。そして,私は,いずれ記事にしますが,「いってらっしゃい エレン」の鍵は,1-7「小さな刃」の中に,にしっかり描かれていると考えています。

以上