一旬驕話(ゐ):ドイツでの青少年の路上犯罪対策例
青少年の路上犯罪への取り組み
師走も押し詰まってきました。学校は冬休みに入りました。ドイツの新聞をクリックしていると主要な記事はウクライナとガザでの戦争の報告です。それはそれでいいのですが、少しアチコチしてみようと冬休みに入ったことでもあるし学校関連の記事を探してみましたら青少年の路上犯罪への陽が当たりそうもない対策の報告がありました。学校教育がテーマではありませんし、加えて勇ましい内容ではないし、画期的な試みの報告でもなく、ごく地味なレポートですが、ドイツでも大きな問題へは小さな取り組みで動いているのだと読みました。
出典は拙ブログでも時折紹介しているフランクフルター・ルントシャオ紙の2023年11月30日版です。オリジナルはhttps://www.fr.de/politik/polizei-jugendkriminalitaet-kriminelle-kinder-polizei-kurve-kriegen-nrw-zr-92703002.html で読めます。
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8歳で犯罪に走る子供たち:凶暴行動予防市民運動「カーブをさせるな」:頻発する青少年の窃盗、脅迫、暴力……これらの危険要因はいつも同じだ、これが予防プロジェクト「カーブをさせるな」の立場です。
アーキン・サート氏は社会教育士ですがよく叔父さんの役を果たしています。世話をしている子供が誕生日になるとアイスを一緒に食べるわけです。その子供には誕生日を祝ってくれる人は誰もいないからです。彼のところに来るのはすでに路上で問題を起こした青少年です。一番下は8歳になったばかりで、ほとんどは11歳から17歳です。多くが社会的に困難な事情の中にあって窃盗や脅迫や暴力行為を繰り返していました。彼らが凶暴な犯人となるのを防ぐ目的で立ち上げたのが市民運動「カーブをさせるな」です。この予防プロジェクトはノルトライン・ヴェストファーレン州内務省内に置かれているのですが、警察とソーシャルワーカーが協力していて、他の州からもこの問題でのモデルとして評価されています。と言うのは、青少年の犯罪は明らかに増加しているからです。
青少年の犯罪:「はぎ取り」
ドイツ中央政府の犯罪局によれば2022年の青少年に関する犯罪は93,095件で昨年比 35.5% 増です。原因はコロナ・パンデミックの終結にあると犯罪局は説明しています。昨年のロックダウン後に路上犯罪のチャンスが増加したと言うのです。しかし専門家は路上犯罪の質の変化も見られると指摘しています。犯罪エネルギーの増加です。ゲルゼンキルへン市の予防プロジェクト「カーブをさせるな」で警察側の代表を務めるトーマス・バルテラ氏は路上での窃盗、脅迫、暴力を「はぎ取り」と呼ぶのですが、これが多発しているのです。
バルテラ氏と彼の同僚は未成年者がたびたび路上犯罪を犯している当事者と家族にこの予防プログラムに協力してくれるつもりはないかを尋ねることにしています。参加してもらえることになれば非攻撃トレーニングや家事分担をしてもらう。それらをしない場合でも反省の会話には参加してもらう。現在はゲルゼンキルへン市で25名が参加してくれています。
そもそもこの子供たちはなぜこんなに早くから犯罪に走るのだろうか。アーキン・サート氏は「いつも危険要因は同じです。家庭はしばしば経済的な問題を抱えており、いわゆる社会的な危機点にいます。言葉の問題を持っている子供もたくさんいます」と言います。彼は大家族出身の子供もいる、その家族名は「メディアを通して」ご存じでしょうが、と言うのですが、いわゆるクルド・イラン系を指しているのです。彼らは大家族内部にあって特にノルトライン・ヴェストファーレン州とベルリンで活発に組織的犯罪を犯している下部集団と関係は持ってはいないのですが、その家族名のゆえにいつも予断・偏見にさらされていて、それらすべてが「彼らは学校では出来が悪く、誰からも価値を求めてもらえなくて他の方向に進んでしま」い、グループ内で力の強いところを見せようとして犯罪を犯してしまう、というネガティーヴなスパイラルに入り込んでしまうと指摘するのです。
彼は「そこでは彼ら自身も犠牲者なのです。年長者からいつもけなされ、それがいつまでも尾を引いているのです」と言ってそのような子供が警察に見せた一編のヴィデオの話をしてくれました。その中では少年が若者にその若者の足に接吻するように命令されているのでした。バルテラ氏によると、この若者は警察に拘束されたのですが、これは大きな進歩だ言います。「30年前だったら警察はいつも敵でしたから感謝のカの字もされませんでしたよ。予防作業である種の信頼関係が出来てきたのです」と言うわけです。
このプロジェクトのメンバーであるフランク・ドゥテ氏によると、ほとんどの青少年は2年か3年ほどプログラムに参加するそうですが、「今年は8名がプログラムを去りました。うち7名は『卒業生』です」と言います。「卒業生」と言うのは路上での犯罪行為を引き起こす危険性はないと判断された青少年を指しています。アーキン・サート氏は、彼らの多くは職業訓練所に通うのですが「自動車が欲しいといっても乗れるようになるまでには窃盗を繰り返していた時に比べて時間はかかるだろうが、彼らは今は自分の生活と正真正銘の価値評価を手にしている。私たちが彼らに伝えるのはこれです」と強調していました。
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青少年の非行には貧困、民族問題、グループ内での力関係、劣等感などが原因として挙げられています。何よりも、それらによって{自分の生きている価値を見いだせない=自分の居場所を見いだせない}ので路上犯罪に誘われるというのがこのレポーターの強調しているところです。上記の諸原因はいずれをとってもオイソレと解消できるモノではありません。それどころかますます錯綜の度合いは深まっていると言えます。
そのような中での人口約26万という小振りな町ギルゼンキルヘンの青少年の路上での凶暴行動を事前に予防しようとする市民運動「カーブをさせるな」プロジェクトの紹介です。このプロプロジェクトの活動の内容例を知りたいと思ったのですが、そこまではレポートしていません。それがあれば、日本でも行政と警察とソシャルワーカーや社会教育士などが相協力して青少年の非行を予防する試みへの具体的なアドヴァイスとなったかもしれないのですが、ともあれドイツにおける取組の紹介です。