「人の地に倒れて還って地より起つが如し」(法華文句記)

世雄とは、法華経方便品に説かれる、仏の尊称の一つ。
世間において、最も雄々しく一切の煩悩に打ち勝った者。

 

きょう届いた冊子に、ロベルト・バッジョのインタビューが載っていた。
僕は、彼の試合をリアルタイムで見ていた1人だ。


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元プロサッカー選手。
1967年、イタリア・ヴェネト州ヴィチェンツァ県カルドーニョ生まれ。
セリエC1-ヴィチェンツァでデビュー。
93年、欧州年間最優秀選手賞(バロンドール)、FIFA世界年間最優秀選手賞を受賞。
90年(イタリア大会)、94年(アメリカ大会)、98年(フランス大会)
のワールドカップにイタリア代表として選出。
2004年、現役引退。
02年、国連食糧農業機関(FAO)の親善大使に就任。
10年、ノーベル平和賞受賞者世界サミットの事務局から「平和サミット賞」を授与。
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――前年にバロンドールを受賞し、
国民の期待を背負って迎えた94年W杯アメリカ大会。
イタリア代表は、バッジョさんの活躍(決勝トーナメント3試合で5得点)で、
大会序盤の劣勢をはね返し、決勝進出を果たしました。
迎えた決勝戦は延長でも勝敗がつかず、PK(ペナルティーキック)戦に。
外せば敗戦が決まる状況で、最後のキッカーはバッジョさんでした。

(バッジョ)
ボールはイメージと異なる軌道を描き、ゴールポストの左上に消えていきました。
私の憧れはジーコ(元ブラジル代表)だったんです。
子どもの頃から彼のプレーをまねていました。
幼い頃から夢見続けてきたW杯。
その決勝戦で、しかも相手はブラジルです。

大けがや移籍を巡るバッシングなど、多くの困難を乗り越え、
ようやくたどり着いた舞台での失敗。

現実をなかなか受け入れられませんでした。

数年間、あの決勝のPKの場面が夢に出てきました。
夢の中では必ず、PKが成功するのです。
朝、まどろみに中で、自分が微笑んでいることに気がつく。
次の瞬間、逃れられない現実が押し寄せる。
そんな寝覚めの悪い朝を何度も過ごしました。

池田先生が言われた”最後の一瞬まで戦い抜く”という言葉の意味を、
祈りながら何度も何度も考えました。
「この失敗にも何か意味があるはずだ」と。

その中で”絶望に沈んだ私が、希望を取り戻し、立ち上がっていく姿は、
誰かを励ます力になるはずだ”と気がついたのです。
そうして少しずつ前を向くことができました。
試合には負けても、人生には負けてはいけない。

――バッジョさんの「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持つ者だけだ」
との名言はあまりにも有名です。

(バッジョ)
もしこの言葉に励まされた人が少なからずいたとすれば、
それはとてもうれしいことです。
しかし、これは私の言葉ではありません。
池田先生からの励ましと御本尊への祈りの中で得たものですから。

計り知れないプレッシャーの中、90分間ピッチを走り続けた体で、
サポーターや国民の期待を背負って、ペナルティーマークに立つ。

このときすでに、人間としては、
自身の臆病に打ち勝った勇者であるといってよいのではないでしょうか。
もちろん、その後の結果の責任を免れることはできませんが。

THE WORLD SEIKYO VOL.4 2024/01/24
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