曇天模様の空の下、おきてゆったり単語練習。今日はどんな日であろうかなぁ。

すると、電話。おととい日本に来た池田君からだ。今からうちに来るとのこと。みんな信じられないだろうが、僕の部屋は意外と綺麗なのだ。まだ。時間を逆算してケーキを買いに行こうとするが、時間がない上に土曜日なのでやっていないだろうと気づく。

 家がわからないだろう、迎えに行くことにした。

 さて、池田君は春のインターウニで知り合った早稲田大学の学生。ドイツ語暦は五年。附属校時代からドイツ語をやっていたという。ゲッティンゲン大学でも政治学を学ぶ。

 うちで彼のパソコンを用い、インターネットをやる。メールを受信したいとのこと。

その後、今度は彼の家に行くことに。

家賃が二百七十ユーロの家であるだけあってさすがに広い。家具もおしゃれ。もちろん、家具つき、トイレつき。うちの寮の部屋とは違う。ホテルみたいである。私の寮は百ユーロと格安。うーん、私は安くてもいいのだけどね。(まあ、二百七十ユーロでも日本では十分安い。東京でつき三万円の部屋を探しても、ないであろう。すごく狭くて六万くらいが相場。家賃が安いと、経済的負担が少ないからうれしい)

 その後、街の中心街に行き、大学を周り帰ることに。彼の専門は政治学。しかも早稲田でマスコミ研究会にいるという、時勢に関して明確な意見を持っていた。

 池田君曰く

「日本はこのまま行くとまずい。アメリカナイズされて国民性が弱まり、ひとつの国として弱くなってしまった。ドイツでは敗戦国なのにアメリカナイズされずに今も豊かだ。高齢化、少子化、失業問題など共通の問題を抱えているのに、ドイツは余裕がある。インフラなどの過去の貯蓄があるからなのだろうか。そういう問題をドイツ人学生と語りたい」

そうして、日本の政治の展望を模索するということ。面白そうだ。私もいろいろ意見を言い、面白くなる。もう少し彼と政治学の話をして、日本の将来がどういう形で発展するのか、考えてみるのも、面白いだろう。

 気温の寒暖の差にやられたのだろう。体調がだるい。帰って思わずベッドに倒れこむ。熟睡。おきたら七時前。空腹。冷蔵庫にはジャガイモ、牛乳、バター、ソーセージと調味料しかない。あじけないので、近くのアジアショップに行ってみることに。するとなんと閉まっている、そうだ、今日は土曜日だ。空腹の上に、店が閉まっている。しょうがない、家で食べるかと思っていると、うちの寮玄関のところに日本語の紙が張ってある。うちの寮で日本語が読めるのは下に住んでいるドイツハーフのニネッテさんと私くらい。そのメモ。

 

 《野口君へ 本日一九時ガチョウ娘の前に集合。その後ドイツ料理屋へ行く予定です。良ければぜひ来てください。安》

というメモ。

 空腹で倒れそうなので、行くしかない。時計を見ると六時五八分。二分で行くか。そのまま部屋に戻らず街に向う。ガチョウ娘前には、安くん、遠藤まどかさん、坂井さんがいる。もちろん安くん以外が初対面。なんと遠藤まどかさんは千葉大学園芸学部の人。名前は知っていたが、会うのは初めて。千葉大の大学院に進んでいる。そこからゲッティンゲンの交換留学をし、その後インターンをしている。農業経営者へ環境教育をしているということ。私も非常に興味がある。いいなぁ。興味あり。

 坂井さんはドイツ語を選考している学生さん。

 レストランに行くまでに、二人加わる。なまえはー、えー、・・思い出せない。その子は林学の専門の人。もう一人は外国の人。ドイツ語がうまい。ドイツ人ではない。

 最後に来た人が、兄弟で来ている人。お兄さんは月曜日に日本に帰るとのこと。妹さんは医学部。

ちなみに、私の通っている大学では、医学部が非常に強い。いつも学長がこの学部から出てしまう。何しろ日本で三番目に難しい学科であると医学部の学生がいっているほどだ。(東大医学部、京大医学部、その次らしいが本当かどうかは知らない。)そのために、医学部と聞くと、すごいね、と反射的に思ってしまう偏見がある。その子は大学の試験が終わったという。その中の口頭試問の話を聞くと、教授の質問に一五分間止まることなく課題について発表しなければならないという。すごい。日本でのテストは出席を取り、レポートを出し、テストでうまくいけば、普通に取れる。ドイツではその上を行く。口頭試問では緊張するなぁ。特に外国人にとってはね。

 私の話になる。出身はときかれる。いつも外国人に聞かれると、横浜の近くといっていたが、藤沢と答える。藤沢というと、湘南ボーイなの?という。はい、と答える。高校は湘南高校?ときかれる。はい、と答える。うちの高校をしっている人がいる。やったね。その後

「湘南高校の人って、高校にサーフボードを持ってくるといっていたけど、本当なの?」

ときかれる。(ものすごい偏見だな。サーフボードを高校にもってきたら、家に帰されるだろう)とおもうが、

「そうだよ」

と答えておく。

 食事はドイツ料理。料理屋は土曜日でも開いているのだ。私はEisbeinアイスバイン(豚足の煮物)とビール(ケーニッヒスピルツ!?略:キュピ)、Knödel(肉・ジャガイモ・麦粉の団子)、Sauerkrautザウワークラウト(香辛料を加えて塩漬け醗酵させた千切りキャベツ)を食べる。うまい。料理を運ぶおばさんが面白い。よく喋る。しかし、あの年で正確すぎるドイツ語の発音をするとなんだか面白い。彼女の発音をそのまま語学CDにできそうだ。聞き取りやすい。陽気。一〇,二〇ユーロを食べる。おなかいっぱい。おいしい。うちでソーセージとジャガイモを食べるより良かったな。

 食後にみんなでビデオ鑑賞会をすることに。来てくれと誘われたが、体調が思わしくないのと、ほとんど初対面の遠慮もありやめておくことに。坂井さんからラジオをもらう。うれしい。目覚まし、時計機能がついたものだ。

 

●   留学生にとっての日本人

 「日本人が固まると、良くないよ。私なんてアメリカ行っていたとき語学学校日本人ばっかり。アメリカにせっかく英語を勉強しに行ったのに、結局日本語を話して終わっちゃった。あなたが留学するときには日本人とかたまらないように気をつけてね」

「あいつアメリカに留学したけど、結局日本人とつるんで英語喋れないらしいよ。お前の行くところに日本人いるの?固まらないように気をつけろよ」

ということは良く聞く。異郷の地で言葉の不自由の中、文化や言語の同じ日本人同士は固まりやすい。アフリカ人もアフリカ人、中国人同士、留学生も留学生同士固まっている。それが、語学習得の妨げになるということなのだ。

 しかし、私の今の環境の中から考えると、私は日本人で固まる事をあまり悲観してない。逆に良いことであると思う。わたしの精神衛生上。異国の地、言葉も通じない。買い物ひとつにもストレスである。その中で、たまに喋る日本語は私のストレス解消の場になる。日本人に対して、必要以上に避ける必要はない。私は彼らの友情を大切にしていくべきだろうし、時には助け合い、協力すべきであろうと思う。まあ、ゲッティンゲンでは日本人が比較的少なく、日本人のコミュニティーを作れるほどの人数がいないからそういえるのかもしれないが。

 とにかく、今日は日本人とよく喋った。

私のスタンス、それは外国人同様、日本人も同様に付き合い、互いに影響しあって、成長していきたいと考えている。

 ドイツ語がうまくなりたければ、勉強すればいいのだ。日本人を避けるだけでドイツ語がうまくなることはない。語学習得は努力と環境。今日は一日中遊んでしまった。勉強しよう。今日話した彼らよりもドイツ語をうまくならなくてはいけない。ドイツ語の下手な私。彼らよりも勉強しよう。落ち着いて勉強できるのは留学生くらいである。

 

●   留学

私にとって留学はひとつの浪人時代という見方もできる。浪人は高校時代までの勉強を一年間という期間の中で、集中して勉強し続ける。勉強するには非常に恵まれた環境である。

留学も大学の浪人みたいなものかもしれない。世間では浪人している人と、していない人がいる。していない人にとっては、浪人は無駄な一年だと言うが、私は浪人生活で自分と向き合い、自分の将来、大学生活をいかにすべきか、自分のできることは、できないことは、自分のしてきたこと、友人について、友人と話し合い、自己と向き合い形成してきた。そういう一年である。価値観の形成もそこで行われたと思う。友人の中でも、浪人をしている人と、していない人は大学一年の時には違いがあった。(四年生になると見分けられないが)。今回の留学もそういうこともあるかもしれない。ゆっくり勉強できる環境の中、自分と向き合う。

しかし、浪人は二年してはいけない、といううちの駿台予備校の鉄則。留学も人生の薬みたいなものかもしれない。この形の留学は二年とする必要はないであろう。