一旬驕話(こ):鹿児島での反原発運動:向原祥隆さんの報告
福岡での「原発ゼロ 3.11 集会」
今年も 3.11 が来て、過ぎてゆきました。13年前多くの人の3.11 の記憶がまだ鮮烈だった頃は「チェルノブイリが86年、ソ連崩壊が91年。これほどの原発事故だ。日本でも5,6で体制崩壊が起こる」が話題になっていました。事故当時は民主党政権で、間もなく自民党が奪権しましたので、「体制崩壊は起こった」とお考えの向きもあるかもしれませんが、社会の基底は変わらないままでした。それどころか……
今年1月の能登半島地震直後から、珠洲原発が出来ていなくてよかった、志賀原発が稼働していなくてよかったという切実な声が聞こえている中で、ある報道機関の調査によると、昨今では原発再稼働が50パーセントを上回る賛成を得ているそうです。
そんな中で福岡市では3月11日に「戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会」が主催して「原発ゼロ 3.11 集会」が開かれました。ブログ子もいろいろな発言、報告を後ろの方で聞いていたのですが、鹿児島から参加した向原祥隆(ムカイハラ ヨシタカ)さんの報告は迫力がありました。その報告を文字起こしして掲載します。
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司会:「川内原発20年延長を問う県民投票の会」の元事務局長でいらっしゃいます向原祥隆さんに特別報告をしていただきます。
向原さん、よろしくお願いします。
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向原:こんにちは、鹿児島からやってまりました向原祥隆と言います。
昨日鹿児島では3.11を記念した集会をしました。去年よりも多く500人の人が、実数500人の人が結集してくれました。
鹿児島では反原発を目指す様々な団体、生協とか有機農業の団体、労働組合、地域の自然保護団体など96団体で「ストップ 川内原発鹿児島 実行委員会」を結成しています。そんなで昨日も集会を行うことができました。
私自身 30年前に鹿児島に帰ってきて南方新社という出版社を立ち上げ、一方ではずっと反原発の運動に関わってきました。私が原発を知ったのは大学1年の時、今から50年前です。京都大学に行って1回生の時、市川定夫という先生の話を聞きました。放射性遺伝学の先生です。電力会社に放射能を出しているかと聞けば放射能は出していません、と言います。だけど本当かと追求したら、ごく微量と言います。けれども日常的に出している放射能が原発の近くでは植物の突然変異を起こす。つまり人間だっ たら原発に近い人は癌になる、ということです。そういうことを大学の市川定夫先生は証明しました。
日常的に原発はキセノン、クリプトン要素を出している。膨大な量の放射能を出している。そして近くの人は病気になる。なんと理不尽な、なんと理不尽な非人道的な発電方式でしょうか。そう思いました。
鹿児島に帰ってきて私の実家から 20キロ北には川内発があります。これをどうにか廃炉にしなきゃならない、とずっと思ってきまし た。鹿児島では薩摩川内市が国民健康保険利用が全国平均の2.6 倍という報告もあります。鹿児島市が1.5 倍、志布志市は1.3倍。原発に近いほど病気になる。そういう実態があります。泊原発あるいは玄海原発の近くでも健康被害が報告されています。諸外国ではもっともっと報告されている。日常的に人を害するのがこの原発です。
そして知っていただきたいのは原発は大量の温排水を出すということです。九州第2の大きな川である川内川、その河口に川内原発は立地しています。川は陸地の栄養分をいっぱい海に流し込みます。そしてそこにはプランクトンが湧いて魚も湧きます。そういう鹿児島、あるいは日本有数の漁場である川内沖が今や全く魚が獲れない。川内原発が温排水に混ぜて放射能を大量に流す。そして温度も10度以上も上がっている。川内周辺の海では魚は獲れません。川内、串木野、あるいは市来で取れません。真鯛、チコダイ、あるいはイシダイ、全部そういう魚種は壊滅しました。鹿児島県の東シナ海の漁師は何で食ってるか。プカプカ流れてくるチリメンです。
川内原発は同時に圧倒的な公害企業である。温廃水で海を魚のいない海にしてしまう。そういう公害企業であるということもこの場を通じてご理解していただきたいと思います。
そして起こるべくして起こる大地震、大事故です。1995年阪神大震災でこの日本列島は地震の激動期に入ったと言われています。地震の激動期、どんどん地震が起こる。調子に乗って原発を作っていた頃はほとんど地震はなかった。静穏期だっただけども95年の阪神大震災以降激動期に入った。97年には川内でも大きく揺れた鹿児島県北北西部地震が起きました。2004年には中越地震、そして2007年には中越沖地震です。柏崎刈羽原発が寸前のとろで大爆発するところでした。7基もあった柏崎が爆発しそうになった。皆さんもよくご存知でしょう。そして2008年には岩手・宮城内陸地震。女川原発は自動停止しました。止まればいいという問題ではないです。自動停止というのは高速道路で急ブレーキを踏むようなもんだ、とそういう風に言われています。うまく止まった時に制御室はみんな大喝采ですよ。うまく止まった、良かったと。そんな風なのです。そして2011年起るべくして東日本大震災で福島原発は大爆発をした。これは想定外でも何でもない、起こるべくして起こった事故です。2016年には熊本地震。そして能登半島地震。あれで志賀原発が動いてたら終わりですよ。終わりです。東京まで多分100キロぐらいです。
