「This is a pen.(これはペンです)」
かつての英語学習は,このような一文から始まりました。
一部から「こんな表現,いつ使うのか」という声が上がり,現在は
「Nice to meet you.」
のような「実用的なフレーズ」から学ぶ形が主流となっています。
しかし,一見シンプルなこの挨拶は,実は不定詞や形式主語,さらには省略といった高度な構造を含んでいます。本来は中学3年生で丁寧に扱うべき内容を,現在のカリキュラムでは「まずはフレーズで」と,構造の説明を伴わないまま暗記させてしまう傾向があります。
その結果,「理屈抜きの暗記」を優先する指導が広がり,かえって英語力の伸び悩みを招いているという,切実な現状があります。
文部科学省の設計では,小学校卒業までに700〜800語程度の英単語を「書ける」ことを前提に中学校の授業が始まります。しかし,実際にそれだけの語彙を十分に定着させて卒業できる児童は,決して多くありません。現場の感覚では,小学校卒業時に800語のうち100語を正確に書ける子は,ほとんどいないのが実状です。
かつては中学1年生で「soccer」や「piano」といった身近な語から学習を始めていましたが,現在ではこれらは「小学校で習得済み」と見なされています。その結果,中学1年生の教科書には「environment (環境)」のような,日本語でも理解に一定の抽象度を要する語が並ぶことになります。
リスニング能力を早期に育成することは重要です。しかし同時に,「英文法」という基盤を丁寧に築くことこそが,結果として英語への苦手意識を生まない最も確実な道であると考えます。
「Nice to meet you.」の理屈を学ぶのは,中学3年生で十分です。
また,「May I help you?」は単なる「いらっしゃいませ」ではありません。
「(店員である)私はあなたのお買い物をお手伝いしてもよろしいですか(もしご不要であればご自由にご覧ください)」という意味です。
なぜこれが「いらっしゃいませ」と訳されるのか。本来であれば,助動詞 may の「許可」という本質を学んだ上で理解すべき内容です。しかし実際には,小学校段階でフレーズとして丸暗記させられてしまいます。これでは,言葉や文化に対する知的な関心を育てることは難しいでしょう。
まずは「This is a pen.」という基本構造に立ち返るべきです。英会話や歌,ゲームから入る学習は入り口として魅力的です。しかし,それだけでは英語の「なぜ?」に答えられず,自信を失ってしまう子を増やしかねません。
「This is a pen.」を構造的に理解できていなければ,正確な英作文ができないのはもちろん,将来の大学入試で出会う複雑な英文を読み解くことも困難です。
当塾では,この「当たり前の基礎」を何より大切に,一歩ずつ着実な力を育んでまいります。