植松三十里さんの本続いています。

 

 

いきなり駆け落ちシーンで始まります。この本に登場する二人の波乱万丈の様子が頭に浮かんで情景が流れるように場所も移動しながら、函館→神戸→天津→チェコとお話が進んでいきます。

 

大正末期の函館です。日露戦争に勝って、なかなかの好景気。函館でちょっと知られた旅館があります。そこの娘のコウは、英語が話せます。まぁ進んだ「いとはん」ですね。そこに登場したのが、ドイツ人(って言ってもこれが複雑、当時のヨーロッパは戦争に明け暮れていて、国境が目まぐるしく動きます)のレイモン。函館には、缶詰工場の指導に来ているのですが、本当はソーセージやハムの仕事を志しています。そして、戦争を嫌っていて(彼も従軍経験あり)欧州の統一を願うちょっと先を行き過ぎた感もある青年。

 

この二人、恋に落ちます。レイモンの故郷で開業して繁盛しますが、レイモンには他にもやりたい事が有ります。彼の念願の欧州統一が実現するのはもっと先ですね。失意の中で、コウの望郷の念を受け入れて、彼はまた函館に戻ります。ソーセージやハムを製造販売するお店を開店するのですが、食肉習慣が無い時代の日本では受け入れてくれません。唯一の需要は軍隊なのですが、反戦家の彼は軍隊には売りたくないのです。奥さんのコウの奮闘や時代の流れもすこしづつ味方して軌道に乗ってきたかな?と思える時期に戦況は悪化。ドイツ系とは言え、外国人の風当りは強い。不遇の時代が続きます。そしてようやく終戦。ようやく訪れる平和な日々と、彼らの理想を目指すことが出来るようになります。(その後も様々起こりますが・・・・)

 

 

 

 

  バイタリティを感じます

 

第二次世界大戦の最中に日本に居た外国人たちの苦労はいくばくか、と想像します。例えば、滋賀県なら建築家でキリスト教徒のボーリス氏。戦時中は軽井沢に疎開されます。このお話のレイモンは函館ですが、日本人でも日々の生活に困った時代に外国人夫婦の生活は大変だろうなぁ~が想像できます。

 

早々に日本を離れてしまう方法も有ったと思うのです。いくら惚れた奥様がいたとは言え戦時中の軍部の圧力は大きかったでしょう。また、戦争以前に肉食の習慣のない日本で豚肉を原料にしたソーセージを製造して販売しようとします。でも、需要がない市場を自ら育てるっていうのは、大変だと思うのです。よくアフリカに靴を売りにいくセールスマンの話が有りますが、誰も履いてないから売れるって言っても、「靴」っていうのを教えるところから始めるのは、大変ですよね。市場の先駆者、開拓者になるのは、苦労ばかりで実を結ぶには時間も労力が必要ですね。

 

なので、函館の旅館の娘と外国人技術者のラブロマンスのお話ですが、ビジネス本でもあるようです。後に日本ハムの社長が買収や提携の話を持ってきます。その時のレイモンの気持ちも時間が経過すると共に変化もしていきます。

 

 

  もう少し前に知っていたらなぁ~

 

 

2023年6月に北海道一周ライドをさせてもらい、最終日は一日函館でウロウロしていました。お昼はご当地チェーンのお店を利用したのですが、知っていたら、このソーセージ屋さんも行ってみたかったですね。値段を見ると案外リーズナブル。

 

 

ただ、このお店がカール・レーモンの歴史をどう継承しているのか?はこのサイトを見る限りでは分かりませんね。日ハムの子会社なんだろうか?