買っちゃった!!(続き) | 合掌

合掌

俺の生存記 

で。
俺達はまず。
アイツへの仕事について父の話から聞いた。

これは父と仕事上でも繋がりのある行政書士事務所が。
セクレタリーを探しているといい。
産休に入る人が復帰するまでの代わりで。
パート待遇で週3日~
時間は平日AM9:30~PM15:00(土日祝は休み)
時給も交通費込みで悪くない。
仕事の内容は備品管理や発注・郵便物の発送・電話応対(取次ぎ)など。
庶務的な業務なので専門知識は必要ないが。
この事務所が外国人や外国の法人を主に請け負っている為。
流暢に英語が話せることが必須条件であるという。
英語を活かした仕事がしたいアイツにとっては願ってもない話しであり。
今後の生計を考えればアイツにも働いて貰えると俺も非常に有難い。
ただムスコの幼稚園が14時までなのでそこは考える必要があるが。
アイツも是非にと言うのでこの話しを進めて貰う事にした。

今度はいよいよ俺の相談の番である。
そして俺の話を聞いた父が言った。
「konta君、ひとつ考えを改めることがあるよ。
ローンはね、いくら借りられるかじゃない。
いくらなら返せるかで考えなきゃダメだ。
子供の将来も考えれば、貯金は全額使うべきじゃないね。
でもこの話しはいいと思う。
よく不動産に掘り出し物なしなんていうけど、これはいいね!
大家さんの感じだと早急に現金化が必要なんだろうなぁ。
上手く交渉すれば相場より安くいけるかもしれないねぇ。」
父の横で話を聞いていた母もうんうんと頷いている。

「よし、じゃあ早速住宅ローンの事前審査を受けよう。
不動産の担当者には登記は自分達でするって言ってね。
何か言われたら父が司法書士ですって言えばいい。
それから、大家さんの心に響く言葉も考えないと・・・」
俄然やる気の父の姿に俺は後光を見た。
父の姿を眩しく見つめる俺に向かって母が言った。
「ヒデちゃん(父)はね、交渉のプロだから任せれば大丈夫よ。」

こうして俺がこの家を買うことがあっちゅーまに決定した。

南無妙法蓮華経

それからアイツの実家にこの状況を報告した。
(俺の実家からの資金援助は伏せたが)
一緒に住むはずだった二世帯住宅をキャンセルして。
自分達の家を買うということは同居を断ったと同じことである。
義両親との関係が拗れやしないかと心配したが。
そんなことにはならなかった。
それどころか義両親からは意外な報告があった。
なんと。
昼の営業を止め、夜だけの営業にして店舗部分を改装して。
隠れ家的なイメージの店にするのだという。
もっと具体的になったら俺達にも報告するつもりだったと言い。
営業時間を減らすのにお店にお金使って生活は大丈夫なの?とアイツが言うと。
義父が言った。
「元々昼間は儲けがないから心配ねぇよ。
俺も色々考えたけどなぁ貯めて持ってたってよ、あの世に金は持ってけねぇーんだ!」
それから逆に俺達に資金援助ができないことを詫びられた。
その義父の姿にも俺は後光を見た。
アイツの仕事が決まったら義母がムスコのお迎えと面倒を見てくれることになった。

そして。
相場よりも安く交渉成立。
それもこれも父の交渉術と両親の資金援助のお陰である。
自分の力で家を買うつもりでいた俺は両親からの申し出と。
その金額にビックリした。
「えっ!0が多くね!?」驚いた俺に母が言った。
「お金はあってもあの世には持ってけないからね~。」
可笑しなことに義父と全く同じことを言った(笑)
その憎たらしい口調の中に親の愛を感じて。
ただただ頭を下げ感謝するしかなかった。

っていうか。

なんだこれ?って思うくらい。
マイホームやアイツの仕事のことも。
こんなにトントン拍子に物事が決まっていくことってあるだろうか?
やっぱりこの世には『縁』というものが存在するんだなと。
俺は深く実感したのであった。

完。

合掌