「らっしゃい」
マッサージ店には似合わない威勢のいい声が響いた。
更衣室に案内され、施術着(人間ドックの時に着るパジャマみたいなやつね)に着替え、マッサージ台に向かう。
大将:「さぁ、どうぞ、こちらへ今日はどういたしやしょう」
と ら:「左の腰からももにかけて、疲れがたまってて しびれるような痛みがあるんです」
大将:「へい、わかりやした。そんじゃ、始めさせていただきやす」
大将はそういうと、とらの体を触り始めた。
その姿を見た人には、まな板の上のマグロを解体する板さんに見えたことだろう。
(うぉ~~イタタタタタッやっぱ男の人の力は強いなぁ。やべっ変な汗が出てきた)
歯を食いしばるほどの痛みにじっと堪えた。
(この痛みに耐えれば、きっと身体は楽になるはず)
そう思いながら、耐え続けるうちに全身がじっとりと汗ばんできた。
ひととおり下半身を触り終えると、大将は首周りのマッサージを始めた。
うおおぉぉぉぉぉ-----------------
下半身の疲れがひどくて気づかなかったけど、首周りもめっちゃ凝ってるやん
無意識のうちに身体が反応したのだろう。
大将の指先に更に力が加わった。
と ら:「下半身も疲れがたまってましたけど、首周りも効きますねぇ」
大将:「そうでやしょうあっし(私)も、こんなに凝ってる首筋にお会いしたのは久しぶりでさぁ。お客さん、ここはどうでやすか」
と ら:「いたたたたたうわぁ、効きますねぇ」
大 将:「そうでやしょう、そうでやしょうここが穴場なんでやすよじゃあ、これはどうでやすか」
そう言って、大将はとらの肩をグルグルと廻し始めた。
と ら:「おおおおおおおおお、効くなぁ」
大将:「うん、うん。そうでやしょう、そうでやしょう」
そして、1時間のマッサージはあっという間に終了した。
大将:「へい、これで終わりでやす。どうでやすかずいぶん、楽になったんじゃありやせんか自分も久しぶりにいい仕事をさせてもらいやした」
と ら:「ええ。ホントに楽になりました。肩周りが」
(あれ?なんか変だぞ??)
大将・・・・・、俺が辛かったのは下半身だよ
うそのように肩周りは楽になったけど、下半身はここに来た時と変わらないよ