一旬驕話(き):国境なき記者団が報道の自由ランキング2024を公表 + ジャーナリズムの忖度性

 

  「国境なき記者団」が53日に報道の自由ランキング2024を発表  

  「国境のない記者団」は報道の自由擁護を目的として1985年にフランスで設立された非政府団体です。いくつもの国や政府系の団体からの資金で運営されています。日本政府も負担、というか、出資しています。20年ほど前から報道の自由世界ランキングを公表していて、現在では180の国と地域のジャーナリストとメディアの状況を比較して公表しています。安全性、政治からの影響、法的規制、経済的環境、社会文化的環境の5分野にわたる100以上の質問を0(最悪)~100(最善)の配点でジャーナリスト、研究者、人権擁護団体関係者が評価した結果です。

 

  このランキングには支持もあれば批判もあるのですが、報道の自由度を検討する際の一つの指標ではあります。その2024年度版ランキングが53日に公表されました。調査したデータは2023年元日から大みそか1231日までの調査に基づいています。

 

  その一部をhttps://www.reporter-ohne-grenzen.de/pressemitteilungen/meldung/rangliste-der-pressefreiheit-2024 から紹介します。出典がドイツの資料ですし、当方の視点から抜粋項目を選んでいますのでそのつもりでご覧ください。日本での紹介ページがあるかとは思いますが、私は見付けることが出来ませんでした。

 

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  世界での順位     

  ノルウェーが8年連続ランキング1位。理由としてはメディアの政治からの独立性も報道の自由の法的保護も高い、さらにメディア分野での複数性が確保されているなどが挙げられる。2位デンマーク、3位スエーデン、4位オランダ、5位フィンランド。いずれにしても国家からも行政からも報道の自由が法的に、そして伝統的に保護されている国である。

 

  最下位にはタリバンの支配下でジャーナリスト3名が殺害され、メディア・スタッフ25名が拘留されていて昨年から26位も下がったアフガニスタン、戦争とテロに支配されておりジャーナリストの自由な活動の余地はほとんど認められないシリア、すべてのメディアが情報省の支配下にあるエリトリア等がランキングされている。

 

  2013年ランキングでは上位評価「よい」には25の国や地域がランクされ、最下位評価「極めて深刻」該当は21だったが、2024年には「よい」は8、「極めて深刻」は36と報道の自由度は年々劣化している。

 

  ブログ子の補足 ----- 英語版  https://rsf.org/en/index によると、ドイツ10位、韓国62位、日本70位、ウクライナ61位、イスラエル101位、中国172位です。台湾については記載ナシ ----- 補足終わり 

 

  ドイツのポジション   

  ドイツは今年は10位。昨年21位からランクは上がる。評価全体の数値は安全性の分野でわずかに上昇したに過ぎないのだが、他の国・地域が数値を低くしたので順位は上昇した。

 

  記者への身体的攻撃は23年は41件。このうち集会などでの抗議者や極右によるものが1821年は80件、22年は今までの最高数値で103件だった。攻撃回数減少を喜んではいられない。メディア・スタッフへの暴力情報ははるかに多く寄せられてはいるが、証言や証拠が集まらないので数値には表れないケースがいくつもある。コロナ以前の2019年には13件だったのを見ると攻撃は増加していると考えられる。

 

  ドイツ内での報道の自由圧迫傾向は強まっている。特にジャーナリストへのインターネット経由で の殺害脅迫は増加している。中東戦争開始後は親パレスチナ的な集会でのメディア・スタッフへの攻撃も増加している。農業団体によるトラクターによる新聞運搬車両への妨害は報道の権利への攻撃の新たなケースである。

 

  日本についての評価  

  (発表されたランキングには国・地域別の説明もあり、https://reporter-ohne-grenzen.de//japan での日本についての説明は以下)

  安倍政権発足後多くのジャーナリストは政権への不信感を表明していた。メディアの複数性は基本的に保持されているが、メディアの独占化と経済性の理由で複数性確保への圧力は強まっている。

  排他的な記者クラブ制度のゆえにフリーのジャーナリストと外国人記者が不利を被っている。国粋的なグループは、福島の原発事故や沖縄の米軍基地というようなテーマに関して政府へ批判的だったり「非愛国的」なメディアを締め出している。

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  国境なき記者団のドイツ語版紹介抜粋は以上です。個人的な感想を2点申し上げます。

