一旬驕話(け) 軍拡概略:ドイツ経済誌から

 

  ドイツの週刊誌 Der Spiegel のページと眺めていたら傘下の経済紙 Manager Magazin の記事一覧も掲載されていて、そこに「世界の最強軍隊」というタイトルがありました(「マネージャ・マガジン20242231124 分配信)。一体何事? と思いクリックして開いて読んでみました。40年も50年も昔は「世紀の大対決」と銘打たれた「大対決」のイベントが時々ありましたが、この「世界の最強軍隊」もそのレベルの内容に近いのですが世界的軍拡の一例として日本も言及されています。「エッ、日本が軍拡してるの!」と驚く方がいらっしゃるとは思いませんが、世界のごく一般的な事情を紹介します。

 なおこの記事のオリジナルは https://www.manager-magazin.de/politik/militaer-armeen-das-sind-die-maechtigsten-streitkraefte-der-welt-2024-a-29d3fdd4-002d-4122-9203-03e7f16900c0?dicbo=v2-oYiEvSH で読むことが出来ます。  

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  軍拡時代に突入。日本の軍事費は2024年には16%増。ドイツは過去最高の730億ドルを計画。NATO 加入国全体で2024年は11%増

 

  「時代の転回点」と軍事的紛争で多くの国が軍事費増。軍需産業は今までにない高い売上高で工場新設、精度向上を予定。ロシアのウクライナ侵攻以来は軍拡と恐怖が標語化。加えてドナルド・トランプがNATO に向けて支払いが遅れた場合には攻撃を受けても支援はしない、見殺しにする脅迫的主張。

 

  世界中で不安が広がっているのが現状。グローバル戦力インデックス( https://www.globalfirepower.com/ によると戦力ランキングはアメリカ、ロシア、中国、インドと続き、そこまでは昨年とは大きな違いはなかった。韓国が国防予算を増額したイギリスを抜いて一つ上がって5

 

  トルコがフランスを抜いて8位、フランスは核所有国としては驚くべき11位。このインデックスは145ヵ国を対象に60項目にわたって比較しているのだが、通常兵器のみを調査対象としており、核兵器はランキングに反映していない。また数値は諸国がどれくらい透明的な情報を発信しているかの評価にも立脚している。

 

  ドイツは昨年は25位で今年は19位。年間国防予算増額で来年はもう少し上位にランキングされるかもしれない。しかし国防予算増額にリンクしてランキングが上がるわけではない。予算額からみるとドイツはすでに5番目にランクされているのだ(これが栗山にはよく把握できません。この記事を転載して国防予算ランキングを記事末尾に記載しましたが、それではドイツは5位ではないのです)。

 

  戦車、甲装航空機、戦争用船舶、ヘリコブター及び航空機の数と投入能力が指標とされており、財源、軍隊兵員数、当国内在住の兵役可能員数、さらには地理条件もが評価項目に数えられている。

 

  昨年は軍事予算トップテンの国々で軍事予算は減少していたのだが、この間に再び反転増加している(これは末尾のランキング表でも「増」として示されています)。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)はアメリカとロシアの核弾頭、ロケット並びに航空機と潜水艦の運搬システム、核兵器生産施設の更新と高度化による包括的で高額なプログラムについて報告をしている。SIPRIの研究者は、中国ではこの間に核貯蔵庫の高度化と拡張が行われている、と述べている。

 

  これとは別にロシアのウクライナ侵攻によって西側諸国は多くの出費をしている。ウクライナ自身はその予算を300億ドル(約45千億円)から420億ドル(約63千億円)に増額している。それに加えて何十億ドル単位の援助を受けている。最大の支援国は当初のアメリカだったが、今はEUである。

 

  その中でもドイツは、キール世界経済研究所によれば双務的には220億ユーロ(約35千億円)の支援をしており、最大の支援国の一つであるEU全体では支援総額は410億ユーロ(約65千億円)に上る。

 

  しかしお金は湧いてくるわけではない。キール世界経済研究所は、ウクライナ支援に関するEU直近の提案では財政支援の大河を保証しているが、1440億ユーロ(約23兆円)のEU支援約束と今までの770億ユーロ(約123千億円)に上る支援額との差は依然として大きい、さらにアメリカからの支援が中止される可能性もあり、今年度のアメリカの支援を全額肩代わりするとすればヨーロッパは武器支援の水準と速度を倍増する必要がある、と述べている。

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 上の紹介はテキスト部分のみですが、記事には資料として5つの表が記載されています。そのうちから国防予算額のランキングを抜粋してみます。予算額記載欄の記載は、概数ではありますが{記事に従った億ドル単位/それを1ドル150円で換算した円単位}です。 

 順位 国名       予算額        対昨年増減

   1  アメリカ     {8310/ 1246千億}  増

   2  中国       {2270/   34兆}        増

   3  ロシア      {1090/   16兆}      増

   4  インド     { 740/   111千億}    増

   5  サウジアラビア { 710/   106千億}    増

   6  イギリス    { 620/     93千億}    増

   7  ドイツ     { 550/     82千億}    増

   8  日本      { 530/     8兆}      増

   9  オーストラリア { 520/     78千億}   増 

   10  フランス     { 490/     73千億}  増  

 

  なお軍拡概観がテーマのこの投稿趣旨からは外れますが、ドイツでは長いことウクライナから求められていて野党ばかりではなく与党内の緑の党や自由民主党からもせつかれている巡航ミサイル・タウルスのウクライナへの供与を社会民主党のショルツ首相は拒否しています。ショルツ首相は戦車供与も長いこと渋っていまして、最終的には認めました。タウルス供与もこの図式でしょうか。

 

  グローバル戦力インデックスでは日本についてhttps://www.globalfirepower.com/country-military-strength-detail.php?country_id=japan で見ることが出来ます。