福島原発沖で福島原発の大爆発の時にアメリカの空母ロナルド・レーガンはお友達作戦で行きましたよ。沖合い160キロ で被爆してとっとと逃げました。そして乗組員、多くの何百人もの人が病気にかかって、もうすでに20人が死んでますよ。160kmであんなことになる。そしたら志賀原発が爆発したら富山、新潟、長野、そして栃木、埼玉、東京、神奈川、壊滅ですよ。日本は終わりです。そんなこともわかんないのか、と言いたい。絶対に事故は起こる。絶対に玄海、あるいは川内。どっかが起きます。起きない理由がないんです。
川内もいっぱい問題を抱えています。それを延々と喋っとったきりがないんで、そういうことはもう言いませんけども、事故は絶対に起こる。絶対に起きます。このまま調子に乗って原発を動かしとったら絶対起こる。
川内原発は84年に1号機、85年に2号機が稼働しました。ちょうど今年40年になります。稼働 40年。設計寿命の40年です。40年、そして九電はさらに金儲けを目論んで20年延長しようとするわけです。20年延長、老朽原発を20年延長です。
県知事も議会も黙っとけばそのままいってしまう。僕たちは何らかの抵抗しなければならない、と県民投票条例の直接請求をやりました。約半年かけて準備しました 反対仲間でも反対派の仲間でもみんな高齢化してるから署名運動は大変だと無理だと、集まらんかっ たら敵に利するだけだと、敵の勢いを増すだけだと、あるいは通って も、よしんば目標数に到達しても議会ではねられる、こんな意見が出ていました。そんなことは分かってます。だけど私たちは黙って指を咥えて見てることはできない。4月27日に200人の会場に人が溢れんばかりに人が集まって設立総会を開催しました。そして6月1日から約60 日間、これは法律で決まってます。60日間という署名期間の間で法定数2万6000筆に対して5万4000筆の署名を集めることが出来ました。6月は連日雨です。ジュボジュボになりながら毎週土日に天文館で署名運動、そして一方では個別訪問、もう最終的には軒並み家を回っろうと。そう いう形で一生懸命集めました。僕も体重が7キロ減ってしまいました。
それだけ一生懸命やって10月4日の本請求までたどり着くことができました。この段階で私たちの署名運動、県民投票条例の直接請求の運動は勝利した、と私たちは考えました。なぜなら県政の重要課題、県政の重要課題であって、なおかつ法律に基づく直接請求、地方自治法74条に基づく直接請求です。有権者の50分の1以上の署名があれば請求できるとする法律に基づく署名です。マスコミはこれは放置できない。設立総会から請求代表者の申請、あるいは請求代表者の認定、そして最終署名の確定数や本請求提出の日です。
鹿児島にあるテレビ局は全部カメラを並べました。そして地元の南日本新聞は5回一面トップで報じました。こういったことを通じて鹿児島の重要な問題がこの川内原発であると、そして危険であるにもかかわらず九州電力は20年延長しようとしてると、それをあまねく鹿児島県の人はもう1回再確認することになった。そして10月4日本請求までたどりつくことができた。
鹿児島では県知事選で原発を抜きにして語ることはできないのです。前回の三反園(ミタゾノ)知事、あれはとんでもない嘘つき野郎だったんですが、脱原発を装って当選しました。脱原発の力で当選しました。そして今回の、今知事をやってる塩田康一、この人は川内原発1、2号機の20年延長は県民投票で決めると、そう公約したんです。だけれどもあっさりと嘘をついて破りました。
僕たちは取材に答えるたびに、この知事は嘘つき野郎だと、平たい言葉で言えば嘘つきです、とそう いう風に何回も何回も言いました。私たちが獲得した地平は鹿児島県民にあまねく原発の存在、その危険性の存在を知らせ、そして本請求に到達し、そして県知事の嘘つきの姿、そして否決されたわけなんですけれども、その県民の側を見ない、その姿を白日の下にさらした。これが私たちの成果だと思います。
憲法では国民主権が謳われています。国民主権です。主権は国民にある。当たり前なことです。そして県政の主人公は県民である。県政の主権は県民である。当たり前のことです。重要なことは県民が決める。当たり前のことではないでしょうか、皆 さん。県民が決めるそれを求めて法律に基づいて法的要件を示した。それを県議会、臨時県議会で自民党、公明党の議員は反対した。この姿を鹿児島県民全てにさらけ出した。それが私たちの成果だと思います。私たちは県民投票を実現できなできなかったけれども、それで下を向くことはありません。これからも、もっともっと、あらゆる手段を通じて川内原発廃炉まで戦っていかなきゃならない。
