一旬驕話(て):ドイツのソーラー支援政策の顛末
ドイツのソーラー産業の一端
ドイツのエネルギー政策では脱原発の方針はご存じのとおりですが、ロシアのウクライナ侵攻の波をモロに受けてエネルギー確保に向けては明確な道は描かれていません。拙ブログでは2023年10月30日に「一旬驕話(つ):ドイツのソーラー産業の現状」を投稿しましたが、その後の様子を述べた記事がありましたので紹介します。
「気候保全と再生可能エネルギーのための雑誌」と銘打っている「新しいエネルギー」誌2024年2月14日の電子版記事です。これは
この記事の続報が別の記事でも確認できたので末尾に掲載しました。
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中国のダンピング政策に対抗するドイツ再生可能エネルギー法でヨーロッパでのソーラ製造に道は開けるか。不協和音も聞こえる。
ドイツのソーラー産業は危機に直面している。ソーラー製造大手マイアー・ブルガー社とヘッカーソーラー社は数週間前、中国のダンピングに対する政策支援を求める書簡は公表した。それに対して業界内では意見の対立が大きくなっている。
対立はEU製ソーラー設備のための「回復力ボーナス」が提案されたところから生まれている。この提案のために最大のソーラー販売会社の1コンマ5度社は、この提案はバックギアであり、「タックスペイアーと工場立地を犠牲にする少数メンバーのためだけの客引き政策」をもたらすとして、ドラスティックな決定をした。連邦ソーラー関連社連盟(ソーラーBSW)を脱退したのです。ライバルであるエンパル社も、ソーラーBSWは回復力ボーナスによってエネルギー転換と、それによって雇用をも危険にさらすことになる、と批判している。
1コンマ5度、ドイツ・エネルギー・コンセプト、エンパル、ツォラーなどの会社は完成したソーラー設備の設置と販売によって売り上げを伸ばしているのであり、モデュールが安いほど利益が大きい。これらの会社は長年にわたってソーラー本体とモデュールのドイツ内の製造会社やソーラーBSWと手を組んできた。それが今回の支援措置のあり方で問題が発生したのである。この支援策によって個人がEUのソーラー製品を購入する際に支給されるドイツ再生可能エネルギー法による補償金が増額されることになる。であるからドイツの高価な製品にとっては中国からの安い製品に対する好機となる、これが目論見の目指すところで、政府内では社会民主党と緑の党が推進し、自由民主党が反対している。
製造会社と販売会社の意見の対立
1コンマ5度社のフィリップ・シュレーダー社長は「このような形での補助金は確かに個々の会社を短期的に支援はします。しかしドイツでのソーラー産業の持続的育成にはブレーキをかけます」、回復力ボーナスは「ほとんど一つの独占企業化」をもたらし、市場の正常な発展をゆがめ、加えてタックスペイアーには追加出費をもたらすものだ、とソーラーBSWの考えを厳しく批判しています。同社はドイツ東部に、ボーナス政策とは無関係で、外国からの製品受け入れも予定している従業員1000名のソーラー・モデューラ製作工場を計画している。
エンパル社は、今回のヨーロッパ製ソーラーモデュール購入拡大を目指す支援は「ソーラー市場への誤った刺激策」である、顧客は今の注文をキャンセルして支援対象となる型番が入手できるようになるまで待つでしょうが、同じように考える人が多くて長い待機リストに記載されることになるし、「それによって需要が落ちれば多くのソーラー企業の存続が脅かされるし、支払い不能になるリスクも高まる」し、そうなれば政府のソーラー拡大目標、気候目標は達成できないことにもなりかねない、と見ているのである。2023年にはソーラー新設は14.1ギガワットに上り過去最高なのだが、低価格の中国製が押し上げている。
ソーラーBSWは期限付きボーナス採用か
ソーラーBSWは1コンマ5度社の決定に対して疑問を呈している。ソーラー連盟のカルステン・ケーニッヒ事業部長は、「言うまでもなく一つの企業でも退会するのは」残念なことではあるが、1000社を越える加入企業のうち2023年だけで約300社が新入企業であり、中国製品に対する貿易妨害や高関税導入には「強く」反対するものであるが、他方では「期限付きでドイツ再生可能エネルギー法による支援総量の一部」としての期限付きボーナスは当然考えられることであり、それにより再建段階にあるヨーロッパのソーラー企業が国際的な競争力を持つ契機となる、と述べる。彼は、この方針はソーラーBSW幹事会と「各価値創造段階の代表者」会で一致して承認されたものであり、この制度導入によりドイツでのソーラー市場は7割以上の成長が見込まれている、と述べる。
関係者によると、連邦政府はこの支援措置については2月末か3月初めの決定を予定している。EU議会と加入国とでは緑化テクノロジーに向けての「ネットゼロ工業法」が先週合意を見ており、先ずソーラー産業を指定している。新しい製造設備の認可手続きの簡素化がまず求められており、それ以外の支援策は予定されていない。その効果のほどを疑問視するインサイダーもいる。アーヒム・デルクス・ドイツ商工会副理事長によると、これは「本式のゲームチェンジャーとはとても言えない」そうである。
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上の記事では3月初めまでには政府は決定するだろうとあります。政府内で意見の対立があり、3月下旬にずれ込みました。ドイツ中部放送3月22日 19:48配信によれば、この支援金は却下されたそうです。緑の党はこの支援策を牽引しており、自由民主党は強硬に反対していました。自由民主党の反対意志は最後まで軟化することはなかったようです。下記をご参照ください。
https://www.mdr.de/nachrichten/deutschland/politik/resilienz-bonus-solar-photovoltaik-kommt-nicht-100.html
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少し突飛で驕「語」的な訳後感想:
1979年~2003年、24年間にわたって大分県知事を務めた平松守彦は一村一品運動で知られていますが、通産官僚でした。日本のコンピュータ産業育成に向けての国策投資を勧めた、または進めた方です。50年前のことです。ドイツのソーラー支援策の記事を訳しながら、平松知事のことを思い出しました。
一方では政府の半導体企業への多額の支援金も頭をかすめました。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240224/k10014369011000.html#:~:text=TSMC%E3%81%8C%E7%86%8A%E6%9C%AC%E7%9C%8C%E8%8F%8A%E9%99%BD,%E3%81%8C%E8%A1%8C%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82 によるとTSMCに対してだけでも1次、2次合わせて1.2兆円に上ります。4月3日の報道では Rapidus に追加も併せて約1兆円の支援をします。
50年前の通産官僚の施策は成功しましたが、世紀も人の心も変わった今の時代にこの巨額な政策投資を見ると Japan as Number One の夢を追い続けている官僚や財界の浮ついた方針としか思えません。Japan as Number One や右肩上がりの夢想を脱ぎ捨てて質実国家を目指す別の途を求めるべきです。