  (1) 上記紹介の最終(日本についての評言)部分は、おそらく、ですが、このランキングや評価に日本人ジャーナリスト・研究者・人権団体関係者は加わっていないことを反映しています。安倍政権が退陣して既に3年半。記者クラブ批判は何十年も前から語られています。

  日本自体の国際的な地位低下を反映した「おなざり」対応です。「G7にしてランク70位とは!」のあきれ顔での記述かもしれません。

 

  (2) 以下の記述は国境なき記者団ランキングとは関係ありません。ブログ子が目にした記事から   「日本のジャーナリズムは萎縮している! 」と思った個人的な経験と感想です。萎縮の遠くて深い原因はもしかしたら記者クラブ制度にあるのかもしれませんが、ここではそこまでは遡りません。

 

  2024410日の拙ブログ「一旬驕話(て):ドイツのソーラー支援政策の顛末」で政策投資は「TSMCに対してだけでも1次、2次合わせて1.2兆円に上ります。43日の報道では Rapidus に追加も併せて約1兆円の支援をします。この巨額な政策投資を見ると Japan as Number One の夢を追い続けている官僚や財界の浮ついた方針としか思えません。Japan as Number One や右肩上がりの夢想を脱ぎ捨てて質実国家を目指す別の途を求めるべきです。と書きました。

 

  私は毎日新聞を購読しているのですが、私個人の記憶の範囲内でではありますが、TSMCRapidus への賛美、バラ色の、とまでは言わないにしても、明るい未来を招くプロジェクト観のみ目にします。大本営発表をたどっているニオイの濃い記事です。すべての記事でTSMCRapidus の危なっかしさを指摘してください、とは申しませんが、ヨイショ記事ばかりですと、読者としては眉に唾を付けたくなります。

 

  トコロガ202456日の紙面(6面)に半導体会社ラピダス「国費1兆円 説明不足」が掲載されていました。問題点を4点指摘していて、まったくラピダスは前途多難だよナ~と思いました。

  再びトコロガですが、これは朝鮮日報東京支局長が書いている記事なのです。それを知って先ずは、日本人記者は自国の「まったく多難なプロジェクトだナ~」と思われる論題について書くスキルを持っていないのだ、と思いました。そんなはずはありません。とんでもなく難しいテーマでもないし、迷路の如き内容でもありません。ですから、日本人記者は自国の「まったく多難なプロジェクトだナ~」と思われる論題について書く覚悟を持っていないなずはない、と思いました。そして一頃流行った「忖度」を思い出しました。忖度は記者個人がすることもありますが、新聞社がする方が紙面への影響は大きい。一人の購読者としては、もしかしたら毎日新聞(の記者がではなく)「社」が政策投資については政府に忖度した記事を載せているのかもしれないと当方が「忖度」しました。

 

  購読している、とは言っても毎日すべての記事に目を通しているわけではありませんし、読んでも忘れているかもしれないので、毎日新聞には政策投資、またはラピダスに関する問題点を指摘する記事は掲載されて{いた/いる}かもしれません。ではありますが、6日の朝鮮日報東京支局長の記事ほどナルホドと思った記事は記憶していないので、一層「忖度」感を強く持ちました。

 

  1ヵ月前に当ブログでラピダスに関して述べ、3日発表の報道の自由度に関する報告を読んでいて、6日には外国人記者の見事な記事を目にしたので、報道の自由は忖度によっても制限される、を改めて確認した次第です。

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  ブログ冒頭で、国境なき記者団のランキング評価ではメディアの政治からの独立性も指標の一つとして、と記しました。この項目はブログ子の上記 (2) 項目での個人的な感想点との接点は生じないほどの、今少し深刻な事態を意味していると思っています。この「思い」は日本の70位を直視していない楽観的な判断でしょうか。

 

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   再々トコロデですが、手元の「週刊 金曜日」2024年5月10日(1471)号の投書欄「言葉の広場」の一投書に「万博は第二次安倍晋三政権時代に松井一郎氏、橋下徹氏、菅義偉氏、安倍氏の4人が東京の料亭で話し合って決め」て、とあります。それだけでしたら、拙ブログで取り上げる理由はないのですが、続けて「日本維新の会は在阪のメディアに睨みを利かせ、万博の問題点の報道をさせないと聞く」としています。

 

  この類の振る舞いが広範囲に行われていて、「政府はマスコミに睨みを利かせ、TSMCやラピダスなどへの政策投資の問題点の報道はさせない」となると、上記ブログ子の楽観的判断は睨みと忖度のレベルを見誤ったことになります。

 

  長い投稿になりました。4度目のトコロデはありません。