次のテーマは使用済み燃料です。九州電力はあらかじめ分かっていたにもかわらず一切口にしていません。川内原発1号機の使用済燃料プールはあと6年で満杯になります。2号機は2年で満杯になる。使用済燃料プールが満杯になる。するとどうするんですか。とりあえず1、2号機のプールを共同使用して持たすとしてるけども、あと6年かそこらで使用済燃料プールは満杯になる。九州電力は敷地内の乾式貯蔵を目指しています。一切口に出していませんけれども、それしか手はありません。六ケ所村は27回延期になった。今でも九電は六ケ所村へ持って行くと言っています。けれども絶対に無理です。絶対に無理。そしたら九電の敷地内に置く。川内原発の敷地内に乾式貯蔵庫を作っ て置く。もうじきそれは表に出ます。けれども乾式貯蔵してその後どうなるんですか。
使用済燃料をキャスクに入れて空冷で乾かす。だけれどもそれは50年しか持ちません。僕、僕らはもうとっく昔、とっくの昔というか、とっく死んでる頃ですけれども、50年しか持たない。それは中性子線が飛ぶのを遮蔽するためにプラスチックを使うからです。エポキシ樹脂を使う。中性子線が飛ばないように。その寿命が50年です。つまり50年、マ、40年50年経ったら川内原発から中性子線がどんどん出すようになる。つまり川内原発の周り10キロ、20キロには誰も近づけなくなる。オロオロして見守るしかない。そういう状況になるのは明らかです。六ケ所村でも動かない、第2再処理工場も出来ない。となれば鹿児島の川内原発が地上の最終処分場になってしまう。
そんなことでいいのか、と私たちはもう1度、そういったことをテーマに、そして 一方では当然日常的な放射能の健康被害、あるいは環境破壊である公害企業であるということ、そして大事故の危険性。そういったことも訴えながら川内原発廃炉に向けてこれから鹿児島、九州で活動していきます。
有り難うございました。
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約18分の熱弁を小見出しナシで読んでいただきました。如何でしたでしょうか。そう言えば、と思い出したことがあります。拙ブログ昨23年10月10日の記事で川内原発の運転延長の是非を問う県民投票について述べていました。この記事に向原さんのおっしゃる「とんでもない嘘つき野郎」の三反園知事の事は書いています。しかし塩田「県知事の嘘つきの姿」が明らかになる前でした。事情は向原さんの報告の通りです。
なお、屋外での原稿ナシの報告ですので強調するために繰り返しがあったり、聞き取れない・理解できないフレーズがあったりして数ヶ所だけですが削除しました。改行はブログ子の独断で付けました。ご了解ください。
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「乾式貯蔵」関連記事紹介
上記原稿が終わりました後に向原スピーチの内容に関連する資料をいただきました。これも読んでいただきたいと思いまして追加いたします。
向原さんは予測されている九電での乾式貯蔵の危険性について述べていますが、関電ではすでに乾式貯蔵の申請をしています。「脱原発・放射能汚染を考える北摂の会」発行の通信「脱原発・放射能汚染を考える」の記事を拝見したのです。この記事が掲載されている通信は2024年3月20日発行のNo.311 です。300号となれば、1週間に1回発行として6年、10日に1回発行として8年半になります。この継続に敬意を表しながら、転載いたします。
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「乾式貯蔵」はごまかしの稼働延長策だ
関 電 は福 井 県 に老 朽 原 発 の再稼働を認めさせたものの、老朽原発の使 用 済 燃 料 プールはすでに満杯で、このままではあと数年しか稼働できません。
関電は乾式貯蔵を申請
そのため関 電 は福 井 県 に2月 9日 に、原 発 敷 地 内 での「乾 式 貯蔵施設設」の設置を申請しました。「乾式貯蔵」とは、使用済燃料を冷 却 プールで7年 くらい冷 却 した後 で、外 部 の貯 蔵 施 設 に搬 送 するための装 置 。金 属 製 容 器 で寿命 は数 十 年 、装 置 からは放 射 線も放 出 し、何 万 年 もの半 減 期 の核廃棄物の保管は出来ない。
乾式貯蔵はごまかし策だ!
六ケ所村の再処理工場は27回目 の完 成 延 期 となり、使 用 済 み核燃料は全国に約2万トン蓄積しその行 き先 はありません。フランスでの再処理=MOX燃料生産
も停止しています。使 用 済 核 燃 料 の中 間 貯 蔵 施設の選定・設置も進まず、まして最終処分地のめども立たない中で、核 燃 料 サイクルはまさに「糞詰まり」の状態となっています。
金属キャスク
(通信には金属キャストの図を掲載しているのですが当ブログではテキストのみ掲載します)金属製の「キャスク」は使用済核 燃 料 を束 ね、周 囲 を中 性 子遮 蔽 材 で包 むもの。起 爆 装 置の無い核弾頭のようなもの。
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長いブログになりました。お読みいただきまして、原発再稼働賛成が50%を越えるというのがどれほど異常、と言いますか、異様なのかを改めて感じられたことと思います。