母には敵わない(続き) | 合掌

合掌

俺の生存記 

父(俺の実父)はシャンプー台などを扱う理美容メーカーの営業として。
母が勤める美容室に出入りしていた。
その美容室で母は初めて父に出会った時。
「この人と結婚する」ってビビッときたと言う。
まだ一度も話したことがないのにだ(苦笑)
アプローチは母から積極的に行った。
父の勤める会社に電話して父に取り次いでもらいデートに誘った。
母の同僚も父をニクからず思っていたのを知っていたから。
早く動かなければ同僚に取られてしまうと思い取った行動だったと言う。
まぁそうやってふたりは出会いついに結婚した。

ふたりの馴れ初めを初めて聞いたが。
母ならやりそうなことだと笑ってしまった。

母が独立して自宅で美容室を始めたのが俺が3歳の頃だと言う。
開業当初はお客が来ない日もあったが徐々に顧客も増えた。
しかし。
店の経営が順調になることと比例するようにして。
母と父の関係は拗れていった。
原因は麻雀。
朝帰りも多くなり知らない間に貯金を全額使われてしまった。
この時の喧嘩で母は初めて父に手を上げられたと言い。
仁王立ちする父の足元に突っ伏して。
泣いていた母の姿をぼんやりとだが俺も覚えていた。
酒癖の悪い父は雀荘を出禁になったりもして。
徐々に打つことを止めていったが酒だけは止めなかった。
いつからか夫婦喧嘩が始まると姉と俺は一緒に風呂場に行き。
空の浴槽の中に入って蛇腹になっている風呂の蓋を閉め。
真っ暗になった中に並んで座り喧嘩が収まるの待った。
その行為を俺達はいつの頃からか『カッパになる』と呼んだ。
いつの日からか父がほとんど家に帰ってこなくなった。
でも俺はその方が嬉しかった。

南無妙法蓮華経

ある日家族3人で夕飯を食べていると父が帰ってきて。
その場でまた夫婦喧嘩が始まり。
俺達が『カッパになる』間もなく。
父は茶碗をテーブルの上に叩き付けた。
茶碗はテーブルの上にあった皿に当たり。
割れた破片が飛んでそれが俺の顔に当たった。
それは目の涙袋の下を2針縫う怪我だった。
そして母は離婚を決意した。

そう。
離婚の原因は父の酒癖。
俺が怪我をして。
子供を傷つけるような男とは一緒に居られない。
そう思ったから父と離婚したんだと。
俺は母からそう聞かされていた。

けど。
本当は。
茶碗を投げ俺に怪我をさたのは母であると。
この日俺は母本人の口から聞いたのである。


えぇーーーマジでぇーー!!!



続く。

合掌