自転車であちこち走らせてもらっています。海岸線を走っていると、数多くの風力発電のタワーを見る事が多いです。その数にビックリします。ただ、一台あたりの発電量は原子力発電には遠く及びませんし、ライドの途中で気になるのは「故障中」をしばしば目にすることですね。

 

図書館で探していたら、この本にたどり着きました。私が持っているような風力発電の疑問に答えてくれる本でした。ただ、この本2010年1月の発行でして、あの2011年の東日本大震災以降の原発事故以降に発生したであろう、廃炉処理に関わるコストアップとか原発廃止論以前の本になります。

 

 

 

本の題名に「トコトンやさしい」と書くほどですから、出来るだけ簡単に書かれているのですが、エネルギー効率とかちょっと難しい数字の話も登場します。

  どうしてあんなに高くて大きな設備にするのか?

 

海岸線を走っていると、崖のような場所やどうやってクレーンとか建設資材を運ぶトレーラーの道を作ったのかな?と思える場所に建設されています。あの立地だと建設も大変だけど、故障の時にまた大型のクレーンを近くに寄せるにも大変じゃないか?とか(全くの外野ですが)思ったものです。

 

ところが、風は地表付近と100mほどの高さとではかなり違いがあるそうです。高ければ高いほど強い風が安定(方向)的に吹くそうです。

驚いたのは、風速と風から取り出せるエネルギーの量との関係です。

 

風速が2倍になったら、とりだせるエネルギーの量はどれだけ増えるでしょうか?

 

私は最初、単純に2倍かな?と思いました。しかし、風を受ける面積とかが二次元的に影響するから2乗(4倍かな)とも思いました。

 

しかし、実際には3乗に比例してなんと8倍になると言うのです。

 

思い出したのが、2023年の北海道一周ライドの時の天塩からオロロンライン→稚内を走った時に有名な風力発電群があります。

 

 

オトンルイ風力発電所はサロベツ原野南部にあり、北海道道106号稚内天塩線(日本海オロロンライン)沿いの南北3.1 kmに渡って28基の風車が立ち並んでいる。総出力は21,000 kW

これなら100万kwの原子力発電所の2%にあたります。この規模を50カ所作れば原発一基に相当出来るのですが、訪問した日は

 

 

発電量を表示する装置がありました。これによると風速は6mほど有ります。しかし発電量は2,200kwと最大発電量の一割ほどでした。この時はちょっとガッカリしたものです。しかし、風速が2倍になれば発電エネルギーが8倍になるなら、ほぼ定格位の発電量になるのです。

 

 

  あんなにゆっくりと回るのかな?

 

これも疑問でした。遠目から見ていると「ユルユル」と回っているイメージが有りますよね。もっと早く回した方が効率的では?と思ったのです。テレビ番組でこうした風力発電のメンテナンスをしている様子を見たのですが、風車の回転をギアで早くする装置有るようでした。この本によるとプロペラの回転数を100倍ほどに高めているようです。

 

このゆっくり回る理由は「騒音」が一つの理由だそうです。あの「ユルユル」に見える回転ですが、風速8m/sの風が吹いている時だと、プロペラの先端部分では速度が40m~80mににもなって、これを時速に直すと140㎞/s ~280m/sにも相当するそうです。すぐ近くに新幹線が走っている状態なので、羽根が風を切る音が聞こえるのですが、これが騒音問題となって立地を決める場合に大きな障害になるそうです。なので、回転速度を上げられないという事情があるそうです。

 

 

 

  なぜもっと沢山建設されないのか?

 

2011年の福島の原発事故以降、自然エネルギーを使うことが注目されました。たしかに原発は一基で100万kwとかおおきな発電能力が有りますが、風力だって前出のオトンルイ発電所規模で2万Kwと小さいけど沢山作れば良いことだと思うじゃないですか。技術的には確立されていて、後はドンドンと作るだけ、って思うのです。

 

障害になるのはいくつかあるようです。一つが案外立地が難しいのです。投資効果を言うなら年中強い風が吹いている所ってことになりますが、そういう所は限られています。また国立公園には景観の問題なのか建設が出来ないようです。それが次の「洋上発電」にもつながるようです。

 

また、ドンドンと作れるか?というと風が吹かない時のバックアップを考えると100%を風力で賄うのは実質的ではなくて、20%が上限になるようです。この本の数字は少し古いので、ネットで探すと2023年の全発電量に占める割合は1.1%程度とまだまだ低く、2030年度の目標値が5%ってことらしいです。

   

 

  洋上発電ってメリット有るの?

 

北海道一周ライドの時に、苫小牧港で建設予定の風力発電の部材が積んであったのを目にしています。すでに建設が始まっているでしょうね。

 

その時みたのが

まぁ比べるものがないので分かりませんが、なんと高さ200mクラスの国内最大級の風力発電の羽根だそうです。

 

一年たってググってみると、北海道各地で洋上発電のお話が進んでいるようです。私は、洋上発電って聞いた時に「修理はどうするの?」と思いました。地上でもあれだけの高さがあると修理なんかすごく困難が予想されます。揺れる洋上なら更に大変じゃないか?と思うのです。

 

しかし、それより色々なメリットがあるようです。まずは騒音の問題が有りません。それに、地上に建築する場合、もっとも搬入で困るのが羽根だそうです。柱は分割して運んで現地で溶接も可能ですが、FRPなどの樹脂で作られている羽根は一体で製造するしかなく、完成品を現場に持ち込む必要があります。また、その羽根も大きいほど効率が良いときていますから、企業は出来るだけ大きな羽根の発電機を設置したいのです。山の上などではこの搬入が最大の問題のようです。搬入用の道を作ったりする必要があるのでしょう。

 

しかし、洋上だと船で運べますから搬入は容易らしいです。へぇ~ですね。修理の事は、その時になって考えれば良いのでしょう。それと、この本では20年という数字が登場します。設置して20年使えれば良いと考えるのでしょう。

 

修理の事と言えば、あまりにも風が弱い日が続くのもメンテナンスとしては問題って記述がありました。あまり可動がないと、ギアの潤滑が滞ってしまいギアの油膜が薄くなったり切れたりして摩耗の原因になるとか。車のエンジンでも「オイルが下がる」っていうじゃないですか。あれと同じですね。やっぱり機械は毎日同じように動いているのがよろしいようです。