左遷じゃねーし | 合掌

合掌

俺の生存記 

同期のサトミによれば。
コルセンに異動した俺のことを。
「飛ばされた」って言う人もいるらしい。
CS事業部はウチの会社の縁の下の力持ち。
だから日陰部署って思う人も中にはいるんだろうな。
どこのセクションも会社にとって重要だ。
逆に花形部署なんてないって俺は思うんだけどね。
これって優等生発言?(笑)
っていうか。
俺は自ら望んで異動したんであって。
左遷されたワケじゃない。
勝手に言っとけ(笑)

「どう、だいぶ慣れた?」
先日俺は部署のトップである統括マネージャーに声を掛けられた。
統括マネージャーのヤマダ女史は。
俺がまだペーペーの頃に同じ部署で一緒に働いていた大先輩でもある。
同じ部署で働くのは8年振りぐらいだろうか。
異動先に俺を引き上げてくれたのが彼女である。
俺は苦労していると正直に言った。

ヤマダ女史は俺に言った。

「どうしたらお客様に喜んでもらえるか」
製品を作ったら販売店に喜んで売ってもらわなきゃいけない。
自分ができる範囲、会社ができる範囲で
どうやってそれに取り組んでいくか考えることから始めてみて。
考え出すと「あれも必要」「これも必要」ってなるけど、
多すぎても意味が薄れるでしょ?
ここでのあなたの役割は何?

オペレーターの管理だと答える俺に女史は続けた。

南無妙法蓮華経

「1本の電話が会社の印象や評価を決めるし、
製品の売り上げにも影響が出るケースだってあるからね。
オペレーターの応対品質だってすごく大事でしょう?
そうなるとオペレーターのメンタルを維持することも必要だし、
オペレーターが気持ちよく働ける環境を作るのも重要になるよね。
コールセンターのマネジメントって面白いし奥が深いのよね。
でも一番大事なのはコールの仲間と良い関係を築くことだよね。
仲間とコミュニケーションが取れなきゃビジネスはうまくいかないよ!」

そうなんですが・・・と言ってマネージャーとの現状を打ち明けると。
彼女からも事情は聞いてると女史は笑った。
「マネージャーが求めていることはわかってるんだよね?」
俺ははいと頷いた。
マネージャーが求めていることは。
言葉遣いを含めてコール品質と業務知識である。

上司の求めることに応えるのが部下である。
自分なりの考えがあったとしてもそこは割り切りも必要だ。
ヤマダ女史と話して俺に足りないものがわかった気がした。
それは素直さだ。
性別の違いを言い訳にして俺にはそれが欠けていたように思う。
信用されていないという前に。
まだ信用されるに値する成果を俺はまだ出していないし。
そもそもそれはこれからである。

俺はヤマダ女史に頭を下げた。

「女だらけの職場はね、新しい男が刺激になるのよ。
若くて独身でイケメンが一番いいけど、
それが逆効果になると困るからねぇ、人選も難しいんだけど
アナタに来てもらって私はすごく嬉しいの!
本当に期待してるからね、頑張ってよ!!」

俺は咬ませ犬ってワケか!?
または蜘蛛の巣に掛かった哀れなミツバチなのか・・・。
ヤマダ女史の後姿をフクザツな思いで見送った。

俺にだって俺なりの思惑があってここにいるんだ。
ここで得たものを貪欲に吸収して。
色々と企画を練って考えて。
まずはそれを通さないと始まらない。

見てろよ。
全てはこれからだ!(笑)

合掌