白い歩道橋の照り返しが眩しく、目を細めた。曇り空からだんだんと晴れ上がってどんどん光が強くなる。気象衛星からの映像で見るような、雲の流れのちょうど端、雨から晴れへ移り変わるその瞬間に居合わせたことに、なんだか腹が立った。
3階の窓からはグラウンドが見えた。体育の授業で男子がサッカーをしている。一人ひとりの動きを追うには人が多すぎて、個々の姿は小さすぎて、サッカーの観賞はあまり好きではない。それよりも正門から昇降口までの小道に植えられている広葉樹を見るのが好きだった。名前はわからないのだけど、秋になると、他の広葉樹と同じように色を変えた。土筆の頭のような形の、ちょうどてっぺんからじわじわと、黄色くなり、その黄色が降りていき、赤に変わる。赤、橙、黄、緑のグラデーションになったくらいがよくて、きれいだきれいだと心のうちに呟きながら、飽きもしないで見ていた。裏を返せば、それくらい授業が好きではなかった。
「あの木の名前がわからない」
「きれいだよねえ」
きれい、きれいだね。上のほうから先に赤くなるのは何故だろう。やっぱり上のほうが寒いのかな。いいや、日が良く当たるんじゃないか。ほら、積算日照時間だか、積算温度だかで紅葉が始まるとか、花がつくとか、富田先生が言ってた。あたし物理だしわかんない。
そんなことばかり言って誰もあの広葉樹の名前も紅葉の原理も調べない。なんとなく判った気になって、そこで終わってしまうから駄目なのだ。
「不満を言わないと、改善されない。だけど、不満ばかり言っている人間がどうも美しく見えなくて、嫌いだ。不満の言い方が悪いのかな。他人に対して要求してばかりで、内省できていないように見えるからか。文句が、攻撃的に聞こえるからかもしれない。しばしば、相手を罵倒するからかもしれない。僕は、自分が他者に対して文句を言えるほど清廉でも誠実でもないし、相手のことも理解していない。」だから、何も言わない。温和だ、とか、優しいとよく言われるけど、怒るのが苦手なだけだ。他者へ要求することに慣れていない。自分がどこまでできるのかわからずに、最大限の努力をした後でしか他者へ要求してはいけないと思っている。
僕の感情はずっと平坦で、どこまでも振幅の無い長い長い水平線であればいいと思う。すとん、と落ち込んでしまうことはあるけれど、めったに大きな上り坂にはならない。