
またあの芝生で走りたいな
京都の病院から鴨川を見ながら
息子のヨシはそう呟いたことが
ありました。
小学校のマラソンを
思い出していたのかな。
◇
⋯いつぞやか、
僕の過去を息子に分けたという
わかりにくい文章を投稿しました。
ヨシが亡くなる時、
僕の命を息子に譲れないなら、
どうか神様⋯僕の人生で
一番楽しかった時間を
息子に切り与えて下さいと。
どうかヨシよ、
過去に遡って
僕を乗っ取れ!と。
◇
10代後半で突然、
性格がクルリと反転した
当時の僕は、なぜか
緑コーデにこだわっていて
(緑はヨシのトレードマーク)
毎日が楽しくて仕方なく、
いろんなチャレンジをしたり
様々な場所に行き、
たくさんの人に出会いました。
ある時は
サハラマラソンに
参加したりもしたのですが、
レース途中のサハラ砂漠での夜、
(ベーステントで)
取材で同行中の
作家さんに呼び出され、
「経歴をみると日本人では
君だけド素人で何故参加したのか
全くわからない(笑)理由を聞かせて」
といわれたりしました。
「自分でもよくわかりませんが
なにか時間がもったいない気がして(笑)」
◇
僕自身の思い出の中にあった
ヨシの緑色のサインのおかげで、
故人はいつまでも傍にいるし、
振り返れば、出会う前から既に
見守ってくれていた⋯
ということもあると信じられます。
⋯あの時、病院での
鴨川の風景には戻れなかったヨシ。
でも、その川沿いの芝生は
緑色の僕が何度も走った道なのです。