一旬驕話(さ):電動スクーター全面禁止か? 

 

  いずこも同じ……   

   ドイツのライン河畔の街ケルンは大聖堂で有名な観光都市ですし、ルール地方はドイツ最大の工業地帯として知られています。これらはノルトライン=ヴェストファーレン州に属しているのですが、ゲルゼンキルへン市は人口は約26万人で、このルール地方の大きな町です。

  このゲルゼンキルヘン市で現在日本でも是非が論じられている電動キックボードの貸し出しが禁止されることになりました。禁止されたらそれはそれで一つの対応なのですが、禁止が他の市、州にも及びかねないというのでニュースになっています。

  今回はそれに関する三つの記事を紹介します。最初の記事の出典は DerWesten なのですが、このDerWesten はこのブログで今まで紹介しました新聞とは違ってフンケというメディア・コングロマリットの一部門フンケ・ディジタルというスタートアップ企業のメディア部分を担っているページです(https://www.derwesten.de/staedte/gelsenkirchen/gelsenkirchen-e-scooter-verbot-stadt-dortmund-duisburg-oberhausen-id300930930.html)。

 

   記事は20244212121分配信の「ゲルゼンキルへンは電動スクーターを禁止 ―― 他市への波及は?」なのです(「電動スクーター」と訳しましたが、ここでは基本的に運転者は立ったまま走る二輪車、または「電動キックボード」と呼ばれている乗り物を指しています)が、記事の前に社の宣言とも解されないし、記事の要約とも言えない、位置付けのはっきりしない以下の数行が掲載されています。

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 電動スクーターは本当に気候変動に友好的と言えるのか   

 電動スクーターに「大きな将来の可能性」を付与した交通大臣もいたのですが、経験や研究が進んだ今となっては、この環境上の約束は守られてはいないようです。電動スクーターが交通概念に統合されて意味を持つようになれるのでしょうか。

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  ( 1 )DerWesten の記事は以下です。

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 ゲルゼンキルへンは電動スクーターを禁止 ―― 他市への波及は?  

 自動車と自転車だけではなく電動スクーターもおなじみの街の風景の一つです。今やこれが見られないことになります。少なくともゲルゼンキルへンでは。これが禁止されるのです。記者がこの話題を追ってみました。

 

 電動スクーター禁止は他市に及ぶか 

 自動車は高価だし、自転車をこぐのは疲れる。こういう人はあの悪評高い電動スクーターで移動します。アプリで通知して、料金を払って、サッと走る……ことが出来ました。ゲルゼンキルへン市が電動スクーター貸し出しを厳格にし、行政裁判所は貸し出し業者に市内での貸し出し排除を求めました。ノルトライン=ヴェストファーレン州の他の市は追随するのでしょうか。

 

 デュイスブルク市は市内での電動スクーターの制限も禁止もしていません。西ルール地方のオーバーハオゼン市はゲルゼンキルヘン市の後を追うつもりはありません。ドルトムントとデュッセルドルフは厳格な取り締まり策を採用する予定です。

 

 ゲルゼンキルへン市でも「電動キックボードはゴミ」という人もいれば「増えてほしい」という人もいて、賛否両論です。ドルトムントでは使用時間の制限と罰金が導入されるし、デュッセルドルフでは速度制限の試行がなされている。エッセン市はそれらの成果を注視している。

 

 いずれにしてもこれらの制限下で使用継続なのか全面禁止になるのか、各方面が目をこらしています

------------------------------------------- ( 1 ) の記事終わり

 

 以上はルール地方の規制ですが、ハンブルク夕刊紙(https://www.abendblatt.de/hamburg/politik/article242132804/Vorbild-Gelsenkirchen-E-Scooter-Verbot-jetzt-auch-in- Hamburg.html#:~:text=Ob%20ein%20E%2DScooter%2DVerbot,f%C3%BCr%20Hamburg%20derzeit%20nicht%20geplant.418の紙面に

 

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 ハンブルクでは事故多発、障碍者連盟が不満表明、キリスト教民主同盟は警告を出す。ハンブルクは電動スクーター問題に独自の対応

------------------------------------------- ( 2 )終わり

タイトルは見えるのですが、私は購読料を払っていないので記事が読めません。内容はいずれは別の新聞で知ることが出来るかもしれません。

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  電動スクーター規制に関しては昨年春ごろからパリでの規制を契機にしてマスコミをにぎわしていたのですが、約1年後のドイツではルール地方のゲルゼンキルヘン市の上記規制で再び取り上げられるようになったというところです。上の二つの新聞記事は少し要領を得ない感じがしていました。たまたまシュツットガルト新聞418の記事を見ましたので紹介します(https://www.stuttgarter-zeitung.de/inhalt.leih-verbot-in-gelsenkirchen-erste-deutsche-grossstadt-verbietet-verleih-von-e-scootern.517a5ae7-bea7-4442-8a6c-ea01a0fe3c8a.html れはDPA通信の配信です)

 ( 3 ) -------------------------------------------

 大都市で初めての電動スクーター貸し出し禁止規制    

 ちょっとした距離の移動には電動スクーター利用は早く、且つ排ガスを出さずに環境にやさしいという状況を作り出すのですが、電動スクーターの使用規則を守らない利用者が払うのは経済的リスクだけではありません。ドイツの大都市では初めてゲルゼンキルへン市が電動スクーター貸し出しを禁止することになりました。

    

 電動スクーターを貸し出しているボルト社とティア社は420日を期限としてゲルゼンキルヘ市では姿を消さなければなりません。同市の行政裁判所が市の禁止条例を認可したのです。ドイツで電動スクーター貸し出し禁止措置を講じた大きな都市は同市が初めてです。

 

 電動スクーターは多くの都市で安全リスクが高くなり、不満が増加しているのです。その辺りに立てかけられたり、路上に放置されたりして通行の邪魔になっているし、時には不注意な使われ方で原因で事故が起こっているのです。

 

 確保されていない安全性     

 市によると今月初めから貸出は停止しているのですが、今なお350台の電動スクーターが貸し出されていて、使用されています。貸し出し会社は借り手の確認をすることで今回の措置を確実にしてはいます。そのために身分証明証や運転免許証をスマホにアップロードしておいて、歩行者専用区域での事故や危険走行や二人乗りを減らす方向で

 借り手は借りるときに氏名を申告しなければならないのですが、正しく申告しているかどうかを確認していません。市当局はこの匿名性が安全性が最大のネックであると認めています

 

 「電動スクーターはほとんどの場合誤った使われ方をしている」       

 市広報のマルティン・シュールマン氏は「残念ながら電動スクーターはほとんどの場合誤った使われ方をしている。歩行者専用区域でも歩道でも重大な事故が頻繁に起こっているのです」が、しかし今までは利用者は大目に見られていたのです、と強調している。

 

 行政裁判所は「使用許可付与を利用者確認作業により確実にするという市の決定は明らかに評価誤謬であるとは認知しがたい」としたのですが、415日のこの判断に対してはノルトライン=ヴェストファーレン州の上級裁判所への提訴もあり得ます。

 シュールマン氏木曜日(栗山:この記事が掲載されている418日が木曜日ですので1週間前の木曜日411日を指していると思われます)には市内では貸し電動スクーターは見かけていないし、市には「どうやって条例までこぎつけなのですか」という問い合わせも届いている、当市が町の道路で電動スクーターを見かけなくなったドイツで初めての町なのです、と続けて語っています

(栗山:以下ではヨーロッパ自動車連盟からの電動スクーター利用ルールが記載されているのですが、割愛します

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  この記事によると判断は上級裁判所の判断に委ねられるようです。このブログの最初の DerWesten の記事によると近隣都市では制限付きの使用を認めているので、全面禁止措置が実施されるかどうか分かりません。

 

  日本でのこれに類するニュースでは電動キックボードによって引き起こされた事故の例が掲載される場合が多いのですが、ドイツでは事故の様子については言及しないようです。他方では小型移動手段なので無駄なエネルギーを使用しなくて環境に優しいという視点はドイツの方が強く出しています。

 

  私は電動キックボードは見ただけでも安定性に欠けるように思えて怖くなります。ましてですが、とても利用する気にはならなりません。皆さんは如何でしょうか。