司馬さんの家事手伝いさんの直木賞候補作

 

第170回の直木賞候補作だそうです。(候補止まりでした。)当市の図書館でも5冊準備されていますが、かなり待ちました。それにまだ後ろに40人ほど待っておられています。大急ぎで読んで、後ろの方に回しました。

 

この作家さんの本を手に取らせてもらったのは初めてだと思います。wikiで調べると

京都大学法学部卒業の後、会社勤務を経て、なんと司馬遼太郎氏の家事手伝いになったとあります。へぇ~ですね。司馬さんの家事手伝いって何をするんだろう?と思ってしまいます。

 

 

 

  お話は

 

 

登場するのは、徳川吉宗(8代将軍)の嫡男の幼名長福丸。彼は障害が有ります。口が回らず周囲の誰もが彼の言葉を解することができません。また尿意をコントロールできないので、お漏らしをしてしまいます。歩いた後に、尿で濡れた跡が残るを見て、まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれて、蔑まれていたのです。

 

吉宗は困ります。正統なら嫡男のこの長福丸が跡目を相続するのですが、いかにも厳しい。しかもこうした家系の常なのか、次男や三男には障害もなく利発に育っているのです。そんな彼の言葉を聞き取れる人物が登場します。小姓の兵庫(後の大岡忠光)。彼は、他の人なら何を言っているのかまるで理解出来ない長福丸の言葉を通詞できるのです。

 

しかし、当初から付きまとうのは、この通詞の言葉は本当なのか?という疑惑ですね。主君の言葉を自分独りしか解せないなら、主君の言葉と偽って私腹を肥やすことも可能です。これが吉宗が次の将軍を決める前にも、そして彼が9代将軍徳川家重になってからも付きまといます。彼に使える老中にはあの「田沼意次」の名前もありまして、巨大化した江戸幕府が一筋縄ではいかない時代に入っているのも分かります。

 

 

 

 

  自分の頭の中に情景が浮かびます

 

 

登場人物は少な目に配慮されて書かれているのだと思いました。巻頭には、下図の人物相関図が用意されていました。この図に登場する人物を頭に置いておけば、多少読み飛ばしても、物語の流れを見失う事はないですね。

 

拝借は幻冬舎のサイト→

 

そういう中で、唯一自分の言葉を理解してくれる部下でもあり、唯一の友人でもある、大岡忠光とのやり取りなどが読んでいて物語の中に没入されるのです。

 

いつもの私なら「そんなアホなぁ~」と思えるような忠光の馬鹿正直な忠臣ぶりや、「いくらなんでもこれは史実とは違うだろう~」とかすぐに斜めから読んでしまいます。たしかに、こうして後から感想文を書くとなると、「変かな?」と思える所もありますが、読んでいる最中は、周囲の音が聞こえない位に集中させてくれる本でした。(家事の私の分担を全く失念してました←奥様の指摘)

 

 

  wikiとも違いはなかったです

 

wikiを過信してもいかんのですが、調べてみました。すると、9代将軍徳川家重についての記述は、この本と大きな差はないのです。家重がこうした障害を持っていたこと、また大岡忠光が唯一、家重の言葉を聞き取れるってことも記載がありました。

 

ただ、健康を害した後の家重はますます言語不明瞭が進み、側近の大岡忠光のみが聞き分けることができたため彼を重用し、側用人制度を復活させた。田沼意次が大名に取り立てられたのも家重の時代である。

重用された大岡忠光は、権勢に奢って失政暴政を行うことはなかったと言われる。宝暦10年4月26日(1760年6月9日)に忠光が死ぬと、家重は5月13日(6月25日)に長男家治に将軍職を譲って大御所と称した。

宝暦11年(1761年)6月12日、田沼意次の重用を家治に遺言し、死去した。享年51(満49歳没)であった。

家重にとっては、言葉を解してくれる大岡忠光の存在はとても大きくて、彼が先に逝ってしまいますが、その月の内に将軍職を辞しています。また、一年ほどで自身も亡くなっていますね。

 

 

  難解漢字と格闘→時代小説感アップ

 

 

ただ、難読な漢字とちょっと読めない熟語がしばしば登場します。スマホの漢字アプリで調べたりしますが、そこは前後の文脈から類推して読み飛ばしもしました。いちいち調べているのがわずらわしくなります。ただ、この難読漢字や熟語が時代小説を読んでいる、という気分にさせてくれるのも確かですね。

 

 

  女性作家さんでした

 

 

村木嵐という名前から勝手に「男性」だと勘違いしてました。ブログを書くのに、インタビューでも無いかな?とググっていたら、以下のサイトにたどり着きました。

そしたら、女性作家さんだったのです。

 

 

 

こちらのサイトから拝借